慢性膵炎の初期症状として出てくるものは?進行するとどうなる?

2018/11/17

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

慢性膵炎とは、膵臓の炎症である膵炎が長期的に起こっている状態を指します。では、慢性膵炎になった場合、初期症状としてどんな症状が出るのでしょうか?また、慢性膵炎が進行した場合、どのような状態になるのでしょうか?

慢性膵炎ってどんな病気?

慢性膵炎とは、長期間に渡って膵臓で炎症が繰り返し起こり、膵臓の細胞が徐々に破壊されていく疾患です。繰り返し炎症を引き起こすことで、膵臓の正常な細胞はどんどん破壊され、細胞の線維化や石灰化が起こります。すると、だんだんと膵臓全体が硬くなって萎縮していきます。慢性膵炎は徐々に進行していきますが、逆に放置しておいて自然に治ることはありません

膵臓には、トリプシンやアミラーゼ、リパーゼなどの消化酵素を含んだ膵液を十二指腸に分泌して消化を助ける外分泌作用と、インスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌して血糖値を調節する内分泌作用の2つの作用があります。慢性膵炎を発症して膵臓の細胞が徐々に破壊されていくと、この2つの作用がだんだんと低下していくため、全身の消化や代謝に大きな影響を与えます。

慢性膵炎の初期症状はどんなもの?

慢性膵炎のごく初期の状態は代償期と呼ばれ、膵臓の石灰化や線維化は進んでいない状態です。この時期に疾患を発見し、治療を開始することができれば、治療によって十分に膵臓の機能が維持できると考えられています。この時期には、腹部から背中や腰にかけての痛み、腹部膨満感、全身倦怠感などの症状が現れます。

特に、腹部の上の方が痛む症状は約80%の患者さんに見られ、鎮痛剤の効きにくい難治性の痛みです。痛みの強さそのものは急性膵炎と比べて弱いものですが、激痛が生じた場合は急性膵炎と同様の治療が必要な場合があります。

痛みが発症するのは、飲酒や暴飲暴食、高脂質食などの後、数時間が経ってからです。また、腹痛のあるときには血中や尿中のアミラーゼ、リパーゼなどの膵酵素が上昇することが多く、検査で慢性膵炎の疑いを発見できます。たいていの場合、痛みはしばらくすると落ち着いてくるため、膵炎に気づかないまま飲酒や高脂質食などの生活習慣の改善が行われないまま腹痛を繰り返し、症状が進行してしまうことが多いのです。

しかし、この時期に正しく慢性膵炎の診断を受け、節酒や禁酒を守り、高脂質食はできるだけ避け、過食をしないなど生活習慣の改善をすることで、症状の進行を大幅に抑えられます

慢性膵炎の初期の治療法は?

慢性膵炎の初期の治療法では、鎮痛薬とタンパク分解酵素阻害薬の内服が第一選択とされます。鎮痛剤は非ステロイド性抗炎症薬や抗コリン薬で、腹部や腰・背中の痛みに対して処方されます。タンパク分解酵素阻害薬は痛みの原因となる炎症を抑える働きがあります。

生活習慣の改善も、治療法として重要な役割があります。特に、断酒は腹痛の消失に有効であり、予後の改善のためにも勧められます。また、高脂質食を制限することも大切ですが、過剰に脂質を制限しすぎることも低栄養となる可能性があるため、脂質の制限は医師や栄養士など専門家と相談しながら行いましょう。

これらの治療法が効果を発揮しない場合、内視鏡的な治療法や、体外からの衝撃派によって結石を破砕する治療法(ESWLと呼ばれます)、外科的な治療法が適応となる場合もあります。

症状が進行するとどうなる?

慢性膵炎は、初期である代償期を過ぎると、「移行期」という時期を経て最後には「非代償期」という状態にまで進行します。

代償期から症状が進み、膵臓組織の線維化が進んでくると、移行期と呼ばれる状態になります。この時期になると画像検査でも膵炎の診断ができるようになり、具体的には主膵管の広狭不整や膵石、膵内石灰化が見られるようになってきます。腹部レントゲンや健診、人間ドックなどでも行う超音波検査、腹部CTなどの検査でも慢性膵炎が疑われる状態です。

逆に、症状は小康を得てきます。特に腹痛は落ち着いてくることが多く、反復性の強い腹痛が起こる場合は膵管の狭窄や膵石によるものであると考えられます。強い腹痛が鎮痛剤でもコントロールできないような場合には、内視鏡的な治療や外科的な治療法を考慮する必要があります。

さらに症状が進むと、非代償期と呼ばれる最終的な状態に進行します。非代償期では、膵臓の外分泌機能がまず低下し、続いて内分泌機能が低下してきます。外分泌機能が低下することによる消化吸収障害や、内分泌機能の低下による糖尿病(膵性糖尿病)などを発症します

消化吸収障害では、膵液の分泌量が低下するため食物を未消化のまま排出することが多くなったり、そのために栄養素が吸収できず、栄養状態が低下したりします。特に、脂質とタンパク質の吸収量が低下するため、体重減少や難治性の下痢が続くことがあります。また、膵液のアルカリ成分が少なくなり、胃酸を中和できないため腸内が酸性に傾きます。これらの症状が出た場合、消化酵素薬や胃酸分泌抑制薬を内服し、消化吸収を助ける必要があります。

内分泌機能が低下すると、膵性糖尿病を発症します。血糖値を下げるホルモンであるインスリンと、低血糖時に血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの両方が分泌されにくくなるため、低血糖状態や高血糖状態が長引きやすくなります。これらの症状に対しては糖尿病治療薬を使いますが、一般的な2型糖尿病とは原因が異なるため、治療方法は個々の患者さんの状態に応じて決める必要があります。

慢性膵炎は、非代償期にまで症状が進行してしまうと、その後の生活にも大きな影響を及ぼします。また、慢性膵炎の患者さんは膵臓がんを合併するリスクが高く、その他のがんも含めて悪性腫瘍による死亡率が健康な人と比較して1.5倍にも跳ね上がります。症状が重篤でないからと放置せず、生活習慣の見直しを含めた適切な治療を行いましょう。

おわりに:食後に腹痛が出たら慢性膵炎かも?

慢性膵炎の初期症状のうち、自覚症状として最も認識しやすいのは上腹部の痛みです。お酒を飲んだ後や脂っこい食事をした後に腹痛が起こることが多い場合、腹痛が続いている間に病院に行き、診察を受けましょう。膵酵素が多く血中や尿中に流れ出していれば、慢性膵炎の可能性は高いと考えられます。

糖尿病などの重い症状を発症する非代償期に進行する前に、生活習慣を含めた適切な治療を行うことが大切です。

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