記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/20 記事改定日: 2020/6/15
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肺の胸腔膜に水がたまってしまう「胸水」は、心不全で見られる症状のひとつです。心不全の胸水は、肺の右側と左側どちらにたまることが多いのでしょうか。胸水がたまるとあらわれる症状や治療法について解説していきます。
肺は、胸膜という薄い膜で覆われています。膜は2枚あり、膜の間のスペースを胸膜腔(きょうまくくう)といいます。この胸膜腔に水がたまっている状態や、溜まった液体そのものを胸水といいます。
健康な人でも極少量の胸水は溜まっているものですが、さまざまな疾患の影響で急激に胸水が増えることがあります。
原因のひとつである心不全は、心臓が全身に血液を送る役割が果たせなくなっている状態です。左側の心臓の働きが悪くなる「左心不全」と、右側の動きが悪くなる「右心不全」があります。
心臓には、左右それぞれに心房と心室という部屋が合計4つあります。右側の心臓は、全身から戻ってきた血液を肺へ送り出し、左側の心臓は肺で酸素を補給して戻ってきた血液を全身に送り出すポンプのような働きをしています。
心臓の働きが弱まると血液が全身に届ききらなくなり、他の臓器の働きも弱まっていきます。すると全身の水のバランスが崩れ、あちこちに水が溜まっていきます。
心不全では胸水のほか、肺に水が溜まったり(肺水腫)、腹部に水が溜まったり(腹水)、足のむくみが生じることがあります。身体の循環機能が低下することで、動悸や息切れといった症状が現れることもあります。
心不全による胸水は基本的には両側性ですが、片側だけということもあり、特に右側に多いとされています。
心不全で胸水がたまると、肺の動きに影響を与え次のような症状があらわれます。
痛みが出るタイミングには個人差があり、いつも痛みを感じる人もいれば、咳などによって一時的に痛みを感じる人もいます。
心不全で胸水が溜まったときには、まず第一に利尿薬が用いられます。利尿薬はその名の通り「尿を出やすくする薬」ですが、体内に溜まった余分な水分の排出を促す作用があるため、貯留した胸水の排出も期待することができるのです。
症状が軽度な場合は飲み薬を用い、重症な場合や飲み薬では効果が不十分な場合には点滴治療が行われます。
また、心不全によって衰弱し、低栄養状態となっている場合には血中蛋白が減少します。そのため、利尿薬の作用よりも水分を保持しようとする力が大きく働き、利尿薬が効きにくくなることがあります。そのような場合には、タンパク質の一種であるアルブミン製剤を投与して血中蛋白を保持し、利尿剤を併用する治療が行われることもあります。
胸水が溜まると息切れや呼吸困難感などが引き起こされるばかりでなく、さらに心臓に負担がかかることで心不全が悪化する…という悪循環に陥るケースも少なくありません。
そのため、心不全と診断された場合はできるだけ胸水が溜まらないような生活を送ることが大切です。
そのためには次のようなことに注意するようにしましょう。
胸水はさまざまな原因によって生じますが、心不全も原因のひとつです。心臓の機能が低下したことで体内の水分バランスが崩れ、胸部に水が溜まるようになります。
心不全が原因で胸水が生じた場合は、利尿剤や血液透析などの胸水の治療と並行し、心不全の原因疾患の治療を進めていく必要があります。息苦しさや胸の痛みなどの異変に気づいたら、早めに循環器内科などを受診しましょう。
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