食道憩室っていくつか種類があるの?どうすれば治る?

2018/12/3

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食道憩室(しょくどうけいしつ)とは、食道の内側の壁・粘膜の一部が、憩室と呼ばれる袋状になって食道の筋肉の層を突き破り、外側に出てきてしまう病気です。
今回は、消化器官に現れる疾患でも知る人の少ない食道憩室の症状や種類、治療の必要性などについて、わかりやすく解説していきます。

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食道憩室になるとどんな症状が出てくるの?

食道憩室を発症しても、小さな憩室ができただけでは、自覚症状がないことがほとんどです。
しかし進行して憩室がだんだん大きくなってくると、憩室が食道を圧迫するようになり、以下のような症状が出てきます。

食道憩室の症状

  • 食べ物が飲み込みにくい、と感じるようになる嚥下(えんげ)障害
  • 食道の奥や胃からの、食べ物の逆流
  • 食道や憩室が損傷することによる痛み、出血、潰瘍、穿孔(穴があくこと)

食道憩室には種類があるの?

食道憩室は、喉とを25cmほどの管でつないで食べ物を運ぶ食道という器官で、内部から袋状・円錐状・台形状の組織が外側に出てきてしまう病気です。

食道の壁は4mmほどの厚さで、内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・外膜の4層からできていますが、食道憩室では粘膜や粘膜下層が筋層を突き破ってしまいます。
この病気は、憩室ができる経緯によって、大きく以下2つに分類できます。

圧出性憩室(あっしゅつせいけいしつ)
何らかの原因で内腔の圧力が高まり、食道の内側から押し出されるかたちで憩室ができて発症するパターン。筋層のない部分に発症しやすい。
索引性憩室(さくいんせいけいしつ)
食道周辺の臓器・組織に病変や炎症が起きたことが原因で、食道の壁がまわりの組織に癒着してしまい、内側の組織が引っ張られて憩室ができ発症するパターン。筋層のある部分に発症しやすい。

また、25cmある食道のなかには、特に憩室ができやすい箇所として喉から首のあたりの咽頭、喉から胸にかけての中部食道、胸から上腹部当たりの横隔膜上があります。

このため食道憩室は、憩室ができた位置によって「咽頭憩室(ツェンカー憩室)」「中部食道憩室」「横隔膜上憩室」と、別名で呼ばれることもあります。

食道憩室ができるのはどうして?

以下からは、咽頭憩室・中部食道憩室・横隔膜上憩室それぞれが発症する原因について、解説していきます。

咽頭食道憩室の原因
もともと脆弱性のある咽頭部分の食道に、何らかの原因で内側から圧力がかかり、憩室ができて喉から食道に圧出されてしまうことで引き起こされる。
中部食道憩室の原因
肺など、胸にある周辺の臓器・組織で起こった炎症や病変が食道の外壁にまで及び、引っ張られることで憩室ができ、引き起こされる。
横隔膜上憩室の原因
食道から胃へ食べ物を送る動作に異常が起きたり、胃の一部が食道へ飛び出てきたことが原因で、食道下部の脆弱部分に内圧が加わることで引き起こされる。

上記のうち、咽頭食道憩室と横隔膜上憩室は「圧出性憩室」、中部食道憩室は「索引性憩室」が原因で発症するのが特徴的です。

食道憩室はどうすれば治る?

自覚症状がないなら、食道憩室を発症していても、特に治療をする必要はありません。ただし、以下のいずれかに当てはまる場合は、外科手術で憩室を取り除く必要が出てきます。

食道憩室で治療が必要なケース
  • 食道が大きくなっていて、嚥下障害や痛み、出血、潰瘍などの重い症状がある場合
  • 食道の動きに異常があるために憩室ができ、原因疾患に手術による治療が必要な場合
  • 索引性憩室が起きていて、周辺の臓器・組織の治療に手術が必要な場合

また、手術による憩室切除の必要はなくても、食道に痙攣などの異常がみられるときは、食道括約筋の緊張を緩和する治療が行われるケースもあります。

治療の必要性や、その方法の判断は医師によっても変わってきますので、気になることがあるなら主治医に相談しましょう。

おわりに:食道憩室には、憩室の成り立ちや発症部位によっていくつか種類がある

食道憩室は、内圧によって憩室ができる圧出性憩室と、外部から引っ張られることで憩室ができる索引性憩室があります。さらに、憩室が発生する部位によって咽頭食道憩室・中部食道憩室・横隔膜上憩室の3種類に分けることができます。いずれも、発症しても自覚症状がなければ治療の必要はありませんが、症状が重い場合は手術が必要になることもあります。食道の痛みや、食事の飲み込みにくさなどを感じているなら、早めに医師に相談しましょう。

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