胃の不快感だけじゃなくて下痢も…。これって胃炎?ほかの病気?

2018/12/21

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

なんとなくおなかが気持ち悪いと思っていたら、胃の痛みや下痢の症状まで出てきた…。そんなとき、胃腸に何らかの病変が起きていると考えられます。
今回は、胃部の不快感と下痢の両方が現れる場合に考えられる胃腸の病気として、胃炎と感染性胃腸炎の特徴についてご紹介していきます。

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胃炎になったら下痢をする?

胃炎は、胃の粘膜が急激に、あるいは慢性的に少しずつ炎症を起こした状態です。代表的な症状として、上腹部の不快感や痛み、吐き気や嘔吐、食欲不振があらわれるほか、慢性的な胃炎が続くと吐血や空腹時の腹痛も伴うようになってきます。

ただ、胃炎による各症状は胃にだけ現れるもので、腸にはあまり影響しません。このため、胃炎が原因で下痢の症状が現れることは、基本的にはないと考えられます。

下痢がみられるときは感染性胃腸炎の可能性も

胃部に胃炎が起きているときのような不快感や痛みがあり、かつ下痢の症状も伴っている場合、感染性胃腸炎を発症している可能性が高いと考えられます。

感染性胃腸炎とは黄色ブドウ球菌、ノロウイルス、サルモネラ菌、ロタウイルスなどに感染することで発症する感染症です。 いわゆる食中毒も感染性胃腸炎の一種で、各原因菌に汚染されたものを食べたり、物に触れたりすることで感染し、1~3日の潜伏期間を経て発症します。

原因となる細菌やウイルスによってによって違いはあるものの、胃部の不快感やむかつき、下痢のほかにも以下のような症状を伴うことが多いです。

感染性胃腸炎の症状
吐き気、嘔吐、激しい腹痛、発熱、疲労感、倦怠感、下痢や嘔吐による脱水症状  など

感染性胃腸炎かどうかはどうすればわかる?

一般的に、胃炎であればバリウム検査や内視鏡(胃カメラ)検査で胃の中の状態を確認して診断しますが、感染性胃腸炎の場合は基本的に必要ありません。

感染性胃腸炎かどうかは、その人が感染源となり得る細菌やウイルスを保有しているかを調べれば判断できるため、排出された便や嘔吐物を採取して感染の有無を確認します。さらに呼気検査や血液検査もあわせて行い、2~10日くらいで診断結果がわかります。

胃腸からくる下痢の症状はどうやって治すの?

検査の結果、感染源がウイルスだった場合は、症状を和らげながらウイルスの排出を待つ対症療法で治療していきます。具体的には、発熱やおなか、全身の痛みや倦怠感がひどい場合には解熱鎮痛剤を服用する、飲水の補助や点滴で水分補給を促すといったことが挙げられます。

特に、自力で水分補給ができないほどのひどい嘔吐や下痢がある場合、体力のない高齢者や子供は脱水症状を起こして命にかかわる状態に陥るリスクもあります。脱水症状を避けるには、体重(kg)と同じ分量(ml)の市販の経口補水液を用意して5分に1回のペースで少しずつ飲ませ、十分な量の水分を補給するようにしてください。

ただし、少しずつ飲ませてもすぐに吐き出して自力での水分補給が難しい場合は、早めに病院に行って点滴の処置を受けることをおすすめします。

なお、ウイルスではなく細菌を感染源とした胃腸炎で、高熱や血便を伴うほど症状が重い場合は、対症療法とあわせて原因菌に効果的な抗生物質を使用することもあります。

おわりに:胃の不快感と下痢の両方があるなら、感染性胃腸炎かも!

食べすぎや消化不良などによるただの胃炎で、下痢が起こることは考えにくいです。このため、胃炎のような胃部不快感や吐き気と下痢が一緒に起こっている場合は、細菌やウイルスによる感染性胃腸炎の可能性が高いです。感染性胃腸炎は、脱水症状に気を付けながら、体内の細菌・ウイルスを便や嘔吐で排出すると回復します。ただし、自力での水分補給が難しいほど重症な場合は、病院に行って適切な処置を受けてください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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