記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
人間の尿は、腎臓で作られた後に尿管を通って膀胱で蓄積され、膀胱がいっぱいになると尿道を通って体外へ排出されます。尿が排出までに通る経路を「尿路」と言いますが、この尿路に石ができてしまう「尿路結石」という病気をご存知でしょうか。
今回は尿路結石という病気について、原因や症状、再発の可能性などを解説します。
腎臓で作られた尿が尿管を通って膀胱に蓄積され、尿道を通って排出されるまでの過程の中で、体内で不要になったシュウ酸カルシウムが結晶化することがあります。このように、尿が体外に排出されるまでの経路でシュウ酸カルシウムなどが結晶化し、大きくなってしまった状態を尿路結石と呼びます。
尿路結石は男性なら7人に1人、女性なら15人に1人程度の頻度で発症する病気で、女性に比べて男性の方が発症しやすい傾向があります。
男性は40代での発症が最も多くなるのに対し、女性は閉経を迎えた後、50~70代になってから発症しやすくなるのも特徴のひとつです。また、男女問わず、肥満や生活習慣病を発症している人が尿路結石になりやすい、ともいわれています。
尿路結石によって現れる症状は、尿路のうちどの位置に結石ができるかや、結石の大きさによっても変わってきますが、代表的なものは以下の通りです。
上記症状のうち、痛みは特に尿管や尿道に結石ができた場合に起こりやすく、頻尿や残尿感などの排尿異常は膀胱に結石ができた場合に起こりやすいといわれています。
なお、尿管や尿道ではなく腎臓や膀胱に結石ができている場合は、鈍痛程度の弱い痛みを感じる程度で、無症状のまま進行していくケースも多いです。
また、血尿は結石が大きくなり尿路の粘膜が傷つけられた場合に発生する症状なので、血尿が出た場合は石がかなり大きくなっていると考えられるでしょう。
尿路結石の原因であるシュウ酸カルシウムの結石は、カルシウムや尿酸の代謝に障害がある人に特に発生しやすいといわれています。尿路結石の再発を繰り返す人は、背後にカルシウムや尿酸代謝に異常をきたす病気や感染症が潜んでいる可能性が考えられます。
尿路結石を何度も発症する場合は、結石の成分や尿に含まれている成分を採取して調べ、再発の原因を特定したうえで、適切な治療を受けましょう。痛みや不快な発作を経験しなくて済むよう、2回以上尿路結石を繰り返している人は、きちんと原因を特定するとともに、完治に向けて根本的な治療を受けるようにしてください。
尿路結石は、一度発症して痛みや発作を経験すると、再発する可能性の高い病気です。一度尿路結石を発症したら、症状の有無にかかわらず、最低でも1年に1回は泌尿器科で健診を受けて尿路結石を発症していないかを確認してください。
また、定期健診の時期でなくても、少しでも尿路結石を疑うような兆候や痛みを感じたら、泌尿器科で尿路結石の有無を確認してもらうクセをつけておくことをおすすめします。再発予防のために、こまめな通院・健診を怠らないようにしましょう。
尿路結石は、腎臓から尿管・膀胱・尿道を通って尿が排出される過程でシュウ酸カルシウムが結晶化し、大きくなって尿路を傷つけてしまう病気です。石ができる位置によっては発症していても無症状の場合もあり、気付かないうちに進行していたり、再発していたりすることも少なくありません。再発の頻度も高い病気なので、一度以上発症して発作が起きた経験のある人は、再発予防のためにも定期的に泌尿器科で健診を受けるようにしてください。