調べてもわからない消化管からの出血、小腸の可能性ってどのくらい?

2018/10/26

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

消化管とは食道から胃、小腸、大腸に至るまでの食物の通り道のことをいい、そのいずれかの部位で出血が起こると消化管出血と呼ばれます。原因疾患によってその部位・出血量・期間はさまざまで、中には検査でなかなか原因が見つからないものもあります。
検査で発見できないもののうち、小腸から出血している可能性はどのくらいなのでしょうか?また、小腸から出血している場合の症状や、診断方法はどのようなものなのでしょうか?

原因不明の消化管出血は小腸からのものが多い?

原因のわからない消化管からの出血は、上部・下部消化管の内視鏡検査では原因が特定されないもののことをいい、消化管からの出血患者の10〜20%を占めます。また、これらの出血例の約半数ではカプセル内視鏡や小腸内視鏡検査によっても出血源が特定されず、再出血を繰り返すことが多いです。そのため、入院の反復や多量の輸血を必要とする場合もあります。

原因不明と診断された後に詳細な診断が下された例については、小腸潰瘍・小腸びらん・血管異形性・小腸腫瘍が多く、最も多いものは小腸潰瘍または小腸びらんです。小腸潰瘍・小腸びらんは組織学的に検査を行っても特異的な病態が検出できず、明らかになっていない症例が多く見られます。

いずれの場合も、血管異形性を除き、小腸に関する疾患であることが多いことから、原因不明の消化管出血の多くは小腸に何らかの疾患があって出血しているものと考えられています。また、原因不明消化管出血の患者で小腸出血と診断される場合に、しばしば非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用していることがあるため、小腸出血の原因の一つにNSAIDsがあるのではないかと考えられています

消化管出血があると、どんな症状が出てくる?

消化管出血は、出血をきたすに至った原因疾患によるその他の症状がある場合と、出血および貧血の症状のみが見られる場合があります。出血以外の症状が現れるのは主に小腸腫瘍の場合で、このときは狭窄症状が見られます。

出血は状態によって3つに分類されます。

  • 明らかな進行中の出血
  • 以前にあった明らかな出血
  • 継続して血液が混入している

このうち、明らかに現在進行中の出血が認められる場合、早急に検査と治療が必要です。以前に出血があったと思われる場合は緊急性はありませんが、注意が必要です。また、血液が混入している状態を潜血といいますが、明らかに肉眼で認められるほどの出血ではないが出血はある状態ですから、こちらも経過観察などの注意が必要です。

出血に伴う症状としては、タール便・黒褐色便・血便など、便に血液が混入して異常が現れるものと、貧血があります。貧血は、末消血液検査でのヘモグロビン値が5g/dL前後に低下する場合がしばしば見られます。基準値が男性で13.5〜17.6g/dL、女性で11.3〜15.2g/dLですから、基準値の半分以下に低下していて、場合によっては輸血を必要とするほどの重度な状態です。

消化管出血の症状はどうして起こるの?

原因不明の消化管出血は多くの場合、小腸からの出血であることはわかっていますが、小腸の潰瘍やびらん、小腸腫瘍、血管異形性病変などの症候群をまとめて診断している状態であり、これらの疾患がなぜ発生するのかについてはわかっていません。

ただし、一部の小腸潰瘍やびらんについては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用が原因と考えられており、この場合については粘膜防御因子製剤やプロスタグランジン製剤などが有効ではないかと期待されています。

小腸からの出血が疑われる場合、どうやって調べるの?

小腸からの出血の有無を調べるには、カプセル内視鏡による検査とダブルバルーン内視鏡による検査の2種類があります。

カプセル内視鏡検査は、薬のカプセルよりも少し大きい26mm×11mmのごく小さなカプセルを飲み、消化管の動きによって少しずつ体内を進んでいきながら1秒間に2枚ずつ体内の画像を撮影していくという検査です。体内に留まっている時間はおよそ7〜8時間で、5万〜5万5000枚の画像をレコーダーに記録し、コンピューター解析を行います。

ダブルバルーン内視鏡は、長さ2mのスコープとバルーンのついたオーバーチューブを組み合わせた器具で、バルーンを膨らませたりへこませたりしながら、オーバーチューブとスコープを操作し、小腸を折りたたむように奥へと進んでいきます。検査時間はおよそ1〜2時間で、X線透視によって位置を確認しながら進めていきます。

種類 メリット デメリット
カプセル内視鏡
  • 身体的な負担が少ない
  • 重篤な偶発症の起こるリスクが少ない
  • 病変の観察・指摘に有効
  • スクリーニング検査・経過観察に最適
  • 生検して組織学的な確定診断ができない
  • 内視鏡治療に用いることができない
  • 食道・胃・大腸は十分な観察ができない
  • 撮影時間に限りがあるため、小腸の奥を撮影できないことがある
ダブルバルーン内視鏡
  • 通常の内視鏡のほぼ全ての処置が可能
  • 2回の検査で小腸の90%以上の部位に到達できる
  • 術中内視鏡検査が不要になる
  • 小腸内に長く挿入するため、疼痛が強い
  • 疼痛のため、セデーション(鎮静)が必要
  • 誤嚥・腸管穿孔、膵臓の圧迫による膵炎などの合併症のリスクがある
  • 侵襲性が大きく、身体的な負担が大きい

カプセル内視鏡は患者さんの体に対する侵襲性も低く、カプセルが上手く抜けず体内に留まってしまうこと以外で重篤なリスクがないことから、病変の観察・検出として最適な検査です。

消化管が狭く、カプセルが詰まってしまう可能性がある場合、カプセル内視鏡と同じサイズで30〜33時間程度経つと崩れて溶けて排出されるバテンシーカプセルをあらかじめ飲んで、内視鏡検査ができるかどうかの確認を行います。形が崩れないまま排出されるか、レントゲンやCTなどで大腸まで進んでいれば、内視鏡のサイズが通り抜けられることがわかりますから、カプセル内視鏡検査を行うことができます。

また、同様に消化管が非常に狭いとあらかじめわかっている場合、腸閉塞の既往歴がある場合、妊婦さんなどは検査を受けることができません。カプセル検査を行った結果、何らかの要因で自然排出されなかった場合は、内視鏡で回収したり、外科手術によって回収・狭窄部分の切除を行うこともあります。

カプセル内視鏡とバルーン内視鏡を併用することもあるの?

狭窄などのカプセル内視鏡を使えない障害のない患者さんの場合、カプセル内視鏡でまずスクリーニング検査を行い病変を発見するとともに位置を確認し、バルーン内視鏡で発見された病変の精査や治療を行うという2段階の治療を行うのが基本的な戦略です。これは、カプセル内視鏡の方が圧倒的に患者さん自身の体に対して負担が少なく簡便であるため、病変の位置やおおよその状態を推定するのにはカプセル内視鏡の方が有用であることによります。

カプセル内視鏡で位置と病変の推定を行った後、内視鏡で精査を行い、確定診断や治療を行います。また、バルーン内視鏡よりもカプセル内視鏡の方が微小血管性病変の検出が得意であり、カプセル内視鏡で発見できなかった粘膜下腫瘍などの病変もバルーン内視鏡では発見可能なため、両検査を併用することで診断の見落としのリスクを減らすこともできます。

おわりに:消化管出血は小腸からのケースが多い

原因不明の消化管出血は10〜20%で、そのほとんどが小腸からの出血と考えられています。上部・下部内視鏡検査では小腸まで届かず、通常の内視鏡検査では発見できないためです。

原因不明の消化管出血と診断された場合、カプセルまたはバルーン内視鏡にて検査すれば、約半数の症例で小腸のどの部位から出血しているのか特定することができます。出血の症状が見られた場合は、できるだけ早く病院に行きましょう。

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