記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/11
記事監修医師
前田 裕斗 先生
閉経後の女性に起こることのある「萎縮性腟炎」。この萎縮性腟炎の治療では、どんな薬が使われるのでしょうか?また、市販薬でも治療可能なのでしょうか?
萎縮性腟炎とは閉経後、女性ホルモンであるエストロゲンの働きが低下することによって、腟の壁が薄くなったり、微生物が増えて炎症を起こしたりすることによって引き起こされる疾患です。
萎縮性腟炎の症状としては腟内の分泌物であるおりものが黄色くなり、うみっぽくなります。また、腟の潤いが無くなるため外陰部の腟が乾燥して委縮し、性交痛や出血などが起こります。このため細菌が繁殖します。他にも出血や痛み、外陰部の痒み、頻尿、違和感や熱感などがみられます。
萎縮性腟炎はエストロゲンの欠乏によって起こるため、治療薬ではこのエストロゲンを補うためのものが用いられます。
治療薬には内服薬と腟坐薬があり、内服薬はエストリール錠、プレマリン錠、腟坐薬ではホーリン腟錠、エストリール腟錠が使用されます。治療薬を使用すると5~7日で効果が見られ、遅くても2週間ほどで治癒が見込めます。多くは閉経後に生じるため、投与を中止すると再発することがありますが、エストロゲン製剤のみを使用し続けると子宮内膜が異常に肥厚し不正出血の原因となるため注意が必要です。一般的には一旦症状が軽快したら投与終了して経過を見ることが多いでしょう。
病院に行く前に一時的に症状を市販薬で対処したいと考える方も多くいらっしゃるかと思います。萎縮性腟炎による痛みに対処できる市販薬として「バストミン®」「ヒメロス®」という2種類のお薬があります。
「バストミン®」とは不足した卵胞ホルモンを皮膚から少しずつ吸収させるためのお薬です。エストラジオールとエチニルエストラジオールという活性の高い女性ホルモンを配合しています。さらに皮膚から吸収させるため飲み薬のように肝臓を通過しないことから最初に肝臓で代謝を受ける初回通過効果を受けることが無く、血栓症などのリスクが上がらないことが特徴です。また、コールドクリームのような塗り心地で無香料であるためとても使い勝手の良いお薬です。1年間使用しても特記すべき副作用もなく安全性も高いとしています。
「ヒメロス®」もエチニルエストラジオールとエストラジオールを配合した塗り薬です。肝臓に負担を掛けずに低容量で効果が期待できます。前述したバストミン®よりも塗布した際に熱感を感じることがありますが、かゆみなどの諸症状に対して効果が期待できます。
ホルモン補充療法とはエストロゲンの減少に伴う更年期障害に対して行われる治療法で、エストロゲンを補充することによって更年期障害に伴う身体的、精神的な諸症状を改善させる効果があります。
ホルモン補充療法は、萎縮性腟炎に対しても治療効果があります。
ホルモン補充療法には、卵胞ホルモンを21日間、黄体ホルモンを10日間内服しその後1週間の休薬期間を設けてまた同じサイクルでお薬を使用する「周期的併用法(間欠法)」、卵胞ホルモンを毎日飲み、黄体ホルモンは10日間のみ内服する「周期的併用法(持続法)」、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを毎日飲み続ける「持続的併用法」、卵胞ホルモンのみを飲み続ける「持続的単独法」があります。
子宮を摘出しておらず、まだ持っている人は卵胞ホルモンと黄体ホルモンの双方を併用することで子宮体癌のリスクを上げないように治療を進めない。
なお、ホルモン補充療法は乳がん、子宮がん、血栓症の治療薬を処方されている人、または脳卒中や心筋梗塞を起こしたことのある人は行うことができません。
ホルモン補充療法の治療開始初期、1~2か月は乳房や下腹部のはり、不正性器出血がおきることがありますが、時間の経過とともに改善が見られます。また、胃のむかつきやおりものが増加することもあります。また、エストロゲンの単体使用で子宮体がんの発生リスクが上昇します。
他にも5年以上継続して治療を行った場合には、乳がんの発症リスクが治療をしていなかった人よりも1.26倍ほど上昇します。また、内服薬での治療によって、静脈血栓塞栓症や脳梗塞のリスクも上昇します。これらは元々の発症頻度が低いものの、やはり注意が必要です。
閉経後に女性ホルモンであるエストロゲン量が低下することによって起こる萎縮性腟炎。エストロゲンを補充することによって改善することができる病気です。一般的にはエストロゲンの内服薬を使用しますが、市販薬では外用薬も販売しており、肝臓に負担を掛けずに治療が行えます。また、更年期障害の治療で行われるホルモン補充療法も萎縮性腟炎の治療に効果的であるものの、乳がんや子宮体がん、脳卒中の発症リスクもわずかながら上昇します。自分に合った治療を継続して行い、萎縮性腟炎の悩みを解消していきましょう。
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