炎症性腸疾患(IBD)の主な疾患ってどんなもの?

2018/9/6

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「炎症性腸疾患」とは、具体的にどのような疾患を指すのでしょうか?該当する疾患の症状や治療法について、解説していきます。

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炎症性腸疾患とは

炎症性腸疾患とは、腸管に繰り返し炎症を起こす難病の総称のことで、一般的には潰瘍性大腸炎クローン病を指します。

クローン病での炎症は消化管のどの部分にも起こるのに対し、潰瘍性大腸炎は大腸にしか起こりません。これらの病気の原因はわかっておらず、ともに異常な免疫反応が消化管を攻撃してしまっていると考えられています。また、この二つの病気には共通点が多く、ときに判別が難しいことがあります。

炎症性腸疾患の症状は

潰瘍性大腸炎では大腸に慢性的な炎症が起こることで、下痢や血便などのさまざまな症状があらわれます。けいれん性、または持続的な腹痛を伴うこともあります。下痢がひどい場合には、1日に20回以上もトイレへ行くほどです。通常、病変は粘膜層から粘膜下層までの表層に限られ、筋層に達することはありません。
また、直腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸と連続的に炎症が起こります。重症の場合、発熱や体重減少、貧血などの全身の症状が起こり、合併症として皮膚症状、関節や目の症状があらわれることもあります。

発症年齢のピークは、男性で20~24歳、女性では25~29歳です。男女比に差はなく、喫煙をする人はしない人と比べて発病しにくいといわれています。

一方クローン病は、口腔内や小腸、大腸などの消化管のさまざまな場所に慢性的な炎症を引き起こし、全身倦怠感、発熱、腹痛、下痢などの症状があらわれます。しかし初期には無症状のことが多く、腹部症状のない発熱や、消化吸収の異常による体重減少から始まることもあります。

クローン病は潰瘍性大腸炎と違い、体のあらゆる場所に病変を作る特徴があり、難治性の痔ろうや肛門痛、口内炎にただれができたり、白目部分に炎症ができたりしますが、これらが一つだけあらわれることもあれば同時に複数あらわれる場合もあります。
合併症として関節痛や肝機能障害、胆石、発育障害などがあり、主に10~20歳代の若いときに発症し、性差の原因はわかっていませんが男性の方がかかりやすい傾向にあります。

炎症性腸疾患はどうやって治療する?

炎症性腸疾患には、根治的な治療法はありません。潰瘍性大腸炎は薬物療法や栄養療法などによる内科的治療で炎症をやわらげ、症状を軽減する治療を行っていきます。

また、多くの場合は内科的治療で症状が改善しますが、重症の場合や薬物治療の効果が望めない場合、その他にも以下のようなケースでは手術が行われます。

  • 副作用などで内科的治療がおこなえない
  • 大量の出血がある
  • 大腸に穴が空いている
  • がんまたはその疑いがある

クローン病の治療も潰瘍性大腸炎と同様、内科的治療が主ですが、腸閉塞や穿孔、膿瘍などの合併症がある場合には手術が必要となります。
なお、クローン病は食べ物をきっかけに炎症が引き起こされていると考えられているため、通常の食事量を減らして栄養剤を摂取し、栄養状態の改善をはかりながら消化管を休ませる方法もあります。

おわりに:根気よく治療を続けよう

炎症性腸疾患には根治的な治療はありませんが、適切な治療を行うことで、多くの患者に症状の改善や寛解(病状が治まっておだやかであること)が認められます。しかし、寛解を維持するためには内科的治療の継続が必要なので、根気よく治療を続けていきましょう。

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