記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/16 記事改定日: 2020/6/16
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胆のうの病気の一つに「胆のう腺筋症」という良性腫瘍があります。今回はこの胆のう腺筋症の概要、症状、原因、治療法などを解説します。胆のう腺筋腫に対して不安を覚えている方は、ぜひ役立ててください。
胆のう腺筋症(胆のう腺筋腫症)とは、胆のうの壁が分厚くなる病変を特徴とする良性腫瘍です。より詳しく説明すると「胆のう壁10mm以内にロキタンスキー・アショッフ洞(RAS)が5個以上存在して、胆のう壁が3mm以上に肥厚したもの」を胆のう腺筋症といいます。胆のう腺筋症は、病変の部位や広がり方によって、大きく以下の3つに分類することができます。
胆のう腺筋症を発症した場合、胆汁がロキタンスキー・アショッフ洞に入り込んでしまうことで、胆石や石灰化を引き起こす可能性があります。なお、胆のう腺筋症と胆のうがんを併発するケースもありますが、現段階ではこれらの関係性は明らかになっていません。
胆のう腺筋症が起きたとしても、基本的には自覚症状は見られません。ただし、胆のう内や胆のう壁に結石(胆石)ができて、胆のう炎を発症した場合は、以下のような自覚症状が現れます。
その他、胆のうがんを併発する可能性もあり、その場合は腹痛や発熱などの症状が見られます。
胆のう腺筋症の特徴は胆のう壁が分厚くなることですが、なぜ胆のう壁は厚くなってしまうのでしょうか。この理由には「ロキタンスキー・アショッフ洞(RAS)」と呼ばれるものが、増殖していることが関係しています。
胆のう壁は粘膜、筋層、漿膜などで構成されています。本来であれば、これらはきちんと層ごとに分かれていますが、炎症などをきっかけとして胆のう粘膜が胆のう壁の筋層まで入り込んでしまう場合があります。これにより筋層や漿膜に「ロキタンスキー・アショッフ洞(RAS)」と呼ばれる憩室状の構造物ができてしまうのです。
そして、この「ロキタンスキー・アショッフ洞(RAS)」が増殖してしまうと、徐々に胆のう壁が徐々に分厚くなってしまいます。
胆のう腺筋症の診断には、腹部超音波検査(エコー検査)が有効とされています。検査では胆のう壁の肥厚状態や「ロキタンスキー・アショッフ洞(RAS)」の増殖具合などを確認できます。また、エコー検査では胆のう腺筋症だけでなく、胆石や胆のうがんなども確認できます。
なお、胆のうがんが疑われる場合は、超音波内視鏡検査、CT検査、MRI検査、ERCP検査といった詳しい検査を行う必要があります。また、胆汁中の細胞検査や腫瘍マーカー検査などを行う場合もあります。これらを実施して胆のう腺筋症か、胆のうがんかを鑑別します。
胆のう腺筋症と診断を受けても、自覚症状がない場合は積極的な治療は必要ありません。ただし、胆のうがんとの鑑別が難しいので、その後も慎重に経過観察を行うことになります。なるべく1年に1回程度は、腹部超音波検査を受けるようにしてください。
胆石や胆のう炎などを併発し、腹痛などの自覚症状を伴う場合は、治療が必要になります。治療では胆のう摘出を行う必要があり、その方法には大きく「開腹手術」または「腹腔鏡下術」の2つがあります。このうち「腹腔鏡下術」の方が、手術による負担は少ないです。どちらの手術方法を採用するかは、肥厚や炎症の程度などを参考に決定していきます。
胆のうがんを併発している胆のう腺筋症は、胆のうがんに対する根本的な治療が必要となります。具体的には手術による胆のうの摘出が第一選択となりますが、すでにがんが進行して周辺の臓器にまで広がっているような場合には手術ができないことも多く、そのような場合には抗がん剤治療などが検討されます。
胆のう腺筋腫は胆のう壁が厚くなるだけなので、ほとんど自覚症状が見られません。そのため、健康診断などでたまたま発見される場合もあります。基本的には良性腫瘍なので心配ありませんが、胆のうがんとの鑑別が必要になるので、早めに消化器内科などを受診しましょう。
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