高血圧と動脈硬化の予防法-食事・運動で血圧管理する方法

2018/10/2 記事改定日: 2020/8/17
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「血圧が高いと動脈硬化になりやすい」という話を聞きますよね。この記事では、動脈硬化が進行するメカニズムや、高血圧を改善する方法について、食事、運動、飲酒に関する予防策をわかりやすく解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

高血圧を放置すると動脈硬化が進行するって本当?

高血圧による動脈硬化進行の原因は、主に以下の二つがあるとされています。

動脈の壁への高い圧力

通常の動脈は、軟らかくしなやかな状態です。しかし高血圧による高い圧力が血管にかかり続けると、血管壁が伸びて動脈瘤ができたり、破裂する恐れがあります。
血管はその圧力に抵抗するために血管壁を厚く硬く変化させ、その結果として動脈硬化が起こります。

プラーク

「血管内皮細胞」は、血管の動脈硬化の進行を抑制したり、血管の収縮や拡張にも関係します。血管内皮細胞に高い圧力がかかり障害されると、内皮細胞の隙間から血管壁に血液中の酸化コレステロールなどの物質が取り込まれることにより、プラークという塊を形成するようになります。

高血圧が招く疾患

血管壁にプラークが作られると、血管の内腔が狭まることにより血流が悪くなったり、プラークが破裂した場合は血管内に血栓ができて血管が詰まることで、不安定狭心症、急性心筋梗塞、心臓突然死と呼ばれる急性冠症候群の原因となる恐れがあります。

血管内皮細胞が分泌する「NO(一酸化窒素)」とは?

健康な状態の血管内皮細胞は、「NO(一酸化窒素)」という血管を拡張させて血流を良くする物質を分泌する働きがありますが、高血圧により障害された状態の血管内皮はNOの分泌の低下に伴い、血管が広がりにくくなったり、血圧上昇が引き起こされるようになります。

血圧の正常域や目標値の目安は?

以下の血圧値は、診察室で測定した場合の基準値になっているため、家庭血圧の場合は以下の血圧値よりも5mmHg低い値を目安にした方が良いでしょう。

正常域血圧

分類 収縮期血圧 拡張期血圧
至適血圧 120mmHg未満かつ→ 80mmHg未満
正常血圧 120~129mmHgかつまたは→ 80~84mmHg
正常高値血圧 130~139mmHgかつまたは→ 85~89mmHg

高血圧

分類 収縮期血圧 拡張期血圧
Ⅰ度高血圧 140~159mmHgかつまたは→ 90~99mmHg
Ⅱ度高血圧 160~179mmHgかつまたは→ 100~109mmHg
Ⅲ度高血圧 180mmHg以上かつまたは→ 110mmHg以上
孤立性 140mmHg以上かつ→ 90mmHg未満

目標値の目安

健康な生活を送るためには、以下の血圧値を保つことを目指しましょう。

上(収縮期血圧)
135mmHg以下
下(拡張期血圧)
85mmHg未満

動脈硬化を予防法は?高血圧改善のコツ

高血圧の改善には以下のことを心がけましょう。

減塩

日本高血圧学会のガイドラインの1日当たりの塩分摂取量目安では「6g未満」とされていますが、同時に「より少なくすることが望ましい」ともしています。

これは、欧米のガイドラインが理想としている厳格な摂取量目安が「3.8g」となっていることに関係しています。そのため高血圧だけでなく、肥満や高血糖などの症状を伴う人は、塩分摂取量に十分注意する必要があります。

減塩のコツ
  • 揚げ物や焼肉などを食べる際は、レモン、ユズ、こしょう、ごまなどを活用して食べるようにしましょう。醤油やソースなどの濃い味付けは避けます
  • 醤油や塩を減らして、昆布やシイタケなどの天然のだしを使うようにしましょう
  • ラーメンやそば、うどんの汁は全部飲まずに、半分くらい残すようにしましょう
  • お寿司につける醤油の量は少しにするようにしましょう
  • 薄い味付けに徐々に慣れていくようにしましょう

食事

塩分を体にため込まずに排出することも大切です。塩分排出の働きを持つ栄養素を積極的に摂取しましょう。

カリウム・マグネシウムを摂る

カリウムやマグネシウムには、塩分排出作用があります。ただし、医師から制限されている場合は指示を守りましょう。

カリウム
野菜、果物、海藻類、豆腐などに豊富に含まれているカリウムには、腎臓から余分な塩分(ナトリウム)を排出する作用があります。特に、野菜類や海藻類はカロリーも低いため、メタボリックシンドロームの人にもおすすめです。
マグネシウム
海藻、ナッツ類、豆類などに豊富に含まれているマグネシウムは、カリウムと同様に腎臓から余分な塩分を排出する働きを助ける作用があります。
野菜サラダに豆やナッツを加えて食べるのもいいでしょう。

ただし、血糖値が高い場合は果糖の多い果物の摂取は控えるようにしましょう。
また、腎臓病の場合はカリウムの摂取量に注意する必要があるため、事前に医師に相談しましょう。

カルシウムを摂る

高血圧気味の人はカルシウム吸収や調節を行う機能が低下していることが多いため、積極的にカルシウムを摂取することが推奨されます。

牛乳や小魚類などのカルシウムの吸収率の高いものを食べましょう。
また、ナッツ類や豆類などに含まれているマグネシウムは、カルシウムの吸収を助ける働きがあるため、一緒に摂取するといいでしょう。

脂質の摂り方を工夫する

血圧が高めの人は、上述した通り動脈硬化が生じやすく、それがさらに高血圧を悪化させることにつながります。動脈硬化は脂質の摂りすぎなどによっても悪化するため、高血圧を予防するためにも脂質の摂りすぎには注意しなければなりません。

できるだけ脂質をカットした食事を摂るには、サラダなどのドレッシングをノンオイルの物にする、魚や肉は揚げ物ではなくグリルなどで焼いて油分を落とす、麺類のスープをすべて飲み干さない、などの工夫が大切です。また、過度な間食も控えるようにしましょう。

運動

適度な運動には高血圧を改善する効果があるとされていますが、運動中に血圧が少し上昇したり、過剰に行うことにより症状が悪化する恐れがあるため、無理をしない程度に行いましょう。また高血圧の治療中の人は、事前に医師に相談するようにしましょう。

運動による高血圧予防効果

  • 交感神経の働きの低下に伴い血管が拡張し、血圧が下がる
  • インスリンの働きが良くなることによって相対的に分泌量が減少し、インスリンの血圧上昇機能が弱まる
  • 利尿作用が促進されることにより体液量が低下し、血圧が下がる

運動の種類と条件

運動の種類
ウォーキング、アクアサイズ(水中運動)、サイクリングなどの有酸素運動が適しています
運動時間
1日30分程度、もしくは、1回10分程度を数回行うことが良いとされています
運動頻度
週に3~4回(理想は毎日)行うことが理想的
運動の強さ
軽く汗ばむ程度、もしくは、軽く息がはずむ程度

減酒

アルコールの過剰摂取は血圧低下の原因となり、飲み過ぎの状態を続けると心疾患のリスクが急速に高まります。

アルコール摂取量の目安(男性の場合)

  • 日本酒1合
  • ビール中ビン1本
  • 焼酎半合弱

※女性の場合は、以上の摂取量の半分~3分の2程度とされています。

ただし、適量といっても個人差があるため、飲酒中に話がくどくなる、眠くなる、足元がふらつく、などの症状が見られ始めたら飲み過ぎと判断しましょう。

禁煙

喫煙の習慣が高血圧の要因になるかについては、未だはっきりとはわかっていません。
しかし、タバコを吸うと一時的に血圧上昇が見られることや、動脈硬化が促進されることによって、心筋梗塞、脳卒中、メタボリックシンドロームの原因となることがわかっています。高血圧気味の人は、タバコの本数を控えたり、禁煙をするようにしましょう。

季節による血圧の変化や入浴時の血圧管理に注意

冬の血圧変動と高血圧リスク

冬は寒さの影響により血圧が大きく変動しやすいため、血圧の管理が難しく高血圧リスクも高くなります。
特に、起床時や入浴時には注意が必要なため、以下のような対策を行いましょう。

起床時
起床時に部屋が寒い状態だと、急激に血圧が上昇するため、起きる少し前からエアコンのタイマー設定などを使用して部屋を暖めるようにしましょう
入浴時
脱衣所や浴室の寒さによる血圧上昇や、入浴時の血圧低下などを防ぐため、脱衣所は小型の暖房器具で温めたり、浴室は入る前にシャワーを1~2分間流して暖めるなどの工夫を行いましょう

夏の水分不足と高血圧リスク

夏は、水分不足による脳梗塞が最も起こりやすい時期とされています。特に高血圧気味で、動脈硬化を起こしている場合は、水分不足の状態になると血管が詰まりやすくなるため、意識的に水分補給を行う必要があります。
また、家庭血圧の測定などで血圧の変動にも気を配りましょう。

おわりに:食生活や生活習慣の改善で高血圧の予防を

高血圧によって高い圧力が血管にかかり続けると、血管はその圧力に抵抗するために血管壁を厚く硬く変化させるため、動脈変化が起こります。高血圧を改善して動脈硬化を防ぐためには、血圧を上げる原因となる食生活や生活習慣を改善することが必要です。健康な生活を送るために(上収縮期血圧)135mmHg/(拡張期血圧)85mmHg未満の血圧を保つように努めましょう。

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