記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/14
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腸のがんといえば「大腸がん」は、がんの中でも非常に多いタイプとして知られています。では、「小腸がん」の発症は珍しいのでしょうか。自覚症状や治療法なども併せ、解説します。
小腸がんはとても稀な疾患ですが、その中でも特によく見られるのが、神経内分泌腫瘍と腺がんです。
NETはNECなどの他のがんと比較すると比較的進行が緩やかなもので、特徴として一部の患者さんにホルモン産生症状が起こることがあります。
ホルモン産生症状とは、セロトニンなどの血管に働きかける作用を持つホルモンが過剰分泌されることによって起こる、顔の紅潮、ほてり、下痢、腹痛などの症状です。
このようなセロトニンの過剰分泌が長く続くと、心臓内膜が硬くなることにより心不全が起こる可能性があるため注意が必要です。
ただし、ホルモン産生症状が起こらないケースもあり、その場合は進行した腸閉塞に伴い腹痛、下血、貧血などが見られることが多いとされています。
また、NETは肝臓に転移しやすい傾向があるため、肝機能の数値の異常により発見に至ることもあります。
腫瘍が大きくなる速度が速く、まだ腫瘍が小さい段階で他の臓器への転移が見られることも少なくありません。そのため、発見される頃には病態が進行した状態であることが多いとされています。ただし、ホルモン産生症状はあまり見られません。
腺がんは初期の状態では目立った症状はなく、がんの進行に伴う腸閉塞、下血、貧血などにより発見に至るケースが多いとされています。
また、患者さんの約半数には発見された時に既に他の臓器への転移が見られるとされており、腺がんの発症リスクを高める病気として以下のようなものが挙げられます。
ただし以上の病気があっても、必ずしも腺がん発症に至るわけではありません。
小腸がん自体が非常にまれな病気のため、腹痛やクローン病などのそれらしき症状やリスクが見られる場合でも、あまり不安にならずに、まずは医療機関で診てもらいましょう。
小腸は胃と大腸の間に位置しており、細菌・ウイルス・飲食物などの外部からの刺激を受けにくいため、胃がんや大腸がんなどの他の消化器がんと比べると発症率が低いとされています。
初期の状態では目立った症状が現れないことや、胃カメラや大腸カメラによる検診では小腸まで観察することができないことなどにより、発見が遅れて腸閉塞が起こり、腹痛、吐き気、嘔吐、下血、貧血などの症状が現れて発見に至ることが多いのです。
また、小腸腺がんは小腸の前半部分に生じることが多く、45%が十二指腸、35%が空腸、20%が回腸の確率で起こるとされています。
早期がんの場合は自覚症状がないことが多いですが、十二指腸の奥より肛門側に病変が見られる場合は、便潜血検査陽性、貧血、腸の狭窄に伴う腹痛や腸閉塞などをきっかけに発見されることが多いです。十二指腸の病変の進行に伴い胆汁の出口が塞がれると、黄疸が出現することもあります。
小腸がんの治療方法を、NET・NEC・腺がんに分けて説明していきます。
NETの治療は手術での切除が主であり、手術ができない場合などに薬物療法が検討されます。
NECは診断時にすでに他の臓器への転移が見られることが多いため、抗がん剤による治療を基本として、シスプラチン、エトポシド、イリノテカンなどの注射薬を併用します。
小腸とその周辺のリンパ節にのみがんが見られる場合は、手術と抗がん剤を組み合わせた治療が行われることがあります。
腺がんの治療法は、がんの深さ、転移の有無などにより異なります。
ステージⅠ~Ⅲの段階の治療では、病巣の切除が基本となります。
ステージⅣや術後に再発した場合は、化学療法による全身への治療が適応されます。小腸腺がんに対しては、大腸がんの治療で行われる「フッ化ピリミジン+オキサリプラチン療法」(CAPOX療法、FOLFOX療法)などの化学療法が効果的とされています。
また、小腸の腺がんが再発するケースは多くありますが、未だ再発予防に効果的な治療法や保険償還されている薬剤はありません。そのため、術後には慎重な経過観察が必要となります。
小腸がんは、胃がんや大腸がんなどの他の消化器がんと比べると発症率が低く、初期の状態では目立った症状が現れないことや、胃カメラや大腸カメラによる検診では小腸まで観察することができないことなどにより、発見が遅れることが多いとされています。
小腸がん自体が非常にまれな病気のため、それらしき症状やリスクが見られる場合でも、慌てずに医療機関で診てもらうことが大切です。
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