記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
散歩中や行楽先で動物に突然噛まれることがあります。また飼い犬や飼い猫に噛まれた場合でも、予期せぬ感染症をもっていることがあります。
破傷風や狂犬病などの深刻な感染症は国内ではほとんど見られなくなってきましたが、発症しないとは言い切れません。こうした感染症を予防するためにも、動物に噛まれたら必ず病院で診てもらうことをおすすめします。
病院行く前に対処できる方法をお知らせします。なお、喧嘩など、人間が噛んだ場合も救急の対処法は同じです。
・ぬるま湯(水道水でかまいません)で傷口を数分間流す。出血していなくてもする
・歯、毛、土などが傷口に入った場合、直ちに取り除く
・すでに出血している場合を除き、傷口を軽くつまんで血を流す
・出血量が多い場合は、きれいな傷口用パッドや無菌包帯を当てて加圧する
・傷口を乾燥させ、清潔な包帯などを巻く
・痛みが強い場合、鎮痛剤(イブプロフェンなど)を服用する。16歳未満の子どもは、アスピリンを服用してはいけない
・傷が非常に浅い場合を除いて、必ず医師に診てもらう
もしも指や耳などの体の一部が切断されてしまったら、水道水で洗い、切断された部分をきれいな消毒布などにくるみ、ビニール袋に保冷剤を入れたた中に入れた状態で、病院に持っていってください。こうすることで、手術で再生できる可能性があります。
皮膚が傷ついているなら、傷口をきれいにして、直ちに病院に行ってください。感染症の症状が出始めるまで待っていては手遅れになる場合があります。
傷口が浅い場合は一般の病院での治療が可能ですが、傷口がひどい場合は救急病院に行く必要があります。
・傷口をきれいにし、傷ついた組織を取り除く
・感染症を予防するため、抗生物質を処方する
・感染症にかかる心配がある場合、それを予防するための特別な治療をすすめる
・感染症のリスクが低い場合、傷口を縫う(感染症のリスクが高い場合、傷口をふさがない)
・感染症にかかっていないかの血液検査や、骨のダメージや、歯などが傷口に入り込んでいないかをX線検査をする
・関節が貫通したり、骨や神経が傷ついてしまうほど深刻な場合は専門家の検査を受ける
・人間の場合)肝炎やHIVに感染している人に噛まれた場合、出血してしまうとまれに感染症にかかってしまうことがあるため、予防の治療を行う
自宅に戻ったら、次項目で説明する感染症の症状が出ていないか、経過観察をしてください。
噛まれたあとに以下のような症状が現れたら、感染症にかかっている疑いがあります。直ちに医師に連絡してください。
・傷口が赤くなり、腫れる
・傷口が熱を持っていて、痛みが増す
・傷口から膿が出ている
・38℃以上の高熱がでる
・汗をかいたり、悪寒がする
・あごや首、脇、股間の腺が腫れる
・傷口の周りに赤い線ができる
自宅や友人宅または散歩中に、普段ならおとなしいペットや動物に噛まれるケースが多くあります。野生動物に噛まれるケースは比較的少ないです。なついているペットといえども動物です。一定の匂いに激しく反応したり、おびえたり興奮状態になった時は噛みやすい傾向にあります。
特異な例ですが、人に噛まれる場合は次のような場合です。
・喧嘩で口の周辺を傷つけた場合
・接触の多い激しいスポーツ
・激しいセックス、DV、強姦など
特に犬に噛まれるケースが多いのでこれについて説明します。
・小さい子どもと犬がいっしょにいるときは、目を離さないように注意する。種類やしつけの有無にかかわらず注意する
・慎重に犬と接する。急に近づいたり、大声を上げて走り回ったり、食事中や寝ているのを邪魔をしないようにする
・知らない犬をむやみになでたりしない。初めて接触する場合は、触る前に匂いを嗅がせる
・海外では、野生動物との接触を避けることが重要。狂犬病などの深刻な感染症を持っている可能性がある
先月まではかかっていなかったのに今月はかかっている、というのが感染症の恐ろしいところです。噛む状況にならないのが一番ですが、仮に噛まれて流血した場合は、応急処置をして医師に診てもらってください。