記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/28 記事改定日: 2020/6/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
カルシウムが蓄積する腎臓の石灰化と腎結石には、どのような違いがあるのでしょうか。また、石灰化が結石に移行することはあるのでしょうか。石灰化した場合の対処法や予防法などを解説していきます。
腎石灰化と腎結石は、同じ状態ではありません。
腎結石とはシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸、稀に、シスチン、リン酸マグネシウム、アンモニウムなどが結晶化して、腎臓内に沈着したもののことをいいます。
なかでも多いのはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムで、腎結石の約80%を占めています。また、リン酸マグネシウム、アンモニウムにおいては、腎盂腎炎といって尿に細菌が入って感染を起こした際にできやすい物質です。
これらのさまざまな物質が尿中に溶けきれずに析出して核ができ、次第に結石として形を形成していきます。この現象は腎臓の乳頭部で起こりますが、石が乳頭部を離れて、腎杯や腎盂で詰まってしまうことで腎結石としての症状が出現します。
腎石灰化とは、腎臓の感染、炎症、梗塞に伴い腎臓実質部分にカルシウムが沈着したもの、もしくは腎臓の血管壁にカルシウムが沈着したもののことをいいます。
腎結石と腎石灰化は腹部超音波検査において区別をすることがとても難しいため、検査をする検査技師と、画像を読み込んで診断をする医師とで、しばしば意見が分かれてしまうこともあります。
腎臓の石灰化は、見つかったとしても症状がほとんど出現しません。そのため、放置したからといって重大な病気に発展する可能性は非常に少ないことが一般的です。しかし、ごくまれに尿路結石となってしまうこともあります。
石灰化と尿路結石の判別は非常に難しいものです。石灰化だと思っていたら尿路結石であったということもあります。そのため、気になる方は年に1回のペースで検査を受けて経過を見ておくことが賢明でしょう。
腎臓の石灰化は、摂取するカルシウムの量が不足すると、不足したカルシウムを自分の骨を溶かして補おうすることで起きるものです。
骨が溶けると血液中のカルシウム量が増えます。血液中のカルシウムは、血液100ml中10mgの一定値に保つことが必要です。そのため、余分なカルシウムは骨や血管、細胞に沈着します。この仕組みによって腎臓にカルシウムが沈着することが、腎臓の石灰化の原因となります。
腎臓の石灰化が起こったとしても、すぐに何らかの症状が現れるわけではなく、初期段階ではほとんど自覚症状はありません。健康診断などで偶然発見されるケースも多く、発見されたとしても特別な治療を行うことはなく定期的な経過観察を行えばよいとされることが大半です。
しかし、腎臓の石灰化が徐々に進行し、石灰化して固くなった結石が尿管に流れ込んで激痛や血尿を引き起こすことがあります。また、細菌感染を起こして尿路感染症を発症すると、腎盂腎炎や敗血症など重篤な病気を併発するおそれもあります。
腎臓の石灰化が巨大化して正常な腎臓の組織が大きなダメージを受けるようになると、腎機能の低下が起こることで正常に尿の生成や排出が行われなくなり、むくみや疲労感などの症状が現れるようになります。
石灰化は日常生活の中で予防していくことが可能です。最も気をつけたいことは身体の酸性化です。身体が酸性化するとpHを調節するために骨からカルシウムが溶け出し、石灰化の原因にもなります。
酸性体質を改善するためにも、夜遅くに食事を摂らないようにしたり、酢や野菜、海藻などアルカリ性食品を積極的に摂りましょう。また、適度に体を動かしたり、便秘にならないように排便のコントロールをすることで酸性化を防ぐことができます。
長時間座ったり同じ姿勢を続けたりすると、腰や首などに負荷がかかり、そこにカルシウムが沈着しやすくなります。腎臓は腰の付近にあるため、同じ姿勢を続けていると腰にカルシウムが沈着するおそれがあります。姿勢をこまめに変えたり体操をするなどして、体を柔らかく保ちましょう。
カルシウムを健康食品で補うときは、ただ量を多くとるのでなく、なるべく骨に届きやすい良質なものを摂るようにしましょう。活性化カルシウムや吸収が良いとされるカルシウムが確実に骨まで届くとは限りません。
良質で安心できる成分で、骨に届きやすいカルシウムが含まれる食品は、小魚、海藻、野菜、豆類、ボレイ(漢方薬)が代表的です。
腎臓の石灰化は、腹部超音波検査などで検査をしても腎結石と区別することが非常に難しいことが特徴です。放置していても問題はないものですが、まれに腎結石となることがあります。気になる人は定期的に検査を受けたり、セルフケアで石灰化予防を取り入れましょう。
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