食道に潰瘍ができるとどんな症状が出てくる?治療・予防法は?

2018/12/1

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食べたものを口から喉、喉から胃へと運ぶ役割を担う消化器官である食道。
胃や腸と同様、炎症を起こすこともありますが、食道に炎症や潰瘍ができるとどんな症状が出てくるのでしょうか。
今回は食道に炎症や潰瘍ができた場合の症状と、治療や予防の方法について解説します。

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食道に炎症や潰瘍がおきる状態って?

食道炎(しょくどうえん)や食道潰瘍(しょくどうかいよう)は、食道の粘膜や組織が赤くただれたり、深い傷(潰瘍)ができたりする病気です。

発症原因は人によって異なりますが、以下いずれかの原因で発症すると考えられています。

  • 胃液が逆流することによって食道が傷つく、逆流性食道炎
  • 経口摂取した薬剤が食道内で留まることで起こる、薬剤性食道炎
  • 強酸や強アルカリの薬剤を誤飲したことによる、腐食性食道炎
  • カビの一種が感染したことによる、カンジダ性食道炎
  • ヘルペスやサイトメガロウイルス感染による、ウイルス性食道炎
  • 頸部や胸部への放射線治療への副作用から起こる、放射線性食道炎

食道に炎症や潰瘍ができると、どんな症状が出てくるの?

食道炎や食道潰瘍ができると、病状の進行によって以下のような症状が出ます。

食道炎や食道潰瘍による症状

初期段階
胸焼けや胃もたれなど、胃部や胸のあたりに不快感や膨満感を覚えるようになる。
中程度
食べ物を飲み込むときに、喉や胸に沁みるような痛みを感じるようになる。
重度
痛みが強まり、喉や胸に強く焼けるような感覚を伴うようになり、吐血する場合も。

なお、人によっては食道炎や食道潰瘍を発症していても、かなり進行するまで何も症状を自覚できないまま、検査で発症がわかるケースもあります。

炎症・潰瘍はどうすれば治るの?

ここからは、一般的な食道炎・食道潰瘍の検査と診断の方法と、発症が確認された場合の治療法についてご紹介していきます。

食道の炎症・潰瘍の検査と診断の方法

口または鼻から内視鏡を挿入し、直接肉眼的に食道の状態を確認して、炎症によるただれや傷の有無を確認するのが一般的です。

食道に炎症・潰瘍が見つかったときの治療法

治療方法としては、大きく内科治療と外科治療の2パターンに分けることができます。

食道炎・食道潰瘍の内科治療
プロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬など、胃酸分泌を抑える内服薬を処方して、食道の炎症・潰瘍を緩和していく投薬治療が行われます。
食道炎・食道潰瘍の外科治療
主に腹腔鏡下にて、開腹せずに食道の炎症や潰瘍、または潰瘍が進行して穿孔(穴)になってしまっている部分や、狭くなっているところを手術で治療します。

なお、通常はまず患者さんの心身への負担が少ない内科的治療から始めて、様子を見るのが一般的です。
内科的な投薬治療で改善せず、悪化して食道から出血が見られるようになったケースでは、外科手術による治療が選択されます。

食道炎・食道潰瘍を予防するには?

ここからは、考えられる食道炎・食道潰瘍の原因ごとに、食道に炎症や潰瘍ができるのを予防するために有効な対策を、それぞれご紹介していきます。

薬剤性食道炎の予防策

薬を内服する際に、薬がとどまって食道を傷つけてしまわないよう十分な水分量で飲み込んだり、内服直後の就寝を避けるようにすると効果的です。
なお、何度も薬剤性食道炎の発症を繰り返すようなら、原因となる薬の服用を中止すべき可能性も出てきますので、主治医に相談してください。

カビ・ウイルス感染による食道炎の予防策

カンジダ菌やヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス感染による食道炎は、疲れや免疫抑制剤などで、免疫力が低下したときに発症しやすいとされます。
免疫力が低下しないよう、日ごろから規則正しい生活習慣とバランスのとれた食事内容を心がけ、免疫抑制剤使用時は医師の指示のもと十分に警戒してください。

逆流性食道炎の予防策

一旦発症すると、慢性的に繰り返しやすくなる逆流性食道炎は、日ごろから以下のポイントに留意した生活習慣にあらためることで、再発防止につながります。

  • 常に腹八分目を心がけ、暴飲暴食しないようにする
  • 胃酸分泌を促す脂質や糖質の多い食事、香辛料・アルコールなど刺激物の摂取を控える
  • ベルトや帯、ガードルやブラジャーなど、胃を締め付ける服装や下着は着用しない
  • 胃酸の逆流を起こしやすくなる前傾の姿勢は、可能な限り避けるようにする
  • 喫煙量を減らし、少しずつ禁煙できるようにする

上記の予防策をとっても、食道に炎症・潰瘍ができてしまうときは、内科や消化器科の医師に診てもらったうえで、適切な治療を受けましょう。

おわりに:飲み込むときの喉や胸の痛みや出血は、食道炎や食道潰瘍のサインかも!

食道の炎症や潰瘍は、薬剤や化学薬品の影響や菌・ウイルスへの感染、胃からの消化液の逆流などによって起こる病気です。食べ物を飲み込むときに喉や胸に痛みを感じたり、吐血するようなら、食道炎や食道潰瘍を起こしている可能性があります。病院に行けば、投薬や手術による治療を受けられるので、食道炎・食道潰瘍を疑うような症状があるなら、再発予防の方法も含めて、すぐに内科・消化器科の医師に相談しましょう。

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