記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/3/11
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心タンポナーデとは、心臓に心嚢液(=しんのうえき)がたまることで発症する病気です。この記事では、心タンポナーデがどのような病気かや、発症するとどんな症状があらわれるか、そしてどうすれば治療できるかを解説します。
心臓は、心外膜という2枚の薄い膜に覆われており、その膜の間のスペースは「心嚢(しんのう)」または「心膜腔」と呼ばれています。このスペースには「心嚢液(=しんのうえき)」という液体が満ちており、心臓の拡張や収縮を助ける潤滑のような役割や、外部からの衝撃を和らげるクッションのような役割を果たしています。また、周囲のウィルスや細菌などの病原菌が、直接心筋に悪い影響を及ぼすのを防ぐ役割もあります。
心タンポナーデになると、なんらかの原因で心嚢液が急速に増加して、溜まってしまいます。すると、心嚢の内圧が上がり、十分に拡張できなくなるのです。心臓のポンプとしての働きも抑え込まれてしまうのです。
心タンポナーデになると、心臓のポンプ機能が働かなくなるため血圧が低下します。その結果、胸部の圧迫感、呼吸困難、意識障害などの症状で、外傷性のものや心筋梗塞後の真破裂などの場合、急速な血圧低下で循環不全や意識障害が引き起こされ、ショック状態に陥ることもあるのです。最悪の場合、死に至る可能性もあるため、重篤化した場合は緊急開胸術が必要になります。
ただし、液体が心嚢に少しずつ貯留している慢性的な心タンポナーデの場合、最初は自覚症状がありません。しかし、溜まっている心嚢液が増えていくにつれて、息苦しさや呼吸困難などの症状が出てきます。
心タンポナーデを診断するためには、血圧の低下や奇脈(吸気と呼気による大きな血圧の差)、経静脈の怒張などの所見確認が必要です。さらに、心エコー検査(超音波検査)を行い、心嚢液がどれだけ溜まっているかの程度や心臓の圧迫の程度を診断します。
重篤な状態に陥り緊急入院した場合、ショック状態を離脱するための応急処置が行われます。心嚢穿刺(しんのうせんし)といって、心嚢液が溜まっているスペースに胸壁から針を刺して心嚢液を排除、一時的にチューブを挿入する処置です。一刻を争う事態でなければ、治療の安全性を高めるために、エコーで心臓や心嚢液の残留している場所を確認したり、レントゲン装置を使用したりしながら処置をします。
しかし、このように慎重に処置をしたとしても、動いている心臓に向かって針を進める心嚢穿刺という処置は、大きなリスクをともないます。心臓を傷つけて大出血させてしまったり、肺を傷つけたりする可能性があるのです。また、心タンポナーデの患者は、血圧や心臓の動きの状態が非常に不安定のため、事態が急変する可能性も非常に高くなります。最悪の場合、心嚢穿刺だけでは対処できない場合もあるのです。
心タンポナーデは、別の病気に付随して発症する病気です。原因となる病気を特定し、治療することもとても重要となります。
心臓は、心外膜という2枚の薄い膜に覆われており、その間のスペースに「心嚢液(=しんのうえき)」という液体が満ちています。心タンポナーデは、なんらかの原因でこの心嚢液が急速に増加して、貯留してしまう病気です。心臓のポンプとしての働きも抑え込まれてしまうため、針で心嚢液を抜く心嚢穿刺という処置が必要になります。