肺がんで胸水がたまってしまうのはどんなとき?治療法は?

2019/2/22

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

胸水(きょうすい)は、胸膜の間にある胸腔(きょうくう)に水がたまりすぎてしまった結果、息苦しさや胸が重い感じがするといった症状がみられる状態です。この記事では、胸水がたまる原因となる病気を紹介したあと、肺がんで胸水がたまる原因や治療法を解説します。

胸水ってどんなもの

肺や心臓といった胸にある臓器は、胸郭(きょうかく)と呼ばれる骨格構造の中にあります。胸郭は、背骨と胸骨(きょうこつ)、肋骨(ろっこつ)で構成されており、胸郭の内側と肺の表面は、それぞれ胸膜という膜に覆われています。胸郭の内側を壁側胸膜(へきそくきょうまく)、肺を包んでいる膜を臓側胸膜(ぞうそくきょうまく)といいます。2つの胸膜の間には空間があり、この空間が胸腔(きょうくう)です。そして、胸腔にたまる液体が胸水です。

胸水は、健康な人でも少量存在していて、肺が呼吸のために膨らんだり縮んだりする運動をスムーズにする役割があると考えられています。通常は、壁側胸膜からつくられて臓側胸膜から再吸収されるというサイクルが安定しているため、一定量を超えることはありません。しかし、心不全肝硬変、肺炎、がんなどの病気が原因となり、胸水が異常に溜まってしまうことがあります。

胸水には、滲出性(しんしゅつせい)胸水と漏出性(ろうしゅつせい)胸水があります。滲出性胸水は、肺がんや肺炎などで起こります。胸膜に炎症が起こり、水分やタンパク質が胸腔に染み出しやすくなることで再吸収が間に合わず胸水がたまります。一方で、漏出性胸水は、心不全や肝硬変などで起こります。血管内の水分が増えて水圧が上昇したり、血液中のタンパク質濃度が低下したりすることで、胸水の再吸収がうまくいかなくなることで起こります。

肺がんで胸水がたまるのはどんなとき?

胸水がたまる原因には、心不全や肝硬変、肺炎、膠原病、がんなど、さまざまなものがあります。

肺がんの場合には、胸水をつくるタイプと、あまりつくらないタイプがあります。肺がんでは、「腺がん」とよばれる種類のがんが胸水を大量に作ります。腺がんは、腺組織と呼ばれる分泌に関わる組織にできるがんで、肺だけではなく、胃、腸、肝臓、膵臓、胆のうといった消化器や、子宮体部、乳房、卵巣、前立腺などにできます。肺の腺がんは、肺腺がんと呼ばれます。

胸水がたまると、息苦しさや息切れといった呼吸症状や、胸が重苦しいといった症状が出ることがあります。また、何らかの感染によって肺炎も起こしやすくなります。病気がもとになっている胸水では、血液中のタンパク質が流れ出てしまうことで栄養状態の悪化も心配されます。

胸水がたまったらどんな治療をする?

胸水が原因とされる症状が強くみられるときの治療法として胸水穿刺(きょうすいせんし)があります。胸水穿刺は細い針やチューブ(ドレーン)を胸に差し込んで胸水を抜き出す方法です。胸水穿刺は外来やベッドサイドでも行うことができます。胸水を抜くだけではなく、胸水を検査することで胸水が起こっている原因を探るために行うこともあります。

何度も大量に繰り返す胸水には、チューブを胸に入れて継続して胸水を排出する胸腔ドレナージという治療が行われます。胸水は排出できれば良いわけではなく、胸水のコントロールを行いながら、並行して胸水が溜まる原因となった病気の治療を行います。

また、気胸などで何度も胸水貯留を繰り返す人や、肺がんで他の治療法が行えない場合などに胸膜癒着術という治療方法もあります。胸膜内に薬を入れて炎症を起こして胸膜をくっつけてしまうことで、胸水のコントロールと症状の軽減を目的とします。胸膜癒着術は治療とはいえ、炎症が生じるため、発熱や痛みが起きたり、一時的に呼吸が苦しくなったりすることもあります。

おわりに:胸水は肺腺がんに多く穿刺、ドレナージ、胸膜癒着術などで治療する

胸水は、健康な人でも存在しており、本来であれば一定量を超えることはありません。しかし、肺がんや、心不全、肝硬変、肺炎などが原因となって異常にたまることがあります。胸水がたまると、息苦しさや息切れ、胸の圧迫感のほか、肺炎を引き起こす可能性もあります。

そのため、胸水の治療は、胸に針や管を刺して胸水を排出しながら、胸水の原因となる病気の治療も並行して行う必要があります。また、治療が難しい人では、胸膜癒着術という方法がとられることもあります。

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