無月経だと妊娠することはないの?どうすれば子供を授かれる?

2018/9/7

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

月経が来ない、という症状は、それほど珍しい状態ではありません。しかし、それが何ヶ月も続いている場合は無月経と呼ばれます。無月経は、痛みなどを伴う疾患ではありませんが、妊娠を希望する女性にとっては好ましい状態ではありません。
無月経の方の場合、妊娠の可能性は非常に低いといわれています。そこで、無月経で妊娠しにくい理由や、どのようにすれば妊娠できるのかについて、ご紹介します。

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無月経だと妊娠できる可能性はないの?

無月経の場合、ほとんどが無排卵です排卵と月経はどちらも女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの働きによって起こるものですから、無月経ということはホルモンがうまく機能していないか、十分に分泌されていないことが原因と考えられるのです。その場合、月経周期とともに育ってくるはずの卵子も当然育っていないと考えられます。

ごくまれに子宮内部の組織病変、先天異常、子宮筋腫、ポリープなどの原因によって、ホルモンは働いているのに月経が起こらないということもあります。その場合は排卵は起こっているため、妊娠まで至った人もいます。しかし、これは非常にまれなケースです。

無月経の人のほとんどは無排卵の状態ですから、まずは正常な排卵が行われるように治療を行います。そのうえで、排卵が起こっていることを確認しながら、妊娠を試みます。

無月経で妊娠するには、どんな治療を受ければいいの?

無月経から妊娠を望む場合、まずは月経周期を正常に戻す必要があります。その際、月経がそもそも一度も起こっていないのか、過去には月経があったけれども止まってしまったのかによって治療方法を変える必要があります。前者を原発性無月経と言い、後者を続発性無月経と言いますが、ほとんどの無月経は続発性無月経です。

無月経の診断ってどんなことをするの?

無月経と判断するためには、まず家族歴、既往歴、生活習慣などを聞くことはもちろん、月経が一度も起こっていないのかどうかを問診で確認します。特に、一度も月経の起こらない原発性無月経の場合、確定の診断は18歳まで待つ必要がありますが、日本では15歳までに98%の女性で初経が起こることがわかっているため、16歳になっても月経が起こらなければ原発性無月経の可能性が高いといえるでしょう。

その他、検査は以下のようなことを行います。

  • ホルモンの採血検査
  • 超音波検査
  • CT
  • MRI

ホルモン検査は、女性ホルモンであるLHやFSHが正常に働いているかどうか、また乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンの値を調べます。LHやFSHは月経を正常に起こすために必要なホルモンで、プロラクチンは出産後に母乳を出すために必要なホルモンで妊娠・出産のために月経を止める働きがあります。通常は妊娠によって増えるホルモンですが、何らかの原因でこのホルモンの値が高くなると、妊娠以外でも無月経が引き起こされます。

また、原発性無月経が疑われる場合は、染色体検査も行います。これは後述しますが、原発性無月経の人では染色体異常があることも多いためです。

原発性無月経と続発性無月経はどう違う?治療法の違いは?

原発性無月経は月経自体が始まっていないことで、続発性無月経は一度月経は始まったものの何らかの原因で月経が止まってしまっていることです。

原発性無月経と続発性無月経の原因は、大まかに分けて以下のようなことが考えられます。

原発性無月経
遺伝性疾患(ターナー症候群・カルマン症候群など)
生殖器の先天異常(経血の排出を妨げるもの、処女膜閉鎖症など)
思春期・第二次性徴の遅れ
続発性無月経
視床下部の機能不全
下垂体の機能不全
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
早発閉経(早発卵巣不全)
経口避妊薬、抗うつ薬、抗精神薬などの薬剤の使用

原発性無月経は、遺伝性や生殖器など、先天的な異常が原因であることがほとんどです。非常にまれなケースとして、思春期や第二次性徴が遅れている場合もあります。

続発性無月経は、LHやFSHなどのホルモンの分泌を司令する部分に何らかの機能不全が起こった場合や、多嚢胞性卵巣症候群や早発閉経などの疾患によってホルモンのバランスが崩れることが原因であることが多いです。また、ピルなどの経口避妊薬、抗うつ薬・抗精神薬などの副作用でプロラクチンの上昇が起こると、LHやFSHの分泌が妨げられ、月経が止まってしまうことがあります。

原発性無月経と続発性無月経の治療法の違いは?

原発性無月経の場合、染色体異常によって月経が起こっていないのか、生殖器の閉鎖によって月経は起こっているけれど経血が流れていないのかによって大きく変わります。染色体異常の場合、性ホルモン自体が作られていないことが多いため、ホルモン補充療法が主な治療法となります

生殖器の閉鎖による場合であれば、閉鎖している部分を手術によって開くなどして経血を流れるようにすること、正常に月経が起こるようになります。

続発性無月経は、何らかの疾患または薬剤によってホルモンのバランスが崩れている場合がほとんどですので、まずは原因となる疾患を治療したり、薬剤を変えたりして様子を見ます視床下部や下垂体の機能不全、早発閉経などによる場合は、ホルモンを補充して調整し、正常に月経が起こるようにします

おわりに:無月経でも正常に排卵を起こすことで妊娠できる!

無月経の人の多くは、続発性無月経という疾患です。一度月経は起こったものの、排卵が止まってしまい、それに付随して月経が起こらなくなった状態であり、卵巣の中には多くの卵子が残っていることが多いのです。
ですから、原因となる疾患や症状を突き止め、治療したり、ホルモンを補充したりすることで、正常に月経を起こして排卵を促し、妊娠につなげることができます。決して自己判断はせず、医師に相談しましょう。

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