記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/4/11
記事監修医師
前田 裕斗 先生
受精卵が無事着床して成長を始めたときに、妊娠がはっきりと確認されます。子宮への着床と妊娠のしくみについてご紹介します。
妊娠とは、受精した卵子が女性の子宮内膜に着床したことを言います。女性の体内にある妊娠に関係する部位として、以下の3つがあります。
・2つの卵巣:卵子が貯蔵され、成長し、放出される場所
・子宮:受精卵が着床し、妊娠状態が形成される場所
・卵管:卵巣と子宮をつなぐ細い管
生理の周期はホルモンによってコントロールされており、女性ホルモンであるエストロゲン値の上昇が卵巣に卵子の製造と放出を引き起こします。これが排卵です。排卵後、黄体ホルモンの助けで子宮内膜が受精卵を受け入れる状態に整いはじめます。これで妊娠を受け入れる準備が整ったことになります。
大部分の女性の排卵は、次の生理予定日の10~16日前に起こります。卵子は卵管を通って子宮に移動していきます。この間に妊娠することがなければ、卵子は体内に吸収されてしまいます。ここでエストロゲン値と黄体ホルモン値が下がり、子宮内膜がはがれます。この子宮内膜が血液を伴い対外に放出されます。これが毎月の生理です。
排卵の後、卵子は24時間生存しています。一方精子は7日間、卵管の中で生きることができます。妊娠のタイミングはこの7日の間に、卵子が精子と出会い受精することです。
受精が起きると、単細胞の受精卵はすぐに他の精子を遮断するために、バリアをつくります。そして細胞分裂を繰り返していき、数日後には細胞の数はおよそ100にもなります。
この細胞は、いずれ赤ちゃんに成長していくものあれば、赤ちゃんを守り育てる胎盤を形成するものもあります。この細胞の胚盤胞と呼ばれるものが、卵管から子宮へおよそ6日間かかって到達します。この胚盤胞が子宮内膜に着床し、赤ちゃんへと育っていく胎芽となります。そして9ヶ月の間成長し続けるのです。
子宮への着床後、6~12日間で(約妊娠4週目)、形成中の胎盤はヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を作り始めます。妊娠初期の3ヶ月間、hCGは卵巣に卵子を作らないように命令し、女性ホルモンであるプロゲステロンとエストロゲンの産出を誘発します。
これにより、子宮壁がはがれ落ちないようにし(月経が止まり)、胎盤の形成の力となります。これらのホルモンは妊娠全期間において重要な役割をします。体の変化やつわりなどの妊娠症状の原因になります。その後約1~2週間かけて、尿中や血液中のhCG濃度が濃くなってくると、血液検査と尿検査で妊娠したことが確認できます。
受精した卵子が子宮の中以外に着床した場合は、正常に発達し続けることはできません。これを異所性妊娠とよびます。異所性妊娠の約97%が卵管で発生していますが、子宮頸部、卵巣または腹部で起こる可能性もあります。この状態は、妊娠初期に起こるため、妊娠したことに気づかないことも多いです。
しかし異所性妊娠が進むと、卵管を破裂させ、大量出血を引き起こし命にかかわるため、緊急の治療が必要です。異所性妊娠が疑われる場合は、医師に連絡してください。早めの診断と処置が必要です。一度異所性妊娠を経験しても、きちんと治療すればもちろん将来的に健康な妊娠をすることができます。
妊娠がわかって、これ以上はない喜びに包まれる一方、体調の変化にとまどうことも多い毎日。これから続く9ヶ月を、健やかで無事にお過ごしください。