老人性乾皮症にはどんな薬が処方される? 保湿ケアのポイントは?

2020/11/28

谷口 隆志 先生

記事監修医師

川崎たにぐち皮膚科、院長

谷口 隆志 先生

年齢を重ねてくると、体のいろいろなところに老化現象を実感するようになっていきます。皮膚に強い乾燥やかゆみを感じるようになる「老人性乾皮症(ろうじんせいかんぴしょう)」も、加齢とともに現れる老化現象の一種です。
今回は老人性乾皮症と、その症状の緩和に有効な方法についてご紹介していきます。

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老人性乾皮症とは

老人性乾皮症は、加齢に伴って脇腹・腰・太もも・すね・肩・腕など広範囲の皮膚が乾燥して粉をふいたような状態になり、かゆくなる症状のことです。年齢を重ねるとともに、以下のような原因が複合的に発生することで発症します。

  • 性ホルモンの減少に伴い、皮脂分泌量が減ってしまう
  • 皮脂の他にも、尿素やセラミドなど細胞の成長・代謝に伴って分泌される保湿成分も減る
  • 加齢による代謝低下により、本来ははがれるべき角質が残って皮膚の乾燥を助長する
  • 皮脂や保湿成分が減った結果、肌のバリア機能そのものも低下していく
  • 残った角質に知覚神経がのび、肌が敏感になることでかゆみが起こりやすくなる

どの程度のかゆみ・赤み症状が現れるかは個人差がありますが、高齢者のうち95%が老人性乾皮症を発症し、そのうち約半数にはかゆみの症状もあると報告されています。性ホルモンの分泌量の変化が発症時期に関係することから、発症しやすい時期には男女差(男性は60代、女性は40~50代)があります

老人性乾皮症の症状は湿度によっても左右されやすく、特に空気が乾燥する秋から冬にかけては、症状に悩まされる人が増えるのも特徴のひとつです。

老人性乾皮症は保湿が大切!

老人性乾皮症の治療では、肌を保湿してかゆみ・赤みを抑えます。具体的には、化粧水や乳液・クリームや保湿用の外用薬を乾燥している部分に塗る、皮脂を流す入浴の習慣を改める、生活習慣に気を付けるといったことを行います。

以下に、老人性乾皮症を治療し予防するための保湿・入浴・生活習慣のポイントをご紹介します。

老人性乾皮症治療のための保湿のポイント

  • 乾燥している部分には毎日、入浴後30分以内に化粧水や保湿クリームを塗る
  • 保湿クリームは、たっぷりの量をまんべんなくやさしく塗って肌を保護する
  • 空気の乾燥をできるだけ防ぐため、部屋は加湿器で十分に加湿する

老人性乾皮症治療のための入浴のポイント

  • 熱いお湯は皮脂が流れて皮膚がはがれやすくするので、お風呂の温度はぬるめに設定する
  • 体を洗うときはナイロンタオルなどを使わず、たっぷりの泡で手洗いする
  • それでも症状が改善しなければ、2日に1回はお湯で体をすすぐだけにする

老人性乾皮症治療のための生活習慣のポイント

  • 肌の保湿に役立つビタミンを、レバーや乳製品、卵などから積極的に摂取する
  • かゆみを増幅させるので、唐辛子やスパイス、アルコールなどの刺激物は避ける
  • 肌に刺激となってかゆみを増幅する化学繊維は避け、下着や服は綿素材にする
  • 保湿成分セラミドの分泌を促すため、しっかり寝て心身の疲れを溜めないようにする

老人性乾皮症で処方される薬は?

老人性乾皮症の治療では、乾燥やかゆみのある部分に塗りこむための塗り薬と、体の内側からひどいかゆみを抑えるための内服薬が使われます。以下に、老人性乾皮症の治療薬として皮膚科の病院で使用・処方されるものをご紹介します。

老人性乾皮症に効果的な塗り薬

  • ワセリンなどの油脂性の塗り薬
  • オリーブオイルなど保湿用の油脂
  • 尿素などの保湿成分を含んだ、ハンドクリームのような保湿クリーム
  • 皮膚の炎症、ひどいかゆみを抑える作用のあるステロイド軟膏

老人性乾皮症に効果的な内服薬

  • 抗ヒスタミン剤
  • または抗アレルギー薬 など

治療にどの薬を使用するか、また塗り薬と内服薬を併用するかどうかは、医師の診断で変わります。まずは皮膚科の医師に状態を診てもらい、適切な治療薬を選んでもらいましょう。

老人性乾皮症は市販薬で治せる?

老人性乾皮症に効果的な市販薬として、以下の2種類があります。

メディスキンコートf®
保成分である尿素、抗炎症成分であるグリチルリチン酸ニカリウム、血行改善作用のあるビタミンEを含んだ保湿クリーム。肌に水分を保持し、逃がさないようにしてくれます
ウレパール®プラスローション
天然由来の尿素と2種類のかゆみ止め成分を配合する、ローションタイプの保湿液です。乾燥性皮膚治療薬であるため、老人性乾皮症による乾燥由来の肌のかゆみ改善への効果も、十分に期待できます

皮膚のカサカサや軽度のかゆみ・赤み症状だけなら、上記のような市販薬で様子をみてもよいと思います。ただし、正しく症状を把握して原因を突き止め、症状にあった治療・ケア方法を知るためには、専門家である皮膚科医の診断が欠かせません。市販薬を使っても症状が改善しないときは、早めに皮膚科を受診しましょう。

おわりに:老人性乾皮症は、保湿作用の高い塗り薬とかゆみ止めで治療します

老人性乾皮症は、加齢に伴って肌の皮脂や保湿成分の分泌量が低下することで、肌が乾燥してかゆみ・赤み出てくる症状です。治療には、肌に不足した水分や油分を補うための塗り薬と、肌に起きた炎症とかゆみを抑えるための内服薬が処方されるのが一般的です。市販薬でも尿素など保湿成分を含む塗り薬を使えば、一定の治療効果が期待できるでしょう。ただし、症状が改善しないときは早めに皮膚科を受診しましょう。

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