記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/4/4
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ここ数年、薬剤耐性を持つ細菌やウイルスが増えているといわれています。薬剤耐性を持った細菌・ウイルスが増えると、使用できる抗生物質・抗ウイルス薬が限られてしまうため、なるべく耐性菌は増やしたくないものです。この記事では、薬剤耐性を持つ細菌・ウイルスが生まれてしまう背景を中心に解説します。
近年、耐性菌が増えているといわれています。その原因として、もともと抗生物質に耐性を持っている細菌だった場合と、細菌が徐々に耐性を持ってしまった場合とが考えられます。
もともと抗生物質に対する耐性を持っている細菌の場合、抗生物質を使用すると、耐性菌が体内で増殖してしまう可能性があります。また、細菌が徐々に耐性を持ってしまう場合として、同じ種類の抗生物質を繰り返し、もしくは長期間服用していることが原因となると考えられています。
耐性菌は、偏った抗生物質の使用や長期間にわたる服用によって生み出されます。また、感染症が完全に落ち着く前に服用をやめたり、細菌に対する効果を期待できないくらいの量しか服用していなかったりすることも、耐性菌が生まれてしまう原因となります。
そもそも細菌は生物の一種です。そのため、自然界の中で生き延びるために、環境に合わせて細菌自身が自分の構造を変化させていきます。抗生物質という自分をやっつけるための薬がやってきたら、その薬から身を守るために自分の構造を変化させます。これが細菌が耐性化する仕組みです。
細菌が耐性化する例として、外膜変化といって自身を覆っている膜を変化させて薬の流入を防ぐ方法や、排出ポンプと言って細菌内に入ってきた毒を外に汲み出してしまう方法、DNAやRNAを変化させて抗生物質の作用点を変えたり化学反応で分解したりといった方法があります。
ここまでは抗生物質に対する薬剤耐性菌についてご紹介しましたが、インフルエンザウイルスにも薬剤性を持つウイルスが存在します。そのメカニズムは、前述したようにDNAやRNAを変化させて薬剤耐性となります。
自分のかかったインフルエンザウイルスが薬剤耐性かどうかは特別な検査が必要となるため、街の病院ではなく、各地区の地方衛生研究所・国立感染症研究所しか検査できません。しかし、仮に薬剤耐性を持っていたとしても抗インフルエンザ薬が全く効かないということではないので、治療に関しては医師の指示に従うように促し、疑問点などがあるときは必ず担当医に確認するようにしてください。
耐性菌や耐性ウイルスが生まれてしまう一番の原因は、抗生物質を適切に使っていないことにあります。処方された抗生物質はきちんと服用するのはもちろん、むやみに抗生物質の処方を医師に頼んだりしないようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。