記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/2/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
突然発症し、全身への血流障害から死に至ることもある恐ろしい病気、大動脈解離。発症を防ぎ、命の危機に陥るのを予防するために、普段からできることはないのでしょうか。
今回は、大動脈解離を発症するメカニズムを踏まえて、その発症予防のために日ごろからできる食事・生活習慣の工夫について解説していきます。
心臓から全身へと向かう動脈につながり、ひと際太い動脈である大動脈が縦方向に裂けてしまう状態を「大動脈解離」といいます。
大動脈の血管壁は、高い血圧に耐えられるよう内側から内膜・中膜・外膜3層構造になっていますが、内膜が弱くなると誤って中膜の層に血液が流れ込むことがあります。心臓から流れ出た、勢いの強い血液が内膜と外膜の間に入り込むと、そのまま2層の膜の間を流れていき、大動脈を縦方向に引き裂いていってしまうのです。
大動脈の内幕に脆弱化や損傷が起こり、このような大動脈解離が起こる原因として、以下のようなことが考えられます。
前項で述べた通り、大動脈解離を発症する原因は人によって異なります。しかし、その大半は妊娠・外傷・血管や大動脈弁の疾患などではなく、高血圧による日常的な血管壁へのダメージであると考えられています。つまり、食事による高血圧予防が、同時に大動脈解離の発症予防にもつながる可能性があるのです。
ここからは、大動脈解離の予防法として、発症の一因となる高血圧を改善するために実践したい食生活の改善ポイントをご紹介します。
高血圧予防のための食事改善の基本は減塩です。日本人は、普通に食事をしているだけでも塩分を過剰摂取する傾向が強いので、日本高血圧学会が提唱する1日6g未満を目安に、塩分摂取量を減らせるよう努力しましょう。
できるだけ醤油やソースをかけて食事することを減らし、だしやレモン、ゆず、ごまなどの香味・風味を活かした薄味の食事に慣れていきましょう。
体内で余分な塩分を取り除いてくれるカリウム、これを補助するマグネシウム、高血圧を防いでくれるカルシウムなど、ミネラルに分類される栄養成分を積極的に摂りましょう。
具体的には、緑黄色野菜やバナナなどの果物、海藻類、豆類、乳製品、小魚などを中心に、栄養バランスの良い食事内容を心がけると効果的です。
高血圧が原因の大動脈解離を予防するには、食事とあわせて、運動や飲酒・喫煙、水分摂取や室温の管理など、生活習慣も変えていくとより効果的です。
以下に、高血圧予防のための生活習慣改善のポイントをまとめます。
ウォーキングや水中での散歩、サイクリングなど、ゆるやかな有酸素運動を週に3~4日以上行うと、血圧を下げる効果が期待できることがわかっています。
毎日30分以上の運動を習慣化するのが理想ですが、ご自身の体調にあわせて、無理なく気持ちよくできる範囲で習慣化していきましょう。
アルコールの飲みすぎや喫煙は、一時的に血圧を上げることがわかっています。これらが習慣化していると、慢性的な高血圧を招く原因にもなります。飲酒は眠くならない程度の量に抑え、喫煙は減煙・禁煙することを検討しましょう。
水分摂取量が血液の状態や流れを左右します。また、起床や入浴に伴う室温の急激な変化も、血圧に影響を及ぼすことが明らかになっています。水分は1時間にコップ1杯を目安にこまめに摂取しましょう。
また、起床や入浴のときに一気に体温と血圧が乱高下するのを防ぐため、エアコンなどでできるだけ室温を一定に保つようにしてください。
大動脈解離は、高血圧が一因となって発症する病気です。このため、日ごろから高血圧予防に効果的な食事・生活の習慣を実践することにより、大動脈解離もある程度は予防できると考えられています。大動脈解離は発症すると命の危機もある病気なので、日常生活を改めることで、日ごろから意識的に発症予防しましょう。