糖質制限ダイエットが低血糖の原因?スッキリ痩せるのに必要なのは?

2018/10/11

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

近年、短期間で痩せやすいダイエット方法として糖質制限ダイエットが注目されています。
しかし糖質制限ダイエットは、正しく行わないと血糖値が下がりすぎて頭痛や意識障害を招く低血糖状態を引き起こす原因にもなります。
今回は糖質制限ダイエットと低血糖の関係、また低血糖にならないための対策と発症したときのための対処法について、解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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糖質制限ダイエットが低血糖症状の原因になるのはどうして?

低血糖状態は、従来は糖尿病の初期症状や、糖尿病治療に伴うインスリン投与が原因で起こる症状として、認識されてきました。

しかし、近年では以下のような理由から、糖尿病ではないのに低血糖状態に陥るケースも、増えているといわれています。

  • 砂糖たっぷりのお菓子を食べる「過剰な糖質摂取」の習慣から、膵臓からのインスリン分泌のコントロールが効かなくなり、過剰に血糖値を下げてしまう
  • 糖質制限ダイエットのための「糖質摂取の不足」から、日常生活を送るためのエネルギーも足りなくなり、低血糖状態に陥る

このように、体に合っていないペースでの糖質制限ダイエットは負担となり、低血糖状態を引き起こす一因となってしまうのです。

糖質制限ダイエットで低血糖になると、どんな症状が出てくるの?

糖質制限ダイエットによる低血糖状態に陥ると、血糖値が異常に下がって身体を動かすためのエネルギーが足りなくなり、以下のような症状が出ます。

  • 急激で強い空腹感と抗えないほどの眠気、生あくびを繰り返す
  • 頭痛、動悸、手指の冷えとふるえ、冷や汗
  • 集中力の低下、判断力の低下、いら立ち、無気力
  • 目のかすみ、めまい、ろれつが回らなくなる
  • 意識障害や、昏倒するケースも

上記のうち、低血糖症に陥った人の症状の出方は人それぞれです。
血糖値が下がるに従って順番に症状が出る人もいれば、自覚症状がないまま進行して突然倒れてしまうケースもあるので注意が必要です。

低血糖の症状が出てきたときの対処法は?

糖質制限ダイエット中に、低血糖の症状が出てきてしまった場合は、血糖値を正常値まで回復するために適量の糖分を摂ることをおすすめします。
ドラッグストアなどで売っているブドウ糖のタブレットやゼリーも吸収が速く低血糖症状の改善には効果的です。もし緊急性がないようであれば、チョコレートや飴などショ糖を使った一般的なお菓子を口にするのではなく、血糖値の吸収が緩やかな黒糖やはちみつ、メープルシロップを摂る方が良いでしょう。

通常はブドウ糖を摂ってから15分ほど安静にしていれば、低血糖状態を脱することができます。
なお、ブドウ糖を摂取しても症状が改善されない場合は、別の病気や体調不良が原因の可能性がありますので、医師の診断を受けるようにしてください。

糖質制限ダイエットに取り組むなら、以下のポイントをチェックしよう!

ここまでで見てきたように、身体に必要なエネルギーまで制限したダイエットは低血糖という体調不良を招くため、健康的なダイエットとはいえません。

糖質制限ダイエットに取り組むなら、体に必要なエネルギーはきちんと補いつつ、無理の無い範囲で少しずつ糖質量に制限をかけていくのが正解です。

以下に、糖質制限ダイエットを成功させて健康的に痩せるためのコツ「初級」「上級」の2つのレベル別にご紹介しますので、しっかり確認のうえ実践しましょう。

初級編

はじめは間食の習慣を改めることから始めましょう。糖質を減らした分については、以下のように他の栄養で補う習慣をつけていきましょう。

  • お菓子の間食を、ナッツやチーズなどタンパク質豊富で血糖上昇が緩やかなものに変える
  • 果糖を含む果物は、1日あたり200g100キロカロリーまでの摂取にとどめる
    (目安はみかんなら2個、いちごは12個、キウイ2個、バナナ1本まで)
  • 食事の糖質を制限するため主食であるごはんの量は150gを目安にし、おかずにイモ類など糖質が多いものがある場合は、さらに主食の摂取量を減らす
  • 糖の他に油分も含み、食べすぎてしまいがちな麺類の摂取はできるだけ避ける
  • 野菜ジュースを含み、市販のジュースには糖質が多く含まれているので飲まない

上級編

初級で身体が糖質制限の生活に慣れてきたと感じたら、糖摂取量を1食あたり20~40g、1日あたり130g程度に抑えるよう意識していきましょう。
以下に、1食あたりの糖質量が主食とおかずで30~40g、間食を入れても1日の糖質摂取量が130g程度になるメニュー例を記載していますので、参考にしてください。

《朝》40g程度までの糖質を摂取
6枚切りの食パン1枚(糖質量26.6g)を中心に、ゆで卵、レタス・きゅうり・ミニトマト2個のミニサラダ、牛乳をコップに1杯200ml
《昼》40g程度までの糖質を摂取
お茶碗に半分ほどの70gのごはん(糖質量25グラム程度)を中心に、鶏のから揚げ4個、付け合わせのトマトとキャベツ20g、わかめの味噌汁1杯
《間食》タンパク質と20g以内の糖質を摂取
果糖を含むみかん1個、タンパク質豊富なアーモンドやくるみなどナッツを10粒
《夜》40g程度までの糖質を摂取
お茶碗に半分ほどの70gのごはん(糖質量25グラム程度)を中心に、豆腐100gを使った麻婆豆腐、ネギと卵のスープ1杯、チンゲン菜1個分の炒め物

なお、摂取する糖質量を計算しながら制限する場合も、血糖値が下がりすぎないよう制限した糖質をタンパク質や脂質で補うことを忘れないでください。

おわりに: 過度な糖質制限ダイエットは低血糖症の原因に!

本来、糖質は人間の身体を動かすのに欠かせない栄養素です。このため、ダイエットのためと言って無計画に一切の糖質摂取をやめてしまうと、健全に身体を動かすための糖質も足りなくなり、低血糖状態に陥ってしまいます。糖質制限を成功させ、健康的にきれいにやせるには、段階的な糖質制限と制限した分の糖質を他の栄養素で補うという考え方が大切です。この記事を参考に、正しい方法での糖質制限ダイエットを成功させましょう。

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