記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/1/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ここ数年で、アイコス®やプルームテック®、グロー®などの加熱式タバコを吸っている人を見かける機会はぐんと増えたのではないでしょうか。ただ、紙巻きタバコと比べて臭いが少ないことなどを理由に、堂々と路上喫煙をしたり、喫煙所以外の場所で吸ってもよいのではと考える人もいたりなど、マナーの問題も取り沙汰されています。
以降では、加熱式タバコは喫煙所以外で吸っても大丈夫なものなのか、受動喫煙の問題点と併せてお話していきます。
アイコス®やプルームテック®、グロー®などの加熱式タバコがすっかり普及した現在。「煙が出ない」「臭くない」といった点から、喫煙所以外の場所――路上やレンタカー内、カフェの禁煙席などで吸っても良いのではと考える喫煙者の方もいるようですが、これってルール的にどうなんでしょうか。
まず路上喫煙については、各自治体によって条例が異なり、罰則や禁煙地域も変わっていきます。例えば東京都23区のうち、大田区や荒川区は紙巻きタバコのみならず、加熱式タバコや電子タバコ(VAPE®など)といった新型タバコ全般の路上喫煙を条例で禁じていますが、品川区や北区などは加熱式タバコのみ禁止、電子タバコについては対象外としており、さらに港区や中野区、練馬区などは条例で火のついたタバコのみを規制しているため、加熱式や電子タバコは対象外となっているのが現状です。
またレンタカー内での加熱式タバコの使用については、会社によって規定が多少異なるものの、喫煙車であれば喫煙はOK、禁煙車であれば喫煙禁止となっています。なお、加熱式タバコでの喫煙者の中には、「喫煙車は臭いからイヤ。禁煙車に乗りながら、ときどき吸いたい」という人もいるようですが、車内での喫煙が発覚した場合、休業補償料として2万円を請求するという規定を設けているところもあります。加熱式タバコだとしても、禁煙車で喫煙するのはやめましょう。
そして飲食店の禁煙席での加熱式タバコの使用ですが、まず大手のファミリーレストラン(デニーズ、ガスト、ジョナサン、サイゼリヤ、ロイヤルホスト)では、加熱式タバコを禁煙席で吸うことは禁じられています。またカフェのうち、タリーズでは禁煙席での加熱式タバコの使用は禁止、スターバックスでは室内は全面禁煙(店舗によってはテラス席のみ喫煙可)となっています。
さらにドトールでは、禁煙席での加熱タバコの使用の可否について明確なルールが決まっていない状態(各店舗の店長の裁量に任せる)でしたが、2019年1月15日に受動喫煙対策として、今後店舗を「完全禁煙」「紙巻きと電子タバコが吸える店」「電子タバコのみ吸える店」の3種類に分けることを発表したところです。
加熱式タバコは、タバコの葉を燃焼して煙を吸い込む紙巻きタバコとは違い、葉を加熱して水蒸気を吸い込むタイプのタバコなので、「煙が出ないから臭わない」「有害成分が大幅にカットされている」といったポイントを強みに、喫煙者の支持を集めています。これらの謳い文句は、「加熱式タバコは健康にやさしい」「副流煙も出ないから受動喫煙の心配がない」といったイメージにも直結しているようですが、果たして本当に受動喫煙のリスクはないのでしょうか。
この点については、各専門家が警鐘を鳴らしています。まず、加熱式タバコは紙巻きタバコと比べ、ニコチンなどの有害物質の量が少ないとされていますが、そもそもこれらの有害物質は少ない含有量でも健康に影響を与えることがわかっています。
また、「副流煙が出ないのだから、受動喫煙の心配はない」という主張については、加熱式タバコのエアロゾル(気体中に浮遊する微小な液体や固体の粒子)の中にもニコチンなどの有害物質が含まれること、加熱式タバコの喫煙者の呼気には紙巻きタバコと同じくらいのニコチンが含まれており、それが2~3m先まで拡散していること、そして最近の研究で水蒸気中の有害物質による受動喫煙が確認されたことなどから、これは不適切な主張といえます。
さらに、加熱式タバコで喫煙を続けている人のうち、急性好酸球性肺炎(白血球の一種・好酸球によって肺に炎症が引き起こされた状態。原因のひとつに喫煙がある)の患者が出たとの報告もされていることから、喫煙や受動喫煙のリスクは決して無視できるものではありません。
みなさんは「サードハンド・スモーキング」という言葉をご存知でしょうか。いわゆる受動喫煙は二次喫煙(セカンドハンド・スモーキング)と呼ばれる概念ですが、サードハンド・スモーキング―三次喫煙とは、タバコを消した後の残留物から有害物質を吸引することを意味します。
タバコの煙は、服や家具、壁紙、カーテンなど周囲のものに付着した後、空気中で再度遊離します。これを私たちは「タバコの臭い」として感知します。このタバコ臭にはさまざまな有害物質が含まれているので、少しでもタバコ臭がする場所にいれば、その間非喫煙者も有害物質を吸い込み続けることになります。
加熱式タバコは煙が見えにくく、臭いが少ないことが売りですが、喫煙後は見えない粒子が漂い、周囲のものに付着します。さらに臭いも少ないので、有害物質が近くに残っていてもそれに気づけず、非喫煙者の人が知らず知らずのうちに受動喫煙にさらされてしまう恐れがあるのです。
煙が出ず、臭いが少なく、有害物質もカットされているといわれる加熱式タバコ。従来の紙巻きタバコよりも健康に良いイメージがあり、吸っても周囲の迷惑にはならないと思ってしまう方も少なくないようですが、現時点でその有害性がいくつも報告されています。
非喫煙者からしてみれば、加熱式タバコもタバコに変わりありません。周囲への配慮を忘れず、マナーを守った喫煙を心がけましょう。
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