記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
もしも外出先で知らない人や身近な人が突然倒れたとき、どんな対応をしてあげればよいのでしょうか。今回は、そのような場面で役に立つ心肺蘇生法をご紹介します。
そばにいる人が倒れたとき、救急車を呼んでから到着するまでの時間は全国平均で約6分かかるといわれています。この「6分」が命を左右するといっても過言ではありません。これは心臓の停止後に50%が約3分経過後に死亡、呼吸の停止後に50%が約10分経過後に死亡すると考えられているためです。
救急車を呼んでから到着するまで何もしないで待っている場合には格段に救命率が低くなるため、心肺蘇生などの応急手当をしっかりと行うことが大切なのです。
心肺蘇生は、主に以下の手順で行います。
傷病者に大きな声で「大丈夫ですか」などと声をかけ、軽く肩をたたいて反応があるかどうかをみます。この時、目を開けるか、なんらかの返事などがあれば、反応ありとみなします。
声をかけても反応がない場合には、周りに傷病者がいることを伝えて助けを求めます。協力者がきたら、119番通報とAEDの手配をお願いします。もし周りに誰もいない場合には、自分で119番通報を行いましょう。
心停止をしていないか、普段通りの呼吸をしているかを確認します。自分の顔を傷病者の胸に向け、傷病者の口と鼻に頬を近づけ、胸と腹部の動きの確認と息の音を聞きましょう。10秒以上かけずに行うのがポイントです。途切れ途切れに起きるような呼吸の場合には、呼吸なしと判断します。
傷病者を上向きで寝かせ、胸の真ん中に片方の手の付け根を置き、もう片方の手をその手の上に重ねます。両手の指を組むと、より力を集中させて圧迫できるでしょう。両肘を伸ばして垂直に体重をかけ、大人の場合には約5cmほど胸を押し下げます。1分間あたり100~120回ほどのテンポを刻み、30回連続して続けましょう。
片方の手を額に当てて、もう片方の手の人差し指と中指を顎先に当てます。この状態で下顎を引き上げるようにし、頭を後ろに傾けます。頸椎損傷などが疑われるときは、特に注意を払い、静かに行いましょう。
気道を確保した状態で、親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみます。自分の口を大きく開け、傷病者の口を覆い、傷病者の胸が上がるのがわかるくらいの吹き込みを約1秒かけて行いましょう。直後に呼吸の回復がみられない場合には、すぐにまた胸骨圧迫をします。
胸骨圧迫を30回、人工呼吸を2回繰り返します。AEDを使わない場合には、心肺蘇生を絶えず続けることが大切です。効率的に心肺蘇生を行うために、胸骨圧迫と人工呼吸の両方を実施しましょう。ただし、人工呼吸をする技術をもたないなどの場合には、胸骨圧迫だけで構いません。
傷病者の命を救うためには、まず応急手当の正しい知識と技術をもつことが大切です。近くの消防本部や消防署では、一般の人向けに救命講座を実施しています。いざというときのためにしっかりと学び、自信をもって心肺蘇生ができるようにしておきましょう。また他にも、消防庁ではWEB講座も実施しています。救命講座に行く時間がもてないという場合には、ネット環境があればいつでも受講することができますので、ぜひ活用してみてください。
子供に心肺蘇生を行う場合には、主に以下のような注意点があります。また大人と比較して、溺水や窒息などで起きる心停止の割合が多いため、人工呼吸がより重要視されています。
首がやわらかいため、後方に傾けすぎないようにしましょう。
子供は大人に比べて肺の容量が小さいと考えられます。息を吹き込む量の目安は、子供の胸が上がるのが確認できる程度にしましょう。
圧迫の加減は、幼児の場合には片手か両手で胸が約1/3くらい下がる程度、乳児の場合には中指と薬指で胸が約1/3くらい下がる程度です。圧迫のテンポは大人と変わりません。
心肺蘇生を行う上では、主に以下のような注意点が考えられます。
善意で行った場合に万が一何か起きたとしても、重大な過失や故意がなければ訴えられることはないといわれています。もし心肺蘇生法についてあまり自信がない場合でも、とにかく怖がらずにやってみましょう。
人工呼吸には抵抗があるという場合は、胸骨圧迫だけでも行いましょう。血液を循環させることで、命が助かる可能性が高くなります。
交通事故などで出血がみられる場合、病気に感染するのを防ぐために血液には触れないようにしましょう。ビニール袋を手にかぶせるなどの対策をしてください。
道路の真ん中や落下物の危険がある場所などでの救命は、自分も命の危険にさらされる恐れがあります。必ず安全な場所に移動してから、応急手当を行うようにしましょう。
心肺蘇生法は今すぐ必要としなくても、いつどこで役に立つかはわかりません。どのような場面でも対応できるように、正しい知識と技術をもっておきましょう。
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