記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高齢の家族がいる場合、冬場特に怖いのが「ヒートショック」です。今回は家族がヒートショックに陥った場合の適切な対処や、命を守るために知っておきたい有効な予防法などをご紹介していきます。
「ヒートショック」とは、急激な温度差による身体的なショック症状のことです。寒くなる12月から2月にかけてもっとも起こりやすく、暖かい部屋から寒い浴室や脱衣室、トイレ、屋外などへ移動するときなどには注意が必要です。温度に10℃以上の変化があると、血圧や脈拍が急激に変動して心臓や血管に負担がかかり、めまいや失神、動悸といった症状が出たり、心筋梗塞、脳梗塞、脳卒中などを引き起こすこともあります。
特にリスクが高いのが入浴時で、入浴中の溺死や転倒による死亡例は少なくありません。死亡者の約82%が高齢者で、高齢者の冬季の入浴には細心の注意が必要とされていますが、若くても糖尿病や高血圧、高コレストロール血症、肥満、不整脈、動脈硬化のある人や、晩酌後に入浴する習慣のある人は注意が必要です。
めまいや立ちくらみといった軽度の症状であれば、動かずに安静にして治まるのを待ちます。
重度の場合は大変危険なのですぐに救急車を呼びましょう。
締めつけられるような胸の痛みや呼吸困難、嘔吐、意識障害があらわれたら、心筋梗塞のおそれがあります。応急処置としては、吐いた物を取り除き横向きに寝かせて気道を確保し、入浴中の場合は沈まないよう湯船からから出します。
また、頭痛や激しい嘔吐、めまい、立ったり座ったりがうまくできない、眠りこむ、受け答えがちぐはぐで意識障害を起こしているなら、脳卒中のおそれがあります。頭を動かさないようにして吐いた物が詰まらないように横向きに寝かせます。
心停止や呼吸がないような場合は、救急車を待つ間に心肺蘇生などの救急処置が必要となりますので、普段から知っておくようにしましょう。
ヒートショックの原因は急激な温度差なので、正しい知識と対策で防ぐことができます。
入浴時では、脱衣場を暖房器具で温めておく、入浴の5分前から浴槽のフタを開けておき、湯気で浴室の温度を上げ同時に湯の温度を若干下げておく、お湯をシャワーで張るなどでリスクを下げることができます。
高齢者には一番風呂はすすめないようにし、温度差を10℃以上にしないために湯の温度は41℃以下に設定しましょう。
まだ疲れの出ていない夕食前に入浴することも効果的です。
また、起床時には、手の届くところにすぐに羽織れる物を用意しておき、布団の中で伸びや指の曲げ伸ばしなどで体を温めてから起きる、ゴミ出しなどでちょっと外に出るときには薄着のまま出ずに特に首周りを暖かくする、トイレには小型の暖房器具を置くか暖房式便座、パイル地のカバーやスリッパを使用する、衣類の着替えは部屋を暖めてから行うなど工夫しましょう。
ヒートショックは、急激な温度差による命に関わる身体的なショック症状です。軽症なら安静にして回復を待ちますが、嘔吐や意識障害を起こすなど重症の場合はすぐに救急車を呼びましょう。原因は環境にあり、日頃から10℃以上の温度差をつくらないようにするなど正しい知識と対策で防ぐことができます。
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