冠攣縮性狭心症の可能性がある症状は?発症した場合の死亡率は?

2019/4/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

日本人の主な死因のひとつが「心疾患」です。なかでも「冠攣縮性狭心症」は突然死のリスクを持つ恐ろしい病気であることをご存知ですか? この記事では、冠攣縮性狭心症の概要や危険な兆候の例などを紹介します。

冠攣縮性狭心症とは

冠攣縮性狭心症とは、心臓で発生する虚血性心疾患の一種です。

虚血性心疾患
心臓に血液を送る役割を果たす「冠動脈」に異常が生じて血液が不足し、酸素や栄養が供給されなくなる病気(心筋虚血)。心臓を流れる冠動脈が何らかの原因で痙攣を起こして収縮してしまい、冠動脈の一部で血液が流れにくくなったり血流が阻害される状態で、心筋梗塞と狭心症を発症しやすい。

一般的な狭心症は、動脈硬化が原因の場合が多いのが特徴です。しかし、冠攣縮性狭心症はそれらの狭心症とは原因が異なります。

冠攣縮性狭心症の死亡率は高い?

虚血性心疾患は日本人の主な死因として知られ、特に心筋梗塞と冠攣縮性狭心症は突然死のリスクを持ちます。発作時における死亡率が心筋梗塞では30~40%、冠攣縮性狭心症では16%です。心筋梗塞と比べると低い数字に見えますが、安心していい数字ではありません。冠攣縮性狭心症では重度の不整脈を併発することがあり、処置が遅れると突然死の可能性が上昇します。

冠攣縮性狭心症が疑われる症状は?

冠攣縮性狭心症の代表的な症状は強い胸の痛みです。痛みが発生する範囲は広いケースもみられ、みぞおちや背中、肩、首、後頭部、歯に痛みを感じる人もいます。肩こりや虫歯と間違えられることもあり、痛みによって冠攣縮性狭心症だと自己診断をするのが難しいといえます。胸痛など冠攣縮性狭心症であらわれる自覚症状を下記に紹介します。

  • 胸または胸を中心とした範囲に起きる強い痛み
  • 胸の圧迫感
  • 胸が締め付けられるような感覚
  • 吐き気や嘔吐
  • 息苦しさ
  • 冷や汗
  • 意図しない排便
  • 失神など意識障害
  • 安静に(リラックス)していても動悸や息切れが起こる

冠攣縮性狭心症は夜間や早朝、就寝中に発作が発症する(安静時狭心症)傾向があります。動脈硬化を原因とする狭心症は日中に体を動かしているときに発生(労作時狭心症)しやすく、症状は5分ほどとされています。対して冠攣縮性狭心症では胸の痛みが狭心症よりも強く、数分~30分ほど症状が続きます。

狭心症
  • 労作時に発生する
  • 安静にすると5分ほどで症状が治まる
  • 主な原因は動脈硬化によってできた血管内の瘤
冠攣縮性狭心症
  • 安静時に発生する
  • 5分~30分ほど症状が続く
  • 主な原因は冠動脈の痙攣によって血管が細くなること

夜や朝に体を動かしていない状況で胸の痛みや圧迫感などの症状を感じたら、冠攣縮性狭心症の発作かもしれません。すぐに病院を受診しましょう。

冠攣縮性狭心症になりやすい人は?

冠攣縮性狭心症は、女性と比べて男性の発症数が多い病気です。リスク因子の例を下記に挙げますので、当てはまる項目が多い人は注意してください。

  • 喫煙
  • 睡眠を十分にとれていない
  • 疲れの蓄積、過労
  • ストレス
  • アルコールの摂り過ぎ
  • 血圧の乱れ

冠攣縮性狭心症の発作を発症すると、最悪の場合死に至るため予防が肝心です。自分でできる対策は、リスク因子を低下させることです。冠動脈の状態を健康に保つように心がけましょう。特に、喫煙は血管にダメージを与えるので禁煙を目指しましょう。不規則な生活や働きすぎは体に負担をかけます。食事や睡眠をしっかりとり、体を休ませてください。

冠攣縮性狭心症の治療

冠攣縮性狭心症と診断されたら服薬治療を始めます。硝酸薬やカルシウム拮抗薬(血管拡張薬)などで、冠動脈の収縮を予防します。狭心症の既往歴がある人は、ニトログリセリンの舌下錠やスプレーを持ち歩くと、外出先での急な発作時の応急処置になります。

ただし薬の飲み忘れや、症状が治まったからといって、自己判断で服薬を中止することは絶対にやめてください。症状の悪化や突然死を招くおそれがあります。医師の指示に従い、正しい用法・用量を守るようにしましょう。

おわりに:朝や夜、安静時に起こる胸の痛みや違和感に要注意!

冠攣縮性狭心症は、朝や夜、就寝中に起こる可能性が高い病気です。特に体を動かしているわけではないのに胸の痛みや圧迫感などを感じたら、放置せずに病院を受診してください。そのままにしておくと、突然死に至る可能性があります。生活習慣を見直してリスクを下げ、冠攣縮性狭心症を予防しましょう。

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