記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/3/4
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
大動脈は体の中で最も太い血管です。この血管に何らかの原因でこぶができ、それが破裂してしまう状態が大動脈破裂です。大動脈破裂を発症すると命に危険が及ぶ可能性が高くなるため、できれば予防したいところです。この記事では、大動脈破裂の前兆の有無や、破裂を予防するためにできることを解説します。
大動脈瘤とは、動脈硬化などで弱くなった大動脈にできるこぶ状のふくらみのことをいいます。そもそも大動脈は、体の中で最も太い血管で、心臓の左心室から送り出された血液がまず通る血管です。心臓から勢いよく送り出される血液が通るためほかの血管よりも壁が厚く、数ミリほどあります。この大動脈には100mmHg以上の高い圧がかかるため、動脈硬化などで弱くなった部分があるとこぶができやすくなります。このこぶは、一旦大きくなると加速度に膨らみ、その結果血管壁がどんどん薄くなるため、破裂に至るのです。
基本的に、大動脈瘤が破裂する前兆はありません。しかし、できる部位によってはまれに前兆とも取れる症状が出現します。たとえば、胸部に大動脈瘤ができると大動脈瘤が声帯を圧迫するため、声帯をつかさどる神経が麻痺して声がかすれたり、むせこみやすくなったりすることがあります。また、腹部に大動脈瘤ができると、脈打つ塊に入浴時などに気づけることがあります。そして、動脈瘤が膨らむ際に痛みを感じることもあります。
大動脈瘤が破裂すると、激しい痛みに見舞われます。破裂によって大量に出血をするため、血圧が低下して出血性ショックとなります。破裂する部位によっては、血を吐いたりとか、血便が出るということもまれにあります。
また、大動脈瘤が破裂した場合は致命的となることが多く、破裂した患者さんのうち、病院にたどり着く前に死亡する確率が約50%、病院にたどり着いたとしてもそのうち50%の方は、手術室に着く前に致命的となります。手術ができた場合でも、その致死率は約50%であり、大動脈瘤の最終救命率は約10~20%と言われています。そのため、大動脈瘤を予防することが非常に重要となります。
大動脈瘤は破裂するまでは無症状であるため、大動脈瘤を早期に発見するためには違和感や圧迫症状を手がかりに検査を進めるしかありません。動脈硬化性真性瘤は60歳以上の男性に発生することがほとんどであるため、60歳以上の男性やあるいはリスク要因があるという人は、胸部レントゲン検査と腹部超音波検査は少なくとも数年ごとに受ける必要があります。
また、大動脈瘤は動脈硬化や高血圧が原因となることが多いため、これらを予防することで大動脈瘤の形成あるいは破裂の予防につながります。高血圧だけでなく、高脂血症がある方や糖尿病の方は、治療することが予防につながります。また、喫煙や多量飲酒の習慣がある方では、この生活習慣を見直すことも予防につながります。特に喫煙は大動脈瘤の破裂だけでなく、大動脈瘤の形成にも密接に関係しているため、喫煙習慣は特に見直すことがおすすめです。
大動脈瘤は大動脈という体の中でも特に太い血管にできた瘤のことをいいます。この大動脈瘤が破裂すると大量出血に伴う血圧低下から出血性のショックとなり約90%の確率で致命的となります。大動脈瘤は前兆がほとんどありません。そのため、定期的な健康診断を受けて大動脈瘤を早期に発見し治療をしたり大動脈瘤の形成、破裂因子となる高血圧、動脈硬化、高脂血症を治療することが予防へとつながるでしょう。