クローン病と潰瘍性大腸炎の違いとは!?どちらも「がん化」するの?

2017/10/17 記事改定日: 2018/10/5
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

難治性の腸疾患として知られる「クローン病」と「潰瘍性大腸炎」ですが、この2つの病気はどう違うのでしょうか?症状や治療方法、がん化のリスクについて詳しく解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

クローン病潰瘍性大腸炎の特徴と症状の違い

クローン病と潰瘍性大腸炎はどちらも炎症性腸疾患と呼ばれ、似ているイメージもありますが、主たる症状や発症年齢層に相違点はあります。

まずクローン病の主症状は下痢、腹痛、発熱などで、10~20代に好発します。一方の潰瘍性大腸炎の主症状は血便、粘血便、粘液便で、こちらも若年層に多く起こりますが、中年層から高年層にも発症者がみられるのが特徴です。また、クローン病は消化管の全ての部位で炎症が起こる可能性があるのに対し、潰瘍性大腸炎は炎症が起こるのは原則として大腸に限定されるというのも違いのひとつです。

これらの症状や炎症部位が診断基準となりますが、血液検査や糞便検査、消化管のX線造影検査、内視鏡検査などを行って病気を確定させていきます。

炎症性腸疾患とは?

炎症性腸疾患とは、大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症、または潰瘍をひきおこす疾患の総称のことです。

これらの病気は30歳になる前の若年での発症が多く、長期的に腹痛や下痢、血便、腹部膨満感などが続く原因不明の難病です。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら症状が続きます。すぐに命を落とすような重篤な病気ではありませんし、適切な治療を行えば日常生活も問題なく送れますが、完全に治ることはありません

また、炎症性腸疾患には複数の病気があるので、原因も1つだけではありません。疾患の種類にもよりますが、遺伝が関係するものや、免疫異常が原因のものなどさまざまです。

治療方法に違いはあるのか?

クローン病と潰瘍性大腸炎の治療法は似ている部分も多いですが、少し異なる点もあります。

クローン病

クローン病の治療法は、薬物治療や外科治療が中心です。薬物治療で使用される薬剤には、5-ASA製剤、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、抗TNFα製剤などがあり、症状や重症度に応じ、さまざまな薬剤を組み合わせて治療を行います。
また腸管に炎症があったり、栄養の吸収に障害があったりする場合は、栄養療法を用いる事もあります。さらに腸閉塞や穿孔などが発見された時、薬物治療で効果が見られなかった場合は手術を行うケースもあります。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎も薬物治療が基本で、クローン病と同じく、5-ASA製剤、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、抗TNFα製剤など用いられます。
また、ステロイド治療に効果がない患者に対して、活性化した白血球を除去して大腸粘膜の炎症や症状を改善させる血球成分吸着除去療法を選択する事もあります。

食事の注意点に違いはあるか?

クローン病の食事療法は高カロリー、低脂肪食、低残渣食(ていざんさしょく)が基本となります。発熱等の症状や、腸管の炎症、潰瘍の修復のために通常の人よりもカロリーを多く摂取する必要があります。一方の潰瘍性大腸炎は、適正カロリー、低脂肪食、低残渣食が基本で、クローン病のようにカロリーを増やす必要はありません

両方の病気の食事で気をつけたいのが低脂肪、低残渣です。
まず脂肪は腸管の蠕動運動を刺激したり、脂肪の消化吸収に必要な胆汁酸が腸管に刺激を与えて下痢や腹痛を引き起こしたりするため、制限が必要になります。豚脂や牛脂などの飽和脂肪酸はなるべく避け、いわゆる青魚に含まれるn-3系の脂肪酸を積極的に摂りましょう。

そして、低残渣とは不溶性の食物繊維を控えるという事です。
不溶性の食物繊維は腸管を刺激し炎症悪化の原因となるため、レンコンやたけのこ等の硬い素材は控え、野菜を摂取する時は繊維を細かく切っておく等の工夫が必要です。

クローン病や潰瘍性大腸炎は、大腸がんになりやすい?

クローン病や潰瘍性大腸炎など、腸管に炎症が生じる病気の人は大腸がんを合併しやすいことが分かっています。

どのようなメカニズムで大腸がんを発症しやすくなるのかは明確には解明されていませんが、近年の研究では大腸粘膜に長期的な炎症が生じることで、粘膜組織に変化が生じ、遺伝子変異や粘液分泌の変化などが引き起こされると考えられています。また、炎症細胞が腸管粘膜に集中するため、酸化ストレスがかかる、腸内細菌のバランスが乱れることなども大腸がんのリスクになるとの説もあります。

このような炎症性腸疾患によって発生する大腸がんは、狭窄を生じているケースが多く、腸閉塞様の症状が現れやすいのが特徴です。また、大腸のどこにでも発生する可能性があります。
中には、腹痛や血便など原因となる炎症性腸疾患と同様の症状のみが生じることもあり、放置されてしまうケースもあります。

大腸がんは早期治療が何よりも大切ですので、早期発見のためにも定期的に内視鏡検査を受けるようにしましょう。

おわりに:クローン病と潰瘍性大腸炎。似ている点もあるが、症状も対処法も異なる

クローン病と潰瘍性大腸炎は同じ「炎症性腸疾患」というくくりではあるものの、症状や発症部位なども異なる別の病気です。食事での注意点も違ってくるので、それぞれの病気に合ったケアをしていくことが重要です。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

食事(226) 治療(464) 原因(608) 特徴(49) 違い(36) 炎症性腸疾患(8) クローン病(20) 潰瘍性大腸炎(23)