肺がんが脳に転移…。見つかったときの治療法は?

2020/2/19

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肺や胃などにできたがん細胞が脳に転移した結果、脳に腫瘍ができてしまう状態を「転移性脳腫瘍」と呼んでいます。この転移性脳腫瘍は、どの部位にできたがんでも発症する可能性がありますが、特に肺からの転移が多いと言われています。この記事では、転移性脳腫瘍の治療法を中心に、予後の可能性も解説します。

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肺がんの脳転移、転移性脳腫瘍とは

転移性脳腫瘍とは、頭蓋内以外にできた部位の癌が、脳内を中心に頭蓋内に転移したものです。がんになった方のうち、約10%が転移性脳腫瘍を発症するといわれています。特に肺がんからの転移が最も多く、肺がん以外では乳がん、直腸がん、腎・膀胱がん、胃がんなどでみられます。転移性脳腫瘍患者のうち、30%が脳転移が原因で死亡しているというデータもあります。

脳に転移した肺がんの治療法は?

脳に転移したがんの治療は、脳にできたがんの大きさや患者の体調などによって変わります。ただ、一般的な考え方として、脳以外のがん病巣の状態、この場合肺がんの状態によって予想される生存期間が3カ月以内ならば、ステロイドや浸透圧利尿剤などの薬剤による保存的治療を行います。一方、予想される生存期間が6カ月以上の場合は手術と全脳照射を行い、手術では開頭術による腫瘍の摘出が行われます。

手術を行う条件はさまざまあり、1回の手術で腫瘍がすべて摘出可能であること、大脳転移で直径4cm以上、小脳転移で直径3cm以上であること、手術に耐えられる体力があり安定していること、腫瘍は脳の表面に近い部分に存在していること、重要な脳の組織とある程度離れていることなどが条件になります。

全脳照射は小さな腫瘍にも照射でき、3cm以上の大きな腫瘍にも照射可能ですが脳全体への照射となるため正常な脳へもダメージが起こる可能性があり、2~3週間のスパンで照射が必要になります。多発例の場合も、放射線治療としてこの全脳照射が必要となります。予測される生存期間が6ヶ月以内の場合は患者さんの状況により治療法を考慮する必要があります。

近年では全脳照射以外にも定位放射線治療(ガンマナイフ、サイバーナイフ、リニアックナイフ)という治療法があり、高線量の放射線を1カ所に集中させて、転移巣に1回で放射線を照射することもあります。1回(1日)の照射で良く、正常脳への影響が少ないものの、照射できるのは3cm以下の脳腫瘍であり、神経症状が強い方が適応となります。まれに放射線壊死を起こすこともあります。

脳転移が見つかった場合の予後は

脳転移をしている場合では多臓器への転移を伴う場合が多く、予後不良とされているものの、さまざまな治療を組み合わせることによって治療成績は向上しています。そのため、QOLの向上や延命の目的で治療を行うということも非常に大切です。また、転移性脳腫瘍は早く見つかれば見つかるほど治療成績は良くなります

治療法から見ると、手術+全脳照射は、全脳照射単独よりも生存期間・無増悪生存期間を延長し、手術により神経症状が回復する場合があります。また、手術単独と比べても生存期間は変化ないものの、無増悪生存期間を延長することができます。
さらに全脳照射+定位放射線照射は、定位放射線照射単独に比べて生存期間は変わりませんが、脳病変の再発率を低下させるというデータがあります。

おわりに:転移性脳腫瘍に早期に気づければ治療成績は良い

転移性脳腫瘍はほかの部位でできたがんが頭蓋内に転移するもののことを言います。肺がんから転移するものが最も多いことが特徴です。早期に発見し治療ができれば治療成績は良いことが特徴です。また、治療法は腫瘍の大きさや腫瘍の数、患者さん自身の体力や病状によって決定されます。治療法については主治医とよく相談して決定しましょう。

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