記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/14
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
何らかの原因によって血管に血栓ができてしまう病気を「血栓症」と呼んでいます。血管に血の塊ができてしまうことから、生活習慣が原因と考えられがちですが、ストレスによっても発症することがわかっています。この記事では、一般的な血栓症の原因を紹介しつつ、ストレスによって血栓ができてしまう理由も解説します。
「血栓症」とは、何らかの原因によってできた血栓が血管を詰まらせることによって生じる疾患の総称です。
血管内の血液は、血液を固める「凝固」と溶かす「線溶」という性質がバランスよく保たれることでスムーズに流れています。血栓は、血管が傷ついたり破れて出血が起きたときに、凝固の性質がそれを止めようと栓で塞ぐようにして作られる血のかたまりです。
この血栓が溶かされないまま血管に詰まると、脳梗塞や心筋梗塞など、命に関わる血栓症を引き起こします。血栓は、血管内膜の状態、血液の成分、血流の3つの要因の変化から発生し、次の3つのタイプがあります。
動脈硬化によって引き起こされるもので、高血圧や高血糖、脂質異常などにより血管の内膜にコレステロールなど脂肪物質が溜まり、それが何らかのきっかけで破れ、防御のために凝固作用が働いて血栓がつくられ梗塞が引き起こされます。
心房にけいれんのような不整脈などが起こることで、血流が乱れて血液が心室にスムーズに送られず、血栓ができやすくなります。この血栓が脳に飛ぶと脳梗塞を起こします。
静脈系に起こりやすいもので、エコノミークラス症候群などがよく知られています。同じ姿勢のまま動かなかったり、水分が不足して血液が粘り気のある状態になることで、足の血流が悪化して血栓ができ、それが肺に飛ぶことで肺梗塞を起こします。
血栓症は食生活と密接な関係がありますが、さらに肝臓の機能が低下することでも起こりやすくなります。
通常は腸から肝臓に運ばれて処理されるものに、腸内の細菌が排出した内毒素(菌体の細胞壁に存在する毒素で、菌体が崩壊すると遊離してくるもの)がありますが、これは血液を固まりやすくする酵素であるトロンビンを活性化させる性質を持っています。
肝炎や肝硬変、過度の飲酒による肝機能障害などによって内毒素の処理機能が低下し、トロンビンが活性化すると、内毒素がそのまま血中に入り込んで血栓症を起こすことになります。
血栓は、微小血栓とよばれる小さな血栓のもとが集まってできています。ストレスは、微小血栓を作ったり大きく育ててしまう要因のひとつで、トロンビンの活性化にも大きく影響しています。
これは、人類が怪我をしたらすぐに血を止めないと命に関わる環境にあった太古の時代から、恐怖を感じるような状況をいち早く察知し、血がすぐに固まる準備をするように進化したからと考えられています。恐怖だけでなく、興奮やストレスでも血液は固まりやすくなります。
なお、肥満や不整脈のある人は、心臓に血栓ができやすいことも知られています。
血栓症は食生活と密接な関係がありますが、それだけでなく、腸内細菌が排出した内毒素が血液が固まるのを促進する酵素を活性化させることも原因のひとつとされています。これには、ストレスや肝臓機能の低下が大きく影響しています。