記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/4/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
最近、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが乳癌と卵巣癌を防ぐために乳房と卵巣を摘出したニュースは衝撃的でした。これは、遺伝子検査で癌を起こす可能性のあるBRCA2遺伝子に欠陥があることがわかったことによるものでした。遺伝子検査で、癌がわかれば事前に心の準備ができます。癌を予測できる遺伝子についてまとめてみました。
女性の乳癌、卵巣癌および男性の前立腺癌、膵臓癌は、BRCA2欠陥遺伝子をもつ人に発症の可能性が高いことがわかっています。
遺伝子検査で陽性(BRCA2欠陥遺伝子をもっている)ことがわかった場合、癌のリスクを減らすための摘出手術やさまざまな方法でリスクに対処することができます。
女性では、乳癌のリスクを高める可能性のあるほかの要因に注意し、以下のようなことに注意が必要かもしれません。
・35歳以上では経口避妊薬を服用するのを避ける
・50歳以上ではホルモン補充療法(HRT)を避ける
・アルコールを控える
・肥満に気をつける
乳癌を発症する可能性の高い女性に対しては、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMs;タモキシフェン,ラロキシフェン)やアロマターゼ阻害薬(エキサメスタン,アナストロゾール)の予防投与による治療があります。これらの薬を5年間服用すると、乳癌を発症する可能性を20年まで引き伸ばすことができるとされていますが、はっきりとはわかっていません。
遺伝子検査の結果は、医師からは家族へ伝えません。
家族に話すかどうかは、あなた次第です。
すべての人が遺伝子検査を受けたいと思うわけではありません。
姉妹や娘などの関係の近い女性は、遺伝子検査を受けなくてもスクリーニングによって癌かどうかを検査することができます。
乳癌を予防するには、定期的に乳房検査をすることです。BRCA1およびBRCA2欠陥遺伝子をもっていることがわかったら、乳房に変化が起きないか注意することが大切です。
また、男性でBRCA2欠陥遺伝子をもっているときは、女性よりは低確率ですが乳癌を発症することもあります。
乳癌の早期発見のためには、年に1回、マンモグラフィーや核磁気共鳴画像(MRI)検査を受けることです。乳癌は、早期発見できれば治療も簡単になることがおおいです。早期発見の段階で治療を始めた場合、乳癌はほかの癌と比べて、完治する可能性が非常に高い病気です。
残念なことに、卵巣癌や前立腺癌を発見するための信頼度の高いスクリーニングは今のところありません。BRCA2欠陥遺伝子をもつ男性は、1年に1回PSA(前立腺特異抗原)検査を受けましょう。
生活習慣を見直すことは、癌の発症の可能性を減らすことがあります。よく運動し、暴飲暴食を避けてバランスの取れた食生活が重要です。
癌のリスクを減らすために、乳房や卵巣など癌になる可能性のある臓器の摘出を選択する人もいます。BRCA2欠陥遺伝子をもつ人の中には、乳腺切除術を考える人もいます。乳腺切除を受けると、乳癌の発症を90%抑えることができるとされています。ただし、乳腺切除からの回復は、身体的にも精神的にも大変な負担であることを覚えておいてください。
卵巣癌のリスクを減らすためには、更年期になる前に卵巣摘出手術を受けると卵巣癌を発症するリスクが大幅に減るほか、乳癌を発症する可能性も50%に減らすことができます。しかし、これによって早期閉経してしまうため、卵子を保存していない限り妊娠することはできなくなります。
BRCA2欠陥遺伝子をもつ女性が卵巣癌を発症するリスクは40歳ごろから高くなります。そのため、40歳未満のBRCA2欠陥遺伝子をもつ女性は、40歳になるまで待ってから手術を受けることが多いです。
癌になる危険のあるBRCA欠陥遺伝子が子どもに遺伝する可能性は十分にあります。
予測遺伝子検査が陽性でも子どもが欲しいときには、以下のような選択肢もありますので医師に相談してください。
・欠陥遺伝子が子どもに遺伝する可能性があったとしても、治療介入なしに子どもを作る
・養子を迎える
・欠陥遺伝子が遺伝しないよう、卵子ドナーや精子ドナーを探す
・出生前検診を行う
妊娠中に、胎児がBRCA2欠陥遺伝子をもっていないか検査できます。検査結果によって妊娠を継続するかどうかを決めることができます。
・着床前遺伝子診断を受ける
BRCA2欠陥遺伝子を引き継いでいない受精卵を選ぶことができますが、これによって確実に妊娠できるというわけではありません。
かつて不治の病とされていた癌は、医学の進歩とともに予測することができるようになりました。
遺伝子検査でBRCA2欠陥遺伝子をもっていることがわかっても、将来、癌になる確率は50%です。摘出手術をするか、しないかは自分自身で決めなくてはなりません。治療のメリット、デメリットをよく医師に確かめて納得いく答えを出すことが重要です。