下痢止めって飲まないほうがいいの? 飲んでもいいのはどんな下痢?

2019/1/18

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

下痢止めはドラッグストアなどでも手に入るので、比較的身近な医薬品かと思います。しかし、下痢止めを手軽に使っていると、かえって「下痢の治り」が遅くなるケースもあるようです。今回は下痢止めの使い方のポイントをご紹介いたします。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

下痢のときって、下痢止めは飲まないほうがいいの?

最近では、「下痢のときには、下痢止めを使用しない」というのが常識になっています。そもそも下痢は「病原菌を排出するための防衛作用」だからです。そのため、安易に下痢止めを使ってしまうと、かえって回復が遅れてしまう可能性が高いのです。

それでは反対に、下痢止めを飲んだ方がいい場合はあるのでしょうか。実は、冷え、ストレス、睡眠不足などが原因である「非感染性の下痢」の場合は下痢止めを使ってもよいと言われています。そのため、原因に合わせて下痢止めを使うことがポイントになるのです。

下痢止めを使わないほうがいい理由は?

前項にて「下痢のときには、下痢止めを使用しない」と説明しましたが、その理由について詳しく解説したいと思います。また、「下痢の仕組み」や「下痢止めの作用」も確認します。

「下痢の仕組み」と「下痢止めの作用」について

そもそも感染性の下痢の場合、以下のいずれかの理由で症状が起こります。

  • 病原体が出す毒素によって発症する(分泌性下痢)
  • 病原体が腸の粘膜に感染することで発症する(滲出性下痢)

このように、感染性の下痢は病原体が悪さをしたために起こる生理作用です。そのため、直接の原因である病原体を殺すお薬であれば、服用してもよいと言えます。

しかし、市販の下痢止めには「病原体を殺す作用」や「毒素を弱める作用」などは含まれていません。また、お薬の中には「腸のぜん動運動を抑えるタイプ」もあり、排便を遅らせてしまうものもあります。そのため、「下痢止めは使わない方がよい」と言われています。

でも下痢による脱水症状が心配…

確かに下痢を起こしてしまうと、それによって体内の水分は失われます。そのため、脱水症状を回避するためには、適切な水分補給を行うことが重要です。

その際、体内のイオンバランスを整えるために、経口補水液やスポーツドリンクなどを飲むのがおすすめです。ただし、スポーツドリンクには糖分が多く含まれているので、そのまま飲むと症状を悪化させる恐れがあります。そのため、薄めてから飲むようにしましょう。

逆に、下痢止めを飲むメリットってあるの?

安易に下痢止めを使用すると、下痢が長引いてしまうリスクはあります。しかしながら、下痢をそのままにしておくのも大変なので、必要な場合は、下痢止めを使用するのもよいかと思います。上手に下痢止めを使った場合には、以下のようなメリットが期待できます。

  • 下痢による不快感を解消できる
  • 脱水症状のリスクを回避できる
  • 下痢による体力低下を予防できる

ただし、「感染性の下痢」の場合は病原体を排出する必要があるため、下痢止めを使用しない方が望ましいです。下痢止めの使用は、「非感染性の下痢」の場合だけにしましょう。

下痢止めを使わないで改善する方法はある?

下痢が続いている間は、なるべく食事を控えることがポイントです。無理に食事を摂ると腸に負担がかかってしまい、下痢を悪化させたり、長期化させたりするリスクがあります。そのため、症状が続く間は食事を控え、回復状況に合わせて徐々に食事も戻しましょう。

また、原因に合わせた対応も必要です。たとえば、暴飲暴食が原因であればなるべく食事量は控え、胃腸に優しい食事を摂りましょう。また、原因が冷えの場合は、エアコンの温度を上げたり、ブランケットやカイロを使ったりするのもよいでしょう。

下痢が止まらないときは自己判断せず病院へ

通常、急性下痢であれば1週間以内には症状が落ち着きます。しかし、1~2週間以上続く場合は「慢性下痢」かもしれません。慢性下痢の主な原因としては、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸結核、大腸がん、乳糖不耐症などが挙げられます。他にも、甲状腺機能亢進症や薬の副作用などが、慢性下痢の原因になっている場合もあります。

これらの病気が原因の場合、基本的には適切な治療を行う必要があります。そのため、下痢が1週間以上続いている場合は、消化器内科などを受診するとよいでしょう。また、下痢に加えて下血が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

おわりに:安易に下痢止めを使用せず、心配なら病院を受診しましょう!

下痢は、病気や体調不良から身体を守ってくれるための生理作用です。そのため、安易に下痢止めを使用すると返って回復が遅れてしまいます。ただし、下痢が長引くようでしたら、重篤な病気の可能性があるので、早めに消化器内科などを受診してください。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

下痢止め(12) 慢性下痢(2) 下痢止めを飲んでいいとき(1) 冷えによる下痢(1) 感染性の下痢(1)