記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
感染すると流産を引き起こす恐れがあるとして、妊婦さんは要注意な感染症「りんご病」。以降では妊娠初期、後期など時期ごとの妊婦さんのリスクや、感染の予防法についてお伝えしていきます。
りんご病は、健康な子供や大人が感染した場合であれば、そこまで問題をもたらす病気ではありません。しかし妊婦さんが感染すると、流産や自然の原因となりうることがわかっています。
りんご病の発症原因はパルボウイルスB19という病原体で、このウイルスに妊婦さんが感染すると、およそ20%の確率でウイルスが胎盤を通過し、胎児に感染を引き起こします。さらにこのうちおよそ20%が胎児水腫(胎児のむくみ)や胎児の貧血を起こすようになります。
ただ、胎児水腫や胎児貧血は初めてりんご病に感染したすべての妊婦さんの約4%、また胎児死亡率は約6%と低い割合でもあります。
りんご病に感染した妊婦さんのうち、流産の事例が多いのは妊娠20週よりも前の初期です。逆に妊娠28週以降の後期の妊婦さんは、パルボウイルスB19に感染しても死産や胎児水腫のリスクはかなり低いとされています。
現在のところ、パルボウイルスB19に対するワクチンは存在しません。しかしりんご病は感染者のくしゃみや咳などの飛沫を通じて感染するため、特に流行期にはマスクの着用、こまめな手洗い、手指のアルコール消毒が欠かせません。
なお、りんご病の初期症状は鼻水や熱といった風邪のような症状で、この時期に最もウイルスの排出量が多くなるといわれています。また、感染者のおよそ半数は症状が出ない不顕性感染のため、知らず知らずのうちにウイルスに接触してしまう恐れはあります。りんご病の流行期には、ちょっと風邪気味の人はもちろん、不特定多数の人との接触はなるべく避けたほうが安心でしょう。
りんご病は子供のころかかったことのある人であれば、すでに抗体(免疫)をもっている可能性があります。保険適応外にはなってしまいますが、妊娠前の段階で抗体があるかどうかを調べておくのも手です。この場合、血液検査でIgG抗体を調べることになります。抗体が陽性であれば、過去にかかったことがあるとわかります。
なお、妊娠中の感染が疑われる場合はIgM抗体を検査し(この場合は保険が適応されます)、抗体が陽性であれば現在感染中ということを示します。陽性の妊婦さんに対しては、その後毎週のエコー検査での経過観察や、子宮内赤血球製剤輸血などの治療が適宜行われることになります。
りんご病は妊婦さんが感染すると流産や胎児水腫などの恐れがありますが、その確率はそこまで高いものではなく、後期の妊婦さんであれば問題のないことがほとんどです。ただ、妊娠初期の場合は胎児へのリスクが高いので、特に流行期にはマスクの着用の徹底、こまめな手洗いなどできる対策を行いましょう。
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