動脈硬化の危険因子と予防対策

2025/3/19

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

大動脈瘤や心筋梗塞など、動脈硬化が原因になる深刻な病気があります。動脈硬化には危険因子があり、危険因子に気をつけることが予防につながります。この記事では、動脈硬化になるプロセスと危険因子、予防対策について解説しています。

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動脈硬化とは

動脈硬化は動脈(血管)の壁が硬くなる厚くなるなどして、本来の血管の働きが悪くなる症状の総称であり、病理学的には以下の3種類に分けられます。一般的に動脈硬化といえば「粥状(じゅくじょう)動脈硬化」を指すことが多いといわれています。

病理学的な動脈硬化の分類
  • 粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)
  • 細動脈硬化
  • 中膜石灰化硬化(メンケベルグ硬化)

粥状動脈硬化は、動脈の内壁に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)などがお粥のような状態でドロドロと溜まり「粥状硬化巣」ができた状態で、粥状硬化巣が徐々に大きくなると動脈の内側が狭くなり、潰瘍や血栓ができやすくなります。この状態は、動脈硬化が進行する原因になり、大動脈瘤・心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などのリスクを高める原因にもなります。

動脈硬化になるプロセスと危険因子

動脈硬化にはさまざまな原因がありますが、おもな原因として加齢・糖尿病・糖尿病予備軍群などが挙げられます。糖尿病などで血糖値が高い状態が続くと、動脈硬化を防ぐ善玉コレステロール(HDLコレステロール)が減少します。善玉コレステロールは、血管壁から悪玉コレステロールを肝臓に運ぶ役割がありますが、善玉コレステロールが減少するとコレステロールが血液中に停滞するようになり、血液の流れも滞ります。この状態が続くと血管の内側の「内皮細胞」が傷つきます。

内皮細胞には血管の収縮・拡張を調節する役割があり、血栓の形成を防いでいます。内皮細胞が傷つくとこの調整ができなくなるため動脈硬化が進行しやすくなり、動脈硬化が進行すると血管の内壁が弱くなり、もろくなった部分に大動脈瘤ができやすくなります。

動脈硬化になるプロセス
  1. 加齢や善玉コレステロールの減少などにより血流が悪くなる
  2. 血管の内側の「内皮細胞」に傷がつく
  3. 血管の収縮・拡張の調節が難しくなる
  4. 血管の内側に脂肪などがお粥のような状態で溜まる
  5. 血栓や潰瘍などが形成されやすくなる
  6. 血管が徐々に硬くなる
  7. 動脈硬化が進行する

動脈硬化の危険因子

動脈硬化のおもな危険因子には以下があり、比較的女性よりも男性の方が動脈硬化になりやすい傾向にあり、動脈硬化も含め大動脈瘤・狭心症などの心臓疾患を引き起こすリスクも高いといわれています。

動脈硬化の危険因子

  1. 加齢
  2. 男性である
  3. ストレス
  4. 糖尿病
  5. 肥満
  6. 高脂血症
  7. 高血圧
  8. 肥満
  9. 喫煙 など

特に重大な危険因子

  1. 糖尿病
  2. 高血圧
  3. 喫煙

動脈硬化の予防対策

動脈硬化を予防するには、危険因子である糖尿病・高血圧・肥満などを予防することを心がけ、禁煙に取り組むことが大切です。

適度な運動を習慣化する

肥満を予防することは、動脈硬化の予防にも役立ちます。なお、内臓脂肪型肥満になると動脈硬化の危険因子となる糖尿病や高血圧などの病気になる危険性が高まるため、とくに大切と考えられています。また、適度な運動を習慣化することは、肥満の解消だけでなく高血圧・脂質異常症などの予防・解消にも役立ちます。あまりきつくない程度の有酸素運動が推奨されているので、体力や体調などを見ながら、散歩や水泳などをコンスタントに行うことから始めてみましょう。ただし、動脈硬化で治療中の人は、急激に運動をすると血管や心臓に負担がかかる可能性があります。必ず医師に相談したうえで行うようにしてください。

食生活に気をつける

動物性脂肪を過剰摂取すると、血液中の悪玉コレステロールが増えます。悪玉コレステロール が血管内壁にとり込まれ酸化すると、粥状動脈硬化がさらに進行する恐れがあります。肉類(とくに脂肪分)を控え、野菜中心の食生活を心がけるようにしてください。野菜は脂質の酸化を防ぎ、塩分を排出し血圧を下げる作用があるといわれています。高血圧も動脈硬化の危険因子ですので、毎日の献立に野菜を積極的に取り入れるようにしましょう。

禁煙する

タバコに含まれる活性酸素は、悪玉コレステロールの酸化を促します。喫煙習慣のある人は、早めに禁煙に取り組むことをおすすめします。

おわりに:食生活と運動習慣を見直すことが動脈硬化や深刻な病気の予防につながる

動脈硬化には食生活や運動習慣が関係しているため、予防のためには生活習慣の見直しが大切になってきます。適度な運動を習慣化し、バランスの整った規則正しい野菜多めの食生活を心がけてください。ただし、階段を上がったり、少し走ったりしただけで息がきれる人は、無理をせず医師の指導を受けましょう。食生活の見直しについても、まずは医師の指導を受けることをおすすめします。

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