血管内に血の塊(血栓)ができると、なんらかのきっかけで血管に詰まってしまい、脳梗塞や心筋梗塞、エコノミークラス症候群といった病気を引き起こす恐れがあります。こうした病気を防ぐには血栓をなくす治療が必要となりますが、具体的にどのような方法で行われるのでしょうか。
血栓症の治療方法は?
血栓症は、血管内にできた血の塊が、突然血管を詰まらせてしまう病気の総称です。血栓症には、動脈に血栓ができる動脈血栓症と、静脈に血栓ができる静脈血栓症があります。動脈血栓症として脳梗塞や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症が、静脈硬化症としては肺塞栓や深部静脈血栓症があります。
血栓によって血流が止まってしまうと、重要な臓器に血流がいかなくなり、後遺症が残ったり命を落としたりすることがあります。そのため、血栓ができるのを防ぐための治療法(抗血栓療法)が行われます。
抗血栓療法には、以下の3種類があります。
- 抗血小板療法
- 血小板は血液成分のひとつで、血管に傷がついたときに、傷口に集まって出血を止める働きをします。血小板が少なかったり、機能に異常があったりすると出血しやすくなる反面、血小板が多すぎると血栓ができやすくなります。抗血小板療法は血小板の働きを抑えることで、血栓ができにくくする治療です。動脈血栓症の予防に用いられます。
- 抗凝固療法
- 血液が固まる作用は、血小板だけが担っているわけではありません。血液中には、血液を固めるための複数のタンパク質やカルシウムがあります。抗凝固療法では血液の凝固の働きを抑え、血栓ができることを予防します。主に静脈血栓症の予防に用いられます。
- 線溶療法
- 血栓を溶かす薬を血管内に注入することで、できてしまった血栓を溶かして血流を回復させる治療です。
血栓症の治療で使われる薬は?
血栓症の治療は目的に応じて異なる薬が使われます。代表的な薬として以下のようなものがあります。
- アスピリン
- 抗血小板療法で使われる薬です。主に、脳梗塞や心筋梗塞、末梢動脈血栓症といった動脈にできる血栓の予防に使われます。
- ワルファリン(ワーファリン)
- 抗凝固療法で使われる薬です。肺塞栓や、深部静脈血栓症といった静脈にできる血栓の予防に使われます。
- t-PA
- できてしまった血栓を溶かすために使われる薬です。脳梗塞の治療で用いられます。
血栓症の薬を服用している間の注意点は?
治療に用いられる薬は安全性が高いことが証明されてはいますが、リスクがゼロというわけではありません。抗血栓療法で用いられる薬にも注意点があります。
- アスピリン
- アスピリンの副作用では、消化管に潰瘍や出血がみられたりすることがあります。また、アスピリンぜんそくも注意が必要です。すでに、ぜんそくや消化管の病気になったことがある人は、アスピリンを飲むことで悪化することがあります。心当たりのある方は薬を処方してもらう際に主治医に伝えてください。
- ワルファリン(ワーファリン)
- ワルファリンのもっとも多い副作用として出血があります。傷口からの出血量が増えたり、血便や血尿が起こったりすることがあります。女性の場合は経血量が増えて貧血になり、めまいや立ちくらみといった症状が出てくることもあります。また、内蔵や頭蓋内など、自分では気づきにくいところから出血することもあり、その場合は重大な危険につながることもあります。
- ワルファリンは、薬の飲み合わせに注意する必要がある、という特徴もあります。飲み合わせによって薬の作用が弱まることもあれば、作用が強くなりすぎて出血が起こることもあるからです。したがって、医療機関を受診する際にはお薬手帳を持参するなど、今服用中の薬の有無を伝えることが大切です。
- t-PA
- t−PAは脳梗塞の治療で用いられる薬ですが、症状があらわれてから4時間半以内に使用する必要があります。そのため、もし病院への到着が4時間半以上かかった場合は使用できない可能性があります。また、過去に脳出血を起こしたことがある方や、高血圧や血液検査に異常がある方など、t-PAを使うことで脳出血のリスクが高まる判断される場合にも使用できません。
おわりに:血栓症の治療薬は種類ごとに注意すべきポイントが変わる
血栓症は血管内にできた血の塊が血管を詰まらせてしまう病気です。発症すると脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症といった病気につながります。そのため、血栓症を予防したり、早期に治療を開始するための抗血栓療法が行われています。ただ、治療薬の中には飲み合わせに気をつけたほうがよいものもあります。もし、血栓症の疑いがあって医療機関を受診するときは、念のため薬の履歴がわかるものも持参し、もれなく医師に伝えられるようにしておきましょう。
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