記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
大腸や小腸の粘膜に炎症や潰瘍が起こる「クローン病」とは、完治する病気なのでしょうか。手術をすれば、もう再発することはないのでしょうか。以降で解説していきます。
大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす、原因不明の疾患であるクローン病は、長期にわたって症状が出ない状態である寛解を維持している方もいますが、完治をすることはありません。現時点では原因及び完治のための治療法が確立されておらず、寛解の状態から再燃をすることも多々あり、再燃と寛解を繰り返す病気として考えられています。
そのため、クローン病の治療方針は炎症をコントロールし、長期間寛解を維持すること、さまざまな治療を組み合わせて炎症の再燃・再発を予防し患者さんの生活の質を高めるということとなります。
クローン病の治療法は、内科治療と外科治療があります。内科治療がメインとして行われますが、腸閉塞など合併症を発症した場合には外科治療を優先して行います。
内科治療では栄養療法(食事療法)、薬物療法、顆粒球除去療法があります。栄養療法(食事療法)では、経腸栄養もしくは完全中心静脈栄養という方法を用います。経腸栄養では抗原性を示さないアミノ酸を主体として脂肪をほとんど含まない成分栄養剤であるエレンタールや、カゼイン、大豆タンパクを含む半消化態栄養剤であるラコールなどが使用されます。完全中心静脈栄養は高度な狭窄がある場合、広範囲な小腸病変が存在する場合、経腸栄養療法を行えない場合などに用いられます。
これらの治療方法で、腸管炎症を抑制させて症状を改善させます。病気の活動性や症状が落ち着いてきたところで通常の食事に切り替えることができます。一般的には低脂肪・低残渣の食事が推奨されています。
薬物療法では、5-アミノサリチル酸製薬 (メサラジン、サラゾスルファビリジン)、ステロイド薬、免疫調整薬(アザチオプリン、イムランなど)、抗TNF-α抗体(レミケード®、ヒュムラ)が主に用いられますが、これ以外に痔瘻合併例においては抗生物質(シブロフロキサシン、メトロニダゾールなど)も用いられます。
特に5-アミノサリチル酸製薬と免疫調整薬は症状が改善しても、再燃予防のために継続して投与されることが多く、抗TNF-α抗体は、他の薬物治療が無効であったときに使用されます。薬物を用いた治療には副作用を伴うことが多いのが特徴です。
顆粒球除去療法では血液を体外に循環させて炎症を起こしている白血球を吸着して取り除き、血液をまた戻します。
外科的治療では主に高度な狭窄、多量の出血、穿孔(膿瘍)、瘻孔などの場合に選択されます。腸管をできるだけ温存するために小範囲の切除や狭窄形成術といった治療法が用いられます。
クローン病は一度手術をしても再発することはあります。クローン病の手術は合併症の症状を改善する目的で行われ、完治のために行うものではないため、再発はするものと考えておく方が良いでしょう。その頻度は発症後5年で約30%、10年で約70%とかなり高いことが報告されています。再発後に再手術をする割合は手術後5年で16~43%、10年で26~65%ほどとなります。
また、手術をした後は、腸をつないでいるつなぎ目である吻合部から再発することが多いとされています。さらに大腸だけに病変がある方では再発する確率が低く、瘻孔によって手術を受ける方はそれ以外の理由で手術をする方よりも再発率が高いとされています。
手術後も薬物療法を行うことで再発する確率はぐんと低くなるため、継続した治療を行うことが必要となります。
クローン病は完治のための治療法が確立されておらず症状が出現しない寛解期と症状が再発する再燃期を繰り返す病気です。治療は外科的治療と内科的治療に分かれており、内科的治療では薬物療法、栄養療法などがあり、さまざまな治療法を組み合わせて治療を行います。手術をしても再発する可能性は十分にあり、薬物などを用いて継続して治療を行うことは必要不可欠です。
治療を継続して長期にわたって寛解状態を維持し、炎症の再発、再燃を予防して生活の質を高めていくことを目標としています。症状が消失したからといって治療を自己中断せずに継続して行っていくことが大切です。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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