記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/25
記事監修医師
前田 裕斗 先生
不妊の原因は、その夫婦・カップルによって実にさまざまです。
女性不妊のなかには、男性ホルモンの増加が一因と考えられている不妊原因もあります。
今回は、ベビ待ちさんの女性が知っておきたい不妊原因の1つ「多嚢胞性卵巣症候群」と、男性ホルモンとの関係を解説していきます。
多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)は、PCOSとも呼ばれる排卵障害の一種です。
卵胞が排卵・妊娠に適した状態に育つまでに通常よりも時間がかかり、なかなか排卵が起こらないために、妊娠が難しくなってしまうのが大きな特徴です。
若い女性に起こりやすい排卵障害で、発症の原因はまだはっきりとはわかっていません。
ただ、卵胞が十分に育たず排卵に至らないという病態から、若い女性が多嚢胞性卵巣症候群を発症する一因は男性ホルモンの増加にあると考えられています。
多嚢胞性卵巣症候群を発症すると、以下のような特徴的な症状が出てきます。
総合すると月経の不順や異常に加え、肥満などによる体形・体調の変化、そして体毛・肌質・声の変化といった男性化が代表的な症状として挙げられます。
また、上記のような自覚症状から判断する他にも、基礎体温が通常の2相性ではなく1相性となっている場合にも、多嚢胞性卵巣症候群が疑われます。
妊娠を希望する女性における多嚢胞性卵巣症候群の治療は、排卵を起こさせるための薬剤の投与が基本となります。
具体的には、まずクロミッド®(クロミフェン)を2~6日のサイクルで服用して、これらの内服薬で効果がなければhMG-hCGという注射などで排卵誘発を行います。薬剤によって排卵を起こすことができれば、その卵子で自然妊娠をしたり、また卵子を採取して体外受精・顕微授精での妊娠を目指すことも可能です。
多嚢胞性卵巣症候群の女性のうち、約80%の人が排卵誘発剤の使用で排卵が起こるようになるとされていますが、排卵誘発剤の使用にはリスクもあります。
多嚢胞性卵巣症候群の女性の卵巣は排卵誘発剤による刺激に非常に敏感で、少量では十分な効果が得られないのに、少し量が多くなると過剰反応を起こす傾向が強いです。
排卵誘発剤によって卵巣が過剰反応を起こすと、卵巣が通常の3~4倍にまで膨れ上がり、血液から水が漏れ出してしまう卵巣過剰刺激症候群を発症するケースがあるのです。
このため、本人がすぐに妊娠を希望しない限りは、多嚢胞性卵巣症候群の治療は積極的にすべきでないと考える婦人科の医師もいらっしゃいます。
なお、治療に排卵誘発剤ではなくウンケイトウなどの漢方薬を用いる医院もありますので、詳しくは担当の医師に相談してみましょう。
不妊の原因は夫婦・カップルによって異なりますが、もし女性側に多毛やニキビの増加、肥満などの自覚症状があるなら、男性ホルモン増加による多嚢胞性卵巣症候群が原因かもしれません。
多嚢胞性卵巣症候群は若い女性に現れやすい排卵障害で、妊娠を希望する場合は排卵誘発剤を使って排卵を促すことで治療していきます。ただ身体への負担もあるので、リスクまできちんと理解したうえで治療の意思決定をしましょう。
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