低体温症になると体に出てくる症状にはどんなものがある?

2018/12/8

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

山や海で遭難したとき、発症する恐れのある「低体温症」。死に至ることもあると知られていますが、具体的にどのような症状が出て、段階が進んでいくのでしょうか。緊急の対処法と併せて解説します。

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低体温症とは

低体温症は、直腸温など、体の中心の体温が35℃以下になった状態のことです。人間の体は、手や足などの末端部分より、臓器などがある体の中心部分の方が体温が高く安定しています。しかし、この部分すら35℃以下になるという場合は大変重篤な状態であり、死亡率は20~90%にもおよびます。

低体温症に陥るかもしれない状況としては、冬山や海などの厳しい自然環境で遭難した場合などが考えられます。しかし、このような特殊な環境下でなくても、体の疾患が原因で低体温症が起こることもあるのです。たとえば、なんらかのアルコールや薬物の摂取によって意識障害に陥った場合、低栄養の場合、下垂体や甲状腺の機能が低下した場合などが挙げられます。

低体温症になると、どんな症状が出てくるの?

低体温症の症状は、体温が低下し始めた後の段階によって変わってきます。初期は、歯がカチカチとなったり、動作がぎこちなくなったり、体が激しく震えたりする症状が表れるでしょう。この体の震えは、シバリングと呼ばれています。

体温がさらに下がって32℃ぐらいになると、思考がぼんやりとし、動作が鈍くなってきます。脳の活動が低下するとともに筋肉は硬直し、震えが逆に止まってしまうのも特徴です。震えが止まると、ゆるやかに意識を失い、昏睡状態へと陥ります。心拍と呼吸は遅くなっていき、やがては完全停止、死へと至るのです。

これらの変化はきわめてゆっくりであり、本人も周りの人も、危険な状態だと気づかないまま症状は進行していってしまいます。死亡例としては、体温が28℃以下になったときの例が多いですが、体温が31℃を下回ったあたりから死亡の可能性は出てきます。

低体温症になった場合の対処法は?

もしも近くに低体温症になってしまった人がいる場合、とにかく体を温めてあげることが大切です。もしも屋外の遭難などで濡れた衣服を着ているときは、乾いた温かい服に着替えさせます。毛布などでくるみ、とにかく暖をとりましょう。意識があるようであれば、温かい飲み物などを飲ませ、身体の中心部に熱を与えていきます。

低体温症の人は呼吸も心拍も弱まっているため、一般の人では生死の判断ができません。突然揺さぶったり、身体を動かしたりすると不整脈が起こる可能性があるので、静かに救急車の到着を待ってください。

病院に運ばれた後は、温めた酸素や血液などを身体に流す処置などが行われます。搬送時に死亡しているように見えても、病院での処置で回復した例もあるようです。

おわりに:低体温症になると、ゆるやかに心肺や呼吸が停止していく

低体温症は、体の中心の体温が35℃以下になった状態のことです。症状は、体温が低下し始めた後の段階によって変わっていきます。初期は、歯がカチカチとなったり、動作がぎこちなくなったり、体が激しく震えたりする症状が表れますが、体温がさらに下がっていくと震えは止まりゆるやかに意識を失い、昏睡状態へと陥ります。低体温症の人がいたら、とにかく体を温め、無理に動かさないようにしましょう。

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