記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/4/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腎臓病とは、腎臓の糸球体(しきゅうたい)や尿細管(にょうさいかん)がおかされることで、腎臓の働きが悪くなる病気です。
腎臓病はめずらしい病気ではありません。腎不全によって透析、あるいは移植が必要となるのは、腎臓病患者の20人に1人ということがわかっていますが、近年の医療技術の進歩は、早期に治療を開始すれば腎機能の低下を防いだり遅らせたりすることが可能となっています。
腎臓病は、日常生活に深刻な問題を及ぼすといったことはほとんどないものの、それは将来の健康に対する警告といえるでしょう。なぜなら、腎臓病は、高い心臓病と心臓発作の危険性があるからです。
腎臓病と診断されたら、生活習慣を見直すことで心臓病の危険因子を減らすことができるでしょう。
以下のようなことを参考に、日常生活を改善しましょう。
少なくとも毎週最低150分はからだを動かしましょう。さらにボディマス指数(BMI)を使って自分の適正体重を調べましょう。
重度の腎臓病では、必要に応じて管理栄養士による特別なメニューが必要です。
食事の塩分を減らし、食塩代用物などの使用も避けましょう。
糖尿病や高血圧があるときは、血圧や血糖値を正常な状態に保てるように医師の指示に従ってください。
腎臓病では、多量の水を飲むことで改善されるという証拠はありませんが、飲みたいときには我慢せず普通に飲むようにしましょう。
腎臓病はインフルエンザにかかるリスクが高く、気管支炎や肺炎などといったより重度の合併症を併発することがあります。インフルエンザのワクチン接種は、毎年接種する必要があります。さらに腎不全の場合では、透析あるいは腎臓移植を開始する前にB型肝炎ワクチンの予防接種を受けている必要があります。
腎臓病では以下のようなワクチンを接種して予防することが大切です。
・インフルエンザワクチン
・肺炎球菌ワクチン
また、腎臓病の人は、上記で予防できるワクチン以外にもあらゆる感染症にかかりやすいため注意が必要です。
腎臓病がある場合は、薬局で売られている市販薬にも注意が必要です。
腎臓病は、高血圧や糖尿病によって悪化します。通常処方されるのはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)と呼ばれる血圧降下剤で、腎臓を保護する効果があります。ときとして薬の副作用として咳(せき)を起こすことがありますが、その場合はアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)が用いられます。ACEとARBは、いずれも腎臓を保護しますが、下痢や嘔吐(おうと)などの症状があるときは、医師または薬剤師に相談してください。
また、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患を起こすことがあるため、スタチン系薬剤で血液中のコレステロールのレベルを低下させ、心血管疾患のリスクを低下させることがあります。ほかの病気のために処方されている薬は、下痢、嘔吐、発熱、さらなる脱水や腎臓損傷のリスクを避けるために一時的に服用を中止することがあります。
飲んでいる薬はすべて医師にみせて、医師の指示に従ってください。
ときに、腎臓病の悪化を防げないことがあります。すでに重度の腎臓病または末期の腎臓病の場合は、治療計画を立ててくれる病院を拠点とした医師、看護師、薬剤師、栄養士、社会福祉士などの腎臓専門チームによる治療を受ける必要があります。
治療計画には特別な食事と、貧血予防のための鉄摂取や、健康な骨や筋肉をつくるためのビタミンDサプリメントなどといった補助薬品も含まれます。また、透析や腎臓移植の可能性がある場合にも、その準備を手伝ってくれるでしょう。
腎臓病患者のための患者の会、家族の会は全国にあります。
日本最大の患者会である「全国腎臓病協議会(全腎会)」には約9万人の会員をもっています。
「沈黙の臓器」と呼ばれる腎臓は自覚症状がないため、症状に気づいたときには腎機能が悪化していたり、最悪の場合は腎不全で透析を受けなければならなくなるこわい病気です。しかし腎機能が低下していても、だれもが腎不全になるとは限りません。日常生活を改善することで悪化を防ぎ、予防することができる病気です。腎臓は、縁の下の力持ち…まさに健康には欠かせない臓器ということですね。