直腸炎を発症する原因は?痔の症状との違いは?

2018/12/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

大腸の一部・直腸が炎症を起こす「直腸炎」。この直腸炎の代表的な症状が下血ですが、痔による下血との見分け方はあるのでしょうか。発症原因、治療法と併せて解説していきます。

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直腸炎ってどんな病気?

直腸炎とは炎症性腸疾患の一つであり、さまざまな原因によって直腸に炎症を来す病気のことをいいます。痛みを伴わない出血や、直腸からの粘液の排泄が典型的な症状ですが、原因が淋菌感染症、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスの場合は、肛門と直腸に激しい痛みが生じることもあります。他にも下痢、粘血便、時に体重の減少、食欲不振、貧血などの全身症状を伴うことがあります。

直腸炎と痔との違いは?

直腸炎はその症状から痔と勘違いされることもあります。直腸炎と痔を見分けるポイントは出血の違いにあります

痔の場合は排便に伴い、紙に血が付く程度という軽いものから、便器内が血でいっぱいになるほどの大量出血までさまざまな量の出血が見られます。なお、いぼ痔の場合は中で溜った血液が固まりになってドバッと出てくることもあります。

一方、直腸炎の場合は排便時だけでなく排尿時にも出血が見られることが特徴です。また、症状がひどくなると下痢や腹痛が夜間に認められたり、発熱や食欲不振がみられたりすることも特徴です。

直腸炎になるのはどうして?

直腸炎となる原因はさまざまですが、大別すると感染症、突発性腸疾患に分類できます。まず感染症では、さらに性感染症と一般的腸管感染症に分類できます。

性感染症では梅毒、赤痢アメーバ、HIV、サイトメガロウイルス、淋菌、単純ヘルペス、クラミジアなどがあり、男性同性愛者など肛門性交を行う場合に発症します。赤痢アメーバによるもの以外では多くの場合痛みを伴うことが特徴です。
一般的腸管感染症としては、潰瘍性大腸炎、クローン病が当てはまります。

さらに免疫機能が低下している人も直腸炎を発症するリスクが高く、特に単純ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルスによる感染症によって直腸炎を発症する可能性が高まります。

また性行為をしていなくてもサルモネラ菌など一部の細菌によって直腸炎を起こしたり、抗菌薬の使用で腸内の常在菌が減少したことによって、クロストリジウム・ディフィシル、 クロストリジウム・ディフィシル 腸炎など他の細菌が繁殖し発症したりすることもあります。

他にも、前立腺がんや直腸がんの治療用の直腸周囲への放射線療法によって、直腸炎が起こることもあります。

どうやって直腸炎を治療するの?

直腸炎の治療法はその原因によっても大きく異なりますが、基本的には手術ではなく保存的治療によって治療を行います。なお、潰瘍性大腸炎が原因であっても約80%は保存的治療となります。

原因菌が特定されている場合には、その菌に対して効果のある抗菌薬を使用します。また、腸内の常在菌を減少させる抗菌薬の使用が直腸炎の原因となっているのであれば、メトロニダゾールやバンコマイシンといった薬剤を使用して有害な菌を除去します。

放射線治療などが原因となっている場合には、患部に直接ホルマリンを塗布して症状を緩和させたり、注腸や坐薬で抗炎症薬を投与して症状の緩和を図ったりします。
他にも症状を緩和させるために副腎皮質ホルモン薬、サラゾピリン、ペンタサ、レミケードといった抗炎症薬を内服したり、止痢薬を内服したりして辛い症状を和らげる緩和療法を行います。

さらに鉄剤、ビタミンB12、葉酸などを内服する補充療法や、乳製品を避けて低脂肪食に食生活を切り替える食事療法も直腸炎の治療の1つとなります。それに加えて規則正しい生活を心がけることや、アルコールを控えるといった生活指導が加わることもあります。

ただし、クローン病が原因であった場合には、小範囲の切除や狭窄形成術など何かしらの手術をすることが必要になることもあります。

おわりに:直腸炎にはさまざまな原因が!原因に合わせた正しい治療を

炎症性腸疾患の一つ・直腸炎の原因はさまざまで、原因によって治療法も異なります。排便中だけでなく排尿時にも出血が見られるなどの異変があれば、すぐに病院を受診しましょう。

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