記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/5/16
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脳出血(脳内出血)は脳梗塞やくも膜下出血と共に、「脳卒中」として知られている病気の1つです。この脳出血と診断が付いた場合は、内科的治療を基本とし、必要に応じて、外科的治療を行います。今回は脳出血の基本を説明した上で、「どのような治療が行われるのか」について詳しく解説します。
脳出血(脳内出血)とは、脳小動脈といった脳の血管が破れて脳内出血を起こす病気です。脳内にあふれ出た血液は、血液の塊(血腫)となって、脳の細胞を圧迫したり、壊したりします。その結果、脳の機能にさまざまな障害を引き起こします。この障害については、後述の「脳出血を発症しやすいのはどのあたり?」にて詳しく解説いたします。
厚生労働省の「平成26年患者調査の概況」によると、脳血管疾患の患者数は117.9万人となっています。一般的に脳出血の割合は20%程度と言われているので、患者さんは23万人程度いると考えられます。
また、厚生労働省の「平成27年人口動態統計の概況」によれば死亡者数は約3.2万人となっています。脳出血の患者数は近年減少傾向にあるものの、発症すると命に関わる可能性もあるため、注意が必要な病気です。
脳出血には大きく外傷性と非外傷性(突発性)があり、非外傷性脳出血は「出血源が明らかなもの(症候性)」と「出血源が不明なもの(無症候性/原発性)」に分類できます。無症候性脳出血は原因不明の場合もありますが、多くは高血圧が原因となっています。なお、高血圧性脳出血は全脳出血のうち約60%を占め、現状、最も多い原因となっています。
「なぜ高血圧が脳出血を引き起こすのか」と言うと、それは高血圧が脳の血管に動脈硬化を起こすからです。動脈硬化とは、血管が硬くもろくなった状態のことで、詰まったり、裂けたりしやすいという特徴があります。そして、そのまま動脈硬化が進行すると、やがて血管の一部に裂け目ができ、そこに圧力が加わることで脳出血を引き起こしてしまうのです。
脳出血の主な症状には、頭痛、吐き気、おう吐、片麻痺、感覚障害などがありますが、これらは出血した部位や出血量などによって異なります。この出血部位はある程度決まっているので、以下にそれぞれの割合と症状をご紹介いたします。
このようにさまざまな症状がありますが、必ずしも全ての症状がみられる訳ではありません。そしてほとんどの場合、脳出血の症状は前触れもなく突然起こります。もし急にこれらの症状が現れ、脳出血などの病気が疑われる場合はすぐに救急車を呼んでください。
脳出血と診断された場合、まずは脳内の出血を減らすために降圧薬を使用します。「具体的にどのくらい血圧を下げると良いのか」ははっきりとは分かっていませんが、最近では収縮期血圧140mmHg未満を目標に血圧を下げることが多くなっています。その際、迅速に血圧を下げる必要があるため、ニカルジピンといった点滴薬などが使われます。
脳出血によって腫れやむくみが生じた場合、頭蓋内圧が高くなって正常な脳組織を圧迫してしまいます。そのため、腫れやむくみを解消するための薬を使用する場合があります。
また、脳出血によって呼吸状態が悪化している場合は、人工呼吸器を使用することもあります。その他にも、脳出血に伴う胃潰瘍、肺炎、深部静脈血栓症の予防や治療も行われます。このように脳出血の治療では血圧のコントロールに加え、全身管理なども実施されます。
前項の「脳出血の治療は血圧コントロールから」で紹介した治療などを行っても脳出血の改善が難しかったり、脳出血の症状が悪化したりする場合は手術を行います。主な手術に、「開頭血腫除去術」と「定位血腫除去術」などがあります。
開頭血腫除去術は、開頭(頭蓋骨を除去すること)した上で脳内の血腫を取り除く治療法です。こちらの治療は緊急性が高く、救命が必要な場合に行われます。血腫を取り除くことで脳組織への圧迫を解消でき、脳内の腫れやむくみを軽減することが期待できます。
内視鏡下血腫除去術は、小開頭の上、内視鏡を使用して脳内の血液を取り除く治療法です。この治療は開頭血腫除去術でなくても対応できる場合などに行われます。開頭血腫除去術よりも負担が少ないので、病状次第ではこの治療法が選択される場合もあります。
定位血腫除去術は、CTを使って出血の位置を確認しながら細い針を刺し、脳内の血腫を取り除く治療法です。この治療は脳深部の出血などを取り除くために行われます。血腫が周辺脳組織を圧迫している場合、この治療によって症状緩和や機能改善を目指すことができます。
脳卒中は1960年代までは非常に多い病気でしたが、1970年からは減少傾向にあります。この理由の1つは、脳出血の発症に「高血圧が関係している」と分かり、高血圧治療の重視されるようになったからです。そのため、もし健康診断などで「血圧が高い」と指摘を受けた際は、早めにかかりつけ医や内科、循環器内科などを受診すると良いでしょう。