記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
臓器移植は臓器が障害を受け、生命の危険があるときに、提供者(ドナー)から臓器をもらう治療のことです。現在、心臓、肝臓、すい臓、腎臓、小腸など、さまざまな移植が行われています。こうした臓器移植の中から、今回は肺移植の基本、手術成績、移植前後の生活などを解説します。
肺移植とは、患者さんの肺を取り出し、ドナー(提供者)から提供された新しい肺を移植する治療法です。肺移植の手術には「両肺移植(左右両方の肺を移植する方法)」と「片肺移植(左右一方の肺を移植する方法)」があり、以下の条件を満たす場合に行われます。
また、肺移植には脳死肺移植と生体肺移植の2種類があります。脳死肺移植とは脳死状態の方の肺を移植する方法で、生体肺移植とは健康な方の肺を移植する方法です。このうち生体肺移植は国外ではほとんど実施されていませんが、日本国内では実施されています。
肺移植の対象になる病気として、主に以下のようなものがあります。
これらの他にも、肺サルコイドーシス、肺好酸球性肉芽腫症、多発性肺動静脈瘻、じん肺に加え、肺・心肺移植関連学会協議会にて承認を受けた進行性の肺疾患が対象になります。なお、肺移植の適応基準については、移植実施施設への確認が必要です。
患者さんの状態次第では、肺移植ができない場合もあります。たとえば、悪性腫瘍、骨髄疾患、冠動脈疾患などの病気を抱えている場合や、「栄養状態が良くない」、「タバコをやめることができない」、「リハビリテーションを行えない」などの場合には、肺移植を受けることができません。こういった患者さんの状態も考慮し、肺移植適応の可否が判断されます。
少し古い数字にはなりますが、日本移植学会が肺移植の成績に関する報告を出しています。これによれば、2013年末時点での脳死肺移植件数は197件(両肺移植93件、片肺移植104件)となっていて、そして、肺移植の手術成績は以下の通りになっています。
この報告によれば、手術成績について「病気による差」や「手術方法による差」はないとのことです。ただし、手術件数が限られているため、あくまでも現段階での報告となります。
また、2013年末時点での生体肺移植件数は145件となっています。生体肺移植の生存率については、脳死肺移植とほぼ同じ程度と報告されています。
もし肺移植が必要となった場合、移植前にはどういった生活を過ごすのでしょうか。また、移植後にはどのような生活を送るのでしょう。気になる移植前後の生活について紹介します。
肺移植を希望する場合は「日本臓器移植ネットワーク」への登録が必要です。こちらが済んだら、病気の治療を続けつつ、自分の順番が来るまで待機します。なお、「いつ肺移植の順番が来るのか」は決まっておらず、待機期間は平均2.5年~3年程度とされています。
また、「日本臓器移植ネットワーク」から順番が来た場合、1時間以内に返答が必要になるので、常に連絡を取れるようにしておくことが重要となっています。
移植後は、2週間程度「ICU(集中治療室)」で治療を受け、その後、一般病棟で入院生活を送ることになります。一般病棟に移ってからは、社会復帰のためにリハビリを受けたり、復帰後に備えて服薬方法を学んだりします。経過が良好なら、2~3カ月で退院できます。
移植後は病気前に近い生活を送ることができ、学校や職場などにも復帰できます。ただし、退院後は2週間に1回の頻度で通院が必要になり、1年ほど経過すると通院頻度は少なくなり、1~2カ月に1回程度になります。このように移植後にもやることは沢山あります。
肺移植を希望する場合は、「日本臓器移植ネットワーク」への登録が必要です。その際、まずは移植実施施設への紹介を受け、約3カ月~約4カ月かけて登録されます。実際の登録は移植実施施設が対応してくれますが、肺移植が必要な場合は早めに登録を行いましょう。
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