血栓性静脈炎と深部静脈血栓症の違いとは?

2019/2/17

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

血栓性静脈炎とは、静脈内に血栓ができて炎症が起こる病気です。一見すると深部静脈血栓症と症状が似ていますが、これらの病気は同じものと捉えてよいのでしょうか。この記事では、血栓性静脈炎と深部静脈血栓症を比較しながら、症状や治療法を解説します。

血栓性静脈炎って?深部静脈血栓症との違いは?

血栓性静脈炎とは、表在している静脈内に血栓ができ、それに伴って炎症を引き起こす病気のことです。特に下肢の静脈に起こることが多いのが特徴です。炎症が先に起こり、二次的に血栓を形成します。

血栓性静脈炎の中でも、大腿静脈などの太い深部静脈につながる静脈に炎症が生じた場合は、上行性血栓性静脈炎といいます。上行性血栓性静脈炎の場合は心臓や肺に血栓となって移行する場合があります。この状態が深部静脈血栓症です。

深部静脈血栓症とは?

深部静脈血栓症とは、下肢および骨盤内などの深部静脈に血栓が生じた状態のことをいいます。寝たきりの状態が続いていることや悪性腫瘍、先天性もしくは後天性凝固異常などが原因で引き起こされます。

また、車中泊や飛行機に乗っているときなど、長時間にわたって同じ姿勢で引き起こされることから、エコノミークラス症候群と呼ばれることもあります。症状は下肢の腫脹(片足全体、あるいはふくらはぎが急に腫れ上がって痛みが出てくる状態)、圧痛、発赤などがみられます。症状は数日間かけてゆっくり進行することもあります。

深部静脈血栓症は、深部静脈で形成された血栓が肺の血管や脳の血管に遊離し、呼吸停止や脳梗塞を引き起こす塞栓症を起こす可能性もあります。重症化することが多いのも特徴です。

血栓性静脈炎と深部静脈血栓症では、治療法も異なる

血栓性静脈炎と深部静脈血栓症は同じ静脈に起こる疾患ですが、治療法は異なります。

血栓性静脈炎の場合、10日間ほどで自然に治癒する場合が多く、痛みがつらいなどという場合、対症療法として痛みを緩和するための鎮痛剤や湿布などの外用薬を使用します。また、血栓性静脈炎を形成する原因となった疾患の治療を並行して行います。

一方、深部静脈血栓症は血液をサラサラにする抗凝固剤が使用されます。重症の場合は、血栓溶解療法や下大静脈にフィルターを留置し、下肢からの深部静脈血栓をあらかじめキャッチする下大静脈フィルター、カテーテル的治療や外科的治療によって血栓を取り除く治療が行われます。このほか、弾性ストッキングを着用して足を圧迫することもあります。

症状が出たときの下肢の状態をみると、血栓性静脈炎のほうが深部静脈血栓症よりも症状が誇張して見られるため重症と考えられることもあります。しかし、致命的なのは深部静脈血栓症で、血栓が肺に遊離して肺塞栓症とならないよう、早急な治療が必要とされます。

おわりに:同じ静脈の疾患でも症状や重症度は異なる!おかしいと思ったら医療機関へ

血栓性静脈炎と深部静脈血栓症は同じ静脈に起こる疾患ですが、内容は異なります。血栓性静脈炎は静脈炎が先に起こり、あとから血栓が形成されて表在する静脈に起こる疾患です。一方、深部静脈血栓症は深部の静脈に血栓が形成され、血栓が形成されてから炎症が起こります。

症状、治療法も同じ静脈に起こる疾患ですが異なります。症状は血栓性静脈炎のほうが重症に見えますが、深部静脈血栓症は命にかかわる疾患である肺塞栓症へと移行する可能性があります。いずれにせよ、おかしいと感じたら放置せずに医療機関へ相談しましょう。

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