記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
健康診断をきっかけに、自覚していなかった体の異変に気づくことはありませんか? 時には聞いたことのない病気を知らされるなんてことも。
では、もし「十二指腸憩室」という病気の可能性を指摘されたら、一体どんな対応をすればいいのでしょうか。
食べ物の吸収消化は、消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸など)の働きによるものです。憩室(けいしつ)とは消化管の壁が外側に突き出た状態を指し、いずれの消化管でも発症する可能性があります。
十二指腸憩室は、消化管の内部の圧力が大きくなり、腸の内壁に袋状のくぼみができて外側に突き出てしまったものです。すべての腸管壁が突き出ている状態を「真性憩室」といい、先天的に発生しているケースが多いといわれています。なんらかの原因で後天的に発症したものは「仮性憩室」と呼びます。仮性憩室の十二指腸憩室は大きさが1~3cmほどです。
胃に発生する憩室と比較して、十二指腸憩室は増大する可能性が高いと考えられています。多発することはほぼなく、単発であるのも特徴のひとつです。
十二指腸は小腸の一部です。指を12本並べたのと同じくらいの長さをしていることがその名の由来とされますが、実際の全長は25cmほどあります。
十二指腸は、胃と空腸(小腸の一部)をつないでいて、周辺には膵臓や胆のうがあります。胃で消化された食べ物が十二指腸に届くと、膵液や胆汁と混ぜ合わされ、さらに消化されて小腸へと運ばれます。
そして、十二指腸には膵液と胆汁の注ぎ口のような部位があり、これを「ファーター乳頭」と呼びます。十二指腸憩室はファーター乳頭の周辺に発生するケースが70~80%を占めます。ファーター乳頭の近くにある腸壁は丈夫ではなく、加齢の影響や腸管内圧に弱いため、憩室が発生しやすいといわれています。
十二指腸憩室では多くの場合は自覚症状がありません。発症していることに自分で気づくことはあまりなく、健康診断などで偶然発見されることがほとんどです。
十二指腸憩室は大きめのことが多いため、食べ物が憩室内にとどまって炎症を起こす可能性は低いとされます。また大腸などと比べて十二指腸には細菌があまり住んでいないので、感染症にかかりにくいといえます。
ただしまれにですが、出血や感染、消化管に穴が開くことがあり、腹痛や発熱がみられる「急性憩室炎」を発症します。この場合は手術や抗生物質の投与が必要となります。そのほか十二指腸憩室が「胆石症」「膵炎」の原因となるおそれはあります。
憩室発生の主な原因が十二指腸内部の圧力の増加であり、生活習慣病などとは異なるため予防は難しい病気です。症状がない場合は、治療は行わずに経過観察をします。大体は予後が良好なケースであるため心配はいりません。腹痛や発熱があらわれたら病院を受診してください。
ただし「憩室炎」「レンメル症候群」などの合併症が起きている場合は手術を行います。
高齢の人の腸壁は弱く憩室ができやすいので、消化管に負担をかけすぎないようにするのがおすすめです。刺激の強い食品や暴飲暴食はなるべく避けるとよいですが、十二指腸憩室が重篤な症状を引き起こすケースはまれですので、そこまで心配する必要はありません。
「十二指腸憩室」という聞きなれない病名で身構えてしまう人も少なくありませんが、十二指腸憩室では早急な治療が必要となるケースは多くありません。気をつけたいのは合併症です。黄疸や激しい腹痛がみられたらすぐに病院を受診してください。
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