記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/12/28 記事改定日: 2020/9/4
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓マッサージは、水中レジャーや運転免許講習などで訓練を実施していたり、救命措置として消防庁や日本赤十字、AEDメーカーなどが講習会を行っています。しかし実際、心臓マッサージは実際に何回ぐらいするものなのでしょうか?また、AEDを使うタイミングはいつなのでしょうか?
心臓マッサージ(胸骨圧迫)とは、何らかの原因で心臓が停止してしまった人に対し、その動かない心臓の代わりにマッサージによって全身に血液を送り込む方法です。臓器が酸素不足で動かなくなったり障害されたりすることを防ぐとともに、心臓の拍動を再開させて救命を試みます。
心臓マッサージは、1分間に約100回というかなり速いテンポで行うことが必要不可欠です。疲れて回数が少なくなりそうなときは、すぐに周りの人と交代してもらいましょう。目安は1〜2分、または5セット程度です。人工呼吸は訓練を受けた人がする場合は有効ですが、訓練を受けていない人は心臓マッサージのみを行いましょう。
最近の研究では、成人に対して一般の人が心臓マッサージを行う場合、心臓マッサージと人工呼吸の両方を行ったときの救命率よりも、心臓マッサージだけを行ったときの救命率の方が同じ、またはやや高いということがわかっています。また、心臓マッサージによって心室の細胞が刺激されて活性化し、AEDが効きやすくなるということがわかっています。
心臓マッサージのやり方は、以下の通りです。
まず、傷病者を仰向けにする際は、その後にテンポよく圧迫して戻すために、柔らかい場所ではなく必ず硬い床に寝かせましょう。胸の真ん中に手を当てて腕を垂直に伸ばしたら、組んだ手の上に肩が来ているかどうかよく確認しましょう。体重をかけて圧迫して戻す際に、まっすぐに力を加えて戻す、というテンポと動きを意識して行いましょう。
圧迫時、手のひら全体を当てたり指先を曲げたりして行うことは、肋骨を損傷する原因にもなりうるため大変危険です。必ず手のひら基部だけを胸に当て、力をその部位にだけ集中させましょう。確実に力を手のひら基部に集中させるために、組んだ手の上に来ている方の手の指で下の手の指をぐっと持ち上げながら圧迫すると良いでしょう。
また、傷病者が子供のときは、成人と多少圧迫の方法が変わります。以下の表を参考にしてください。
手法 | 成人(8歳以上) | 小児(1〜8歳未満) | 乳児(1歳未満) |
---|---|---|---|
圧迫の位置 | 両乳頭を結ぶ線の真ん中
(あるいは胸骨の下半分) |
両乳頭を結ぶ線の真ん中
(あるいは胸骨の下半分) |
両乳頭を結ぶ線の真ん中よりも少し足側 |
圧迫の方法 | 手を組み、両手で行う | 手を組み、両手で行う
(体格により片手でも良い) |
2本指で行う |
圧迫の深さ | 4〜5cm程度 | 胸の厚みの1/3程度 | 胸の厚みの1/3程度 |
AEDとは、日本語名で「自動体外式除細動器」といい、心臓が痙攣して心室細動という状態に陥り血液を流すポンプの機能を失ったとき、電気ショックを与えて正常なリズムを取り戻させるための医療器具です。
2004年7月から、医療関係者ではない一般市民でもAEDを使用できるようになったため、病院や診療所、救急車などの医療機関にはもちろんのこと、空港や駅・スポーツクラブ・学校・公共施設・企業など、人が多く集まる場所を中心に数多く設置されるようになりました。
「心室細動」とは、心臓の4つの上の部屋のうち上部の「心室」が急に小刻みに震えだし、全身に血液を送り出せない状態になってしまう不整脈の一種です。通常、心臓の拍動は体内で規則的な電気刺激が起こることによって一定のリズムを刻んでいるのですが、その刺激に何らかの異常が起こってリズムが崩れると、心臓の筋肉が無秩序に収縮を繰り返してしまうのです。
AEDは、この状態に電気ショックを与えて治め、心臓の拍動を元に戻すための医療器具です。操作方法を音声でガイドしてくれるため、一般市民でも必要な場合は簡単に使用することができます。また、心臓の動きを自動で解析し、電気ショックを与えるかどうかの判断も行ってくれます。ですから、本当に電気ショックが必要な人にだけ電気ショックを流すことができます。
AEDに対するよくある誤解として、「静止した状態の心臓に電気ショックを与えて拍動を再開させる」器具であるというものがありますが、これは間違いです。
AEDは「異常な拍動を刻んでいる心臓に対して一時的に心臓を静止させ、正常な拍動の再開を促す」ための医療器具です。そのため、心臓が静止している人にはまずはAEDではなく、心臓マッサージを行いましょう。
AEDの使用手順は、以下の通りです。基本的にはAEDの音声メッセージに従って救命を行っていきます。
傷病者の胸にAEDの除細動パッドを貼るとき、体が汗などで濡れていたり、体毛が濃くて貼りづらかったりする場合はよく拭き取ったり、体毛を除去してからパッドを貼りつけましょう。また、パッドを貼りつけてから電気ショックが終わるまでの間は、感電を防ぐため操作する人以外はその場から離れましょう。
AEDは小児にも使用することができます。
一般的なAEDには電気ショックのエネルギー量を調節できるスイッチがありますので、「小児」または「未就学児」といったスイッチに切り替えましょう。また、心臓の動きを感知する電極パッドは小児用を使用します。
なお、小児でも小学生以上であれば大人と同じエネルギー量でAEDを使用することができます。また、エネルギー量が調節できないAEDの場合は大人用の設定のまま使用して問題ないとされています。
AEDが電気ショックは不要と判断した場合には、ただちに心臓マッサージを再開しましょう。傷病者の意識が回復するか、救急隊員が到着するまで、心臓マッサージを継続することが大切です。
また、電気ショックが不要と判断した場合でもAEDのパッドは取り外さず、貼りつけたままにしておきましょう。
心臓マッサージは、1分間に約100回という、成人の安静時の拍動よりも非常に速い速度で行います。これを救急隊員が到着するまで1人の人がやり続けるのは大変ですので、周囲の人と連携して行いましょう。AEDが到着したらただちに心臓マッサージを中断し、AEDを装着します。もしものときに備えて、人命救助の方法を覚えておくと安心です。
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