記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/10 記事改定日: 2020/6/2
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
お腹がはって苦しい、激しい痛みが続く。そんな辛い症状の原因は腸内ガス、いわゆるお腹の中にたまったおならかもしれません。ちょっと恥ずかしくて人に相談しづらいと思うこともあるでしょうが、腸内ガスを放っておくと危険な状態を招くこともあるのです。
腸内ガス(おなら)には、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、硫化水素、メタンなどの成分が含まれています。普段の食生活がこれらの成分の割合を決めますが、食事のときに飲み込んだ空気が腸内ガスの約70~90%を占め、通常はげっぷやおならとして飲み込んだ空気は排出されます。一日で0.5~2.0Lの量のガスが排出されています。
胃や腸の働きが低下すると、腸内ガスがうまく排出されずに体内にたまってしまうことがあります。するとお腹がはる、腹痛、吐き気などの症状があらわれ、まれではありますが激しい腹痛が起きるときもあり、顔面蒼白や意識が遠のくこともあります。
腸内ガスを発生させるものとして、主に3つのきっかけが挙げられます。
人が食事するとき、食べ物だけでなく空気も飲み込んでいます。早食いの人はとくに空気を飲み込みやすいです。
また日本の食文化には蕎麦を食べるときや熱いお茶飲むときに「すすって食べる(飲む)」という習慣がありますが、このようなかたちで食べもの・飲みものを口にするときは空気も多く飲み込んでしまいがちです。
ビールや清涼飲料水など炭酸を含む飲みものは、腸内にガスを発生させることがあります。
体内では腸内細菌が食べ物を分解し栄養分を吸収していますが、分解するときに腸内ガスが発生します。腸内ガスに発生させやすい食べものの例を紹介します。
いも類などの炭水化物は、二酸化炭素、水素、メタンを多く含む腸内ガスを発生させます。ただ、臭いはあまり強くないことが多いです。
肉や卵、乳製品などたんぱく質を豊富に含む食品は、アンモニアや硫化水素、インドール、スカトール、アミンなど強い臭いの成分を生み出します。またニンニクやにらなどの硫黄分を多く含む食品も臭いを強めます。
脂肪分が分解されると「脂肪酸」となりますが、このときに腸内ガスが増えやすいです。
牛乳を飲んだときにお腹がゴロゴロする「乳糖不耐症」の人は、小腸でうまく分解されなかった乳糖が腸内ガスのもととなる場合があります。
肝硬変など腸の粘膜の血行がよくない人は、腸内ガスが増えやすい傾向にあります。
腸内ガスがたまらないようにするために日常生活でできることは「余分なガスを体内に入れない」「ガスの発生をおさえる」「体内のガスはためない」ことです。
ガスを体内に入れないようにするには、よく噛んでゆっくり食べ、空気を余分に飲み込まないようにしましょう。また、げっぷは胃の中の空気を排出するためのものなので、食後にげっぷが出そうになったら我慢はしないでください。
人前を避けるなどマナーを守りつつ、腸内ガスを体内に入れないようにしましょう。
便秘で体内に便がたまるとガスのもとになります。食物繊維や善玉菌を豊富に含む食品をとり、スムーズな排便を促します。
おならやげっぷを我慢すると、腸内ガスの排出を妨げます。またストレスや運動不足は腸の働きを低下させますので、適度に取り入れてください。
お腹にガスが溜まりやすいといった症状は次のような病気によって引き起こされることがあります。症状が長く続くときは放っておかず、できるだけ早めに病院を受診するようにしましょう。
腸が詰まったり、腸の動きが悪くなったりすることで正常な消化運動がストップしてしまう病気のことです。発症するとお腹全体の痛みや吐き気が起こり、お腹にガスが溜まって強い張りが生じるようになります。
また、イレウスの特徴は、お腹の張りはあるものの便やガスが出なくなるという点にあります。この病気は腹膜炎やがんなどの病気が原因で引き起こされることもあるので注意が必要です。
無意識のうちに多くの空気を吸い込んだり、飲み込んだりしてしまう病気のことです。早食いや大食いなどの方が発症しやすいほか、ストレスや不安感が発症の引き金となることもあります。
空気を口から摂り込んでしまうことでお腹の中にはガスが溜まりやすくなり、ゲップやおならの回数が増えていきます。
ストレスや過労などが原因となって腸の運動に異常が生じることで、腹痛、下痢、便秘など排便のトラブルを起こしやすくなる病気です。
症状の現れ方は人によって異なりますが、ガスがたまりやすくなることは多いようです。
小腸閉塞(イレウス)を発症すると食べ物や消化液の通り道である腸管の流れが悪くなり、腸内ガスが体内にたまり、お腹のはり、激しい腹痛、嘔吐、便・ガス(おなら)が出なくなるどの症状がみられるようになります。
イレウスは腹部の手術後に臓器に癒着が生じたり、便秘や腫瘍による腸への圧迫など、さまざまな要因によって引き起こされます。
腸がねじれたり絞めつけられたために発症する「複雑性イレウス(絞扼性イレウス)」は腸の血行障害による組織の壊死を引き起こし命に関わることもあるため、緊急手術となります。
イレウスの診断には、一般的にレントゲン(X線)検査やCT検査が必要です。気になる症状があるときは、すぐに病院を受診しましょう。
腸内ガスは誰にでも発生しているものです。ところが食生活や腹部の手術歴によってガスの量や成分は変わってきます。体に悪影響を与えるガスの発生を抑え、排出を促すようにしましょう。つらいお腹のはりや腹痛があらわれたら早めに病院を受診しましょう。
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