子宮頸がんを予防するHPVワクチン

2017/3/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を予防するワクチンは、日本ではサーバリックス(2価ワクチン)とガーダシル(4価ワクチン)の2種類で、いずれも女性に接種されます。
欧米にならって日本でも、2013年4月に12歳~16歳の女子を対象とする定期接種としましたが、接種後に痛みなどの体調不良を訴える人が相次ぎ、同年6月、積極的に接種を勧めることを中止しました。その後、事実上接種はストップしています。

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HPVとは何ですか?

HPVは、性感染症の原因となるヒトパピローマウイルスの総称です。HPVにはさまざまなタイプがあり、それらが起こす症状に応じて、危険性の高いウイルスもしくは低いウイルスのいずれかに分類されます。ほとんどの子宮頸がんは、危険性の高いHPVに感染することで発症しています。HPV感染には自覚症状がありません。
HPVには100種類以上あり、そのうち約40種類が性器に感染します。リスクの高いタイプのHPVに感染すると、異常組織の増殖だけでなく子宮頸がんの発症につながるほかの細胞変異を起こすことがあります。
そのほかのタイプのHPVでは、以下のような疾患がみられます。
・性器疣贅(せいきゆうぜい):生殖器や肛門部、あるいはその周辺にできる腫瘍もしくは皮膚の変化
・皮膚のイボ、タコ
・腟(ちつ)がんもしくは外陰部がん
・肛門がんまたは陰茎がん
・一部の頭部がんや頸部がん
・喉頭乳頭腫(喉頭もしくは声帯のイボ)

何のためのワクチンですか?

サーバリックス(2価ワクチン)は子宮頸がんなどを起こすHPV感染症を、ガーダシル(4価ワクチン)は子宮頸がんなどを起こすHPV感染症と、尖圭(せんけい)コンジローマなどを起こすHPV感染症を予防します。

接種時期と接種回数

サーバリックス:12歳で接種をはじめ、初回接種の1カ月後に2回目、初回接種の6カ月後に3回目を接種します。
ガーダシル:12歳で接種をはじめ、初回接種の2カ月後に2回目、初回接種の6カ月後に3回目を接種します。

なぜ若年期にHPVワクチンが投与されるのですか?

HPVウイルスは非常に強力で、性行為によって簡単に感染します。ほとんどの女性は16歳になるまで性行為をしませんが、早い段階からHPV感染から身を守ることが重要で、できるだけ早くワクチンを接種することで将来的に自分の身を守ることができます。
特定の健康状態にあったり、重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)があったりするときは特別な注意を払ったほうがよいかもしれませんが、比較的安全なワクチンとされています。

HPVワクチンはどれくらい長く持続しますか?

HPVワクチンは、約10年間HPV感染を防ぐ効果があることがわかっています。その後の研究ではもっと長く効果が持続するともいわれています。

HPV推奨時期にワクチンを接種しなくても、その後接種しても効果はありますか?

何らかの理由でいずれかのHPVワクチン接種を逃したときは、医師に相談してください。
年齢が上がると2回分の投与では効き目があまりないため、15歳以降にHPVワクチンの接種を受けるときは3回の投与が必要です。

子宮頸部検査とHPVワクチン

子宮頸部検査は、がん化する前に子宮頸部の異常な細胞をみつけ出す方法です。子宮頸部の異常を早期に発見し、治療することで、子宮頸がんの4分の3は予防できることがわかっています。
定期的に子宮頸部検査を受けることは、子宮頸部の異常をみつけるのに最適な方法です。HPVワクチンを受けていても、25歳になったら定期的に子宮頸部検査をすることが欠かせません。

おわりに:増える子宮頸がん、どう対処する?

近年、20~30代を中心に子宮頸がんが急増しています。また結婚や初産年齢が高齢化していることにより、妊娠をきっかけに初めて産婦人科を受診して子宮頸がんを指摘されケースが多くみられています。
日本では、定期接種後に体調を崩す報告例が相次ぎ、一部では損害賠償などの訴訟に発展しています。一方で、世界保健機関(WHO)や日本の関連学会は、日本の若い女性が子宮頸がんを予防できるチャンスを失わせているとして定期接種の再開を求めています。
いずれにしても、今後どのようになるのか専門家会議の行方を見守っていきたいですね。

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