記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/22 記事改定日: 2020/6/3
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胸水(きょうすい)は、胸膜の間にある胸腔(きょうくう)に水がたまりすぎてしまった結果、息苦しさや胸が重い感じがするといった症状がみられる状態です。この記事では、胸水がたまる原因や肺がんで胸水がたまる原因について治療法をあわせて解説します。
肺や心臓といった胸にある臓器は、胸郭(きょうかく)と呼ばれる骨格構造の中にあります。胸郭は、背骨と胸骨(きょうこつ)、肋骨(ろっこつ)で構成されており、胸郭の内側と肺の表面は、それぞれ胸膜という膜に覆われています。
胸郭の内側を壁側胸膜(へきそくきょうまく)、肺を包んでいる膜を臓側胸膜(ぞうそくきょうまく)といいます。2つの胸膜の間には空間があり、この空間が胸腔(きょうくう)、そして、胸腔にたまる液体が胸水です。
胸水は健康な人でも少量存在していて、肺が呼吸のために膨らんだり縮んだりする運動をスムーズにする役割があると考えられています。通常は、壁側胸膜からつくられて臓側胸膜から再吸収されるというサイクルが安定しているため、一定量を超えることはありません。
しかし、心不全や肝硬変、肺炎、がんなどの病気が原因となり、胸水が異常に溜まってしまうことがあります。
胸水には、滲出性(しんしゅつせい)胸水と漏出性(ろうしゅつせい)胸水があります。
胸水がたまる原因には、心不全や肝硬変、肺炎、膠原病、がんなど、さまざまなものがあります。
肺がんの場合には「胸水をつくるタイプ」と「あまりつくらないタイプ」があり、「腺がん」とよばれる種類の肺がんが胸水を大量に作ります。
腺がんは、腺組織と呼ばれる分泌に関わる組織にできるがんで、肺だけではなく、胃、腸、肝臓、膵臓、胆のうといった消化器や、子宮体部、乳房、卵巣、前立腺などにできます。肺の腺がんは、肺腺がんと呼ばれます。
胸水がたまると、息苦しさや息切れといった呼吸症状や、胸が重苦しいといった症状が出ることがあります。また、何らかの感染によって肺炎も起こしやすくなります。病気がもとになっている胸水では、血液中のタンパク質が流れ出てしまうことで栄養状態の悪化も心配されます。
胸水の存在や原因を調べるには次のような検査を行う必要があります。
胸水の有無を調べるにはレントゲン検査やCT検査などの画像検査が必要です。レントゲン検査は簡便に行うことができますが、より詳しく肺の状態などを調べるにはCT検査が必要となります。
身体の炎症の程度などを調べるために血液検査を行うことがあります。血液検査の結果のみで胸水の原因を探る手掛かりとなります。また、肺がんなどがんによる胸水が疑われる場合は腫瘍マーカーを調べることも少なくありません。
身体の外側から針を刺して胸水を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。胸水の原因を確定するために必要な検査であり、がん細胞や細菌類の混入の有無を調べます。
胸水がたまったときは、胸水穿刺(きょうすいせんし)、胸腔ドレナージ、胸膜癒着術などの治療を行います。
胸水穿刺は、胸水が原因とされる症状が強くみられるときに用いられます。
胸水穿刺は細い針やチューブ(ドレーン)を胸に差し込んで胸水を抜き出す治療法で、外来やベッドサイドでも行うことができます。胸水を抜くだけではなく、胸水を検査することで胸水が起こっている原因を探るために行うこともあります。
何度も大量に繰り返す胸水には、チューブを胸に入れて継続して胸水を排出する胸腔ドレナージという治療が行われます。胸水は排出できれば良いわけではなく、胸水のコントロールを行いながら、並行して胸水が溜まる原因となった病気の治療を行います。
気胸などで何度も胸水貯留を繰り返す人や肺がんで他の治療法が行えない場合などには、胸膜癒着術という治療方法もあります。胸膜癒着術は、胸膜内に薬を入れて炎症を起こして胸膜をくっつけてしまう治療のことで、胸水のコントロールと症状の軽減を目的に行われます。
胸膜癒着術は治療ではありますが炎症が生じるため、発熱や痛みが起きたり、一時的に呼吸が苦しくなったりすることもあります。
胸水は、健康な人でも存在しており、本来であれば一定量を超えることはありません。しかし、肺がんや、心不全、肝硬変、肺炎などが原因となって異常にたまることがあります。胸水がたまると、息苦しさや息切れ、胸の圧迫感のほか、肺炎を引き起こす可能性もあります。
そのため、胸水の治療は、胸に針や管を刺して胸水を排出しながら、胸水の原因となる病気の治療も並行して行う必要があります。また、治療が難しい人では、胸膜癒着術という方法がとられることもあります。
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