記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/13 記事改定日: 2020/5/29
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓の血管に石灰化が見られる、といわれたことはありませんか。今回はこの「冠動脈の石灰化」とは具体的にどういう状態なのか、薬を服用すれば治るものなのか、どのような対策ができるかについて解説していきます。
冠動脈の石灰化とは、血管壁にコレステロールなどの塊であるプラークができ、血管が硬くなった状態の「動脈硬化」がさらに進行した状態です。血管壁にできたプラークに血液中のカルシウムが沈着して時間経過をしたもののことをいい、動脈硬化の最終形態を指しています。
最近では、血液中にカルシウムが沈着すると石灰化が起こりやすいこともわかってきています。
冠動脈は筋肉でできており、本来は非常に柔軟性のある血管です。この冠動脈が石灰化すると、血管が硬くなって柔軟性が損なわれるばかりでなく、冠動脈の内側が狭くなって狭窄や閉塞を引き起こすことがあります。
冠動脈は心臓の筋肉に酸素と栄養素を送る大切な血管です。そのため、冠動脈の石灰化によって狭窄や閉塞が生じると心臓の筋肉に十分な酸素と栄養素が送られなくなり、心臓の筋肉は大きなダメージを受けることになります。
このような病気を狭心症や心筋梗塞と呼び、突然死の原因にもなります。
石灰化の率は加齢とともに増加するとされており、アジア人では、60 歳の男性の54%、女性の37%で冠動脈に石灰化がみられることがわかっています。
冠動脈の石灰化を指摘されたときに行う検査は、冠動脈石灰化スコア測定、カテーテル検査があります。
CTで撮影したデータをもとに、冠動脈の血管壁の石灰化を測定する検査です。冠動脈にあるカルシウムの量を測ります。
通常のCTよりも低線量で行うので、画像を見てみると病変のない冠動脈は灰色に見えて、カルシウムが沈着して石灰化しているところは白く見えます。このようにして石灰化の程度を測定するのです。通常のCT検査と同様にスキャン時間は10秒ほどで、検査の所用時間は10分ほどです。
なお、通常の胸部CTでも石灰化を見ることはできますが、正確な冠動脈石灰化スコアをみるためには低線量のCTが必要となります。新しい装置では0.4ミリシーベルト(mSV)と非常に低線量で、人体に大きな悪影響がありません。
冠動脈石灰化スコア測定の対象年齢の目安は男性で35歳以上、女性で45歳以上とされています。ただし糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙、心疾患の家族歴など動脈硬化を引き起こす危険性が高い方は、より早期に検査を受けることがすすめられています。
足の付け根の動脈からカテーテルを挿入して、心臓の血管まで移動させ、造影剤を注入して冠動脈の状態を診る検査です。CTで行える冠動脈石灰化スコア測定よりも侵襲(体の内部環境や恒常性を乱す可能性)が高いものの、冠動脈に直接アプローチしていることから、CTでは見ることのできない石灰化の強い病変などの確認をすることもできます。
冠動脈の石灰化を改善する内服薬は、現在のところ存在しません。そのため、心臓カテーテル治療などを行い専用のドリルで削り取るなどしなければ石灰化をとることができません。
ただ、石灰化していても血流を遮断していなければ完全に取り除く必要はないとされています。そのため、生活習慣を改善し、石灰化をこれ以上進行させないということが必要となります。
生活習慣の中でも特に喫煙は心臓への負担が大きいので、喫煙している人は禁煙しましょう。
ストレスは喫煙ほど大きなリスクはないものの、心臓に負担をかけて血液中のコレステロールを増加させるため石灰化を進行させる恐れがあります。特に、仕事にのめりこみやすい、競争心が強い、神経質である、せっかちといった人はストレス蓄積に注意が必要です。
女性の場合、特に更年期以降は血中コレステロール値が上昇しやすく、石灰化を進行させやすいといわれています。これまで以上に生活習慣に気をつけましょう。
有酸素運動は、冠動脈の石灰化の予防に役立ちます。毎日30分以上有酸素運動を行うようにしましょう。
冠動脈の石灰化の予防のためには、栄養バランスのとれた食事を目指しましょう。食事は過食を抑え、肉の脂身や乳製品、卵黄などの摂取を控えめにします。魚類、大豆製品、野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やすことも効果的です。
動脈硬化が進行した状態である冠動脈の石灰化。現在のところ、内服薬での石灰化治療はできませんが、石灰化によって血流が悪化していなければ治療の必要性は低いとされています。まずは生活習慣を見直して、石灰化が進行しないように予防をしていきましょう。
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