薬の影響で黄疸や発疹が…。薬剤性肝障害ってどんな病気?

2019/4/10

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肝臓では食べ物に含まれる成分の貯蔵や分解が行われています。体調不良で飲んだ薬の成分も、肝臓を通って分解されて効果を発揮します。ところが薬は副作用をもたらすこともありますので、「薬剤性肝障害」という異変を招くこともあるのです。

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薬剤性肝障害とは

肝臓は、食べ物や飲み物に含まれる成分を貯蔵したり、化学変化させたりしています。また、人が生きていく上で必要な物質を生成したり、有害な物質を中和して体外へ排出を促す働きも持っています。このように肝臓は代謝を司りますので、体内に吸収された成分の影響は肝臓にあらわれやすく、薬の成分が肝臓に負担をかけて肝障害を引き起こすことがあります。医師に処方された薬だけでなく、市販薬やサプリメントでも肝機能障害があらわれた例が報告されています。

薬剤性肝障害を招く可能性のある薬の代表例

  • 消炎鎮痛薬
  • 抗がん剤
  • 抗生物質
  • 漢方薬
  • 総合感冒薬(風邪薬)

薬剤性肝障害を発症する原因は?

薬剤性肝障害の原因には、大きく分けて「中毒性・アレルギー性・異常代謝性」があります。

中毒性
飲んだ薬または体内で薬が分解されて産生した物質が、肝臓に負担を与えた状態をいいます。症状は薬を飲み始めてすぐには出ず、薬を長期間飲み続けていると発症します。一部の消炎鎮痛薬や抗がん剤が原因と考えられています。
アレルギー性
特定の薬物に対して起こるアレルギー反応によって肝障害が引き起こされます。薬を飲み始めて数週間以内に症状があらわれます。すべての薬がアレルギー性肝障害を引き起こす可能性を持ちますが、特に抗生物質に要注意です。
異常代謝性
遺伝的な要因を持っている人は、特定の薬を体内で分解することができず代謝がうまく行われません。すると肝臓に大きな負担がかかり、肝障害を引き起こします。症状があらわれる時期は個人差や薬によって大きく異なり、薬を飲み始めて1週間~1年以上でなんらかの症状がみられます。一部の抗結核薬や抗てんかん薬が原因として挙げられます。

こんな症状が出たら病院で診てもらおう

薬剤性肝障害を発症すると、下記のような症状があらわれます。

  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 発熱
  • 黄疸
  • 発疹
  • 吐き気や嘔吐
  • かゆみ

風邪などの症状と似ていますが、何らかの薬を服用している間にこれらの異変が突然あらわれたり、なかなか治まらずに長引くなど気になる症状があらわれたらすぐに医師や薬剤師に相談してください。早期発見・早期対応が重要です。診察では飲んでいる薬について、種類、服用期間、症状があらわれた時期、症状など詳細を伝えましょう。

薬剤性肝障害かもしれないからといって、自己判断で薬の使用を中止することは大きなリスクを伴います。「おかしいな」と感じたら速やかに医療機関を受診してください。

医師の診断のもと薬剤性肝障害とわかったら、原因となる薬の使用を中止し症状によって「栄養療法」や「薬物療法」がとられます。

栄養療法
黄疸など重い肝障害がみられた場合、入院と食事で肝機能の回復を図ります。低たんぱく・低脂肪の食事内容で、肝臓の負担を減らします。
薬物療法
肝臓の細胞の安定化や胆汁の排出を促す薬を使用します。

薬剤性肝障害を予防するためにできることは?

肝臓は体にとって重要な働きを持つ臓器ですから、早期発見・早期治療が必要です。薬剤性肝障害を防ぐために、薬を飲む前、服薬中、服薬治療後の期間で気をつけたいポイントがあります。

薬を飲む前のポイント

  • 処方された薬の説明を医師や薬剤師からきちんと聞いておく
  • 持病がある人、アレルギー体質の人、すでに使用している薬がある人は医師に伝える
  • 市販の健康食品、サプリメント、漢方を使用していたらその種類と量を伝える
  • 処方された薬や市販薬の記録をとるための準備をする(「お薬手帳」など)

特に、抗がん剤、糖尿病の薬、痛風薬、睡眠薬、抗うつ薬などは肝障害を引き起こす可能性が比較的高いです。医師や薬剤師からの薬の使用法、治療中に行うべき定期検査について十分に説明を聞いてください。

服薬中のポイント

  • 気になる症状があらわれたら日時や症状を「お薬手帳」などにメモする
  • 症状を放置せず、すぐに医師に相談する
  • 定期的に血液検査を受ける
  • 薬を飲む時間帯、回数、量を守り、飲み忘れを避ける

薬を飲み忘れたからといって、飲み忘れた分を次の時間帯でまとめて多めに飲むのは危険です。定められた用量を超えて飲むと副作用が出やすくなります。飲み忘れた場合の対応についてあらかじめ医師や薬剤師に聞いておくと安心です。薬を飲む際の水や白湯の量も、副作用の出方と関係していることがありますので、医師や薬剤師の指示を守りましょう。お酒と一緒に飲むのは絶対にやめてください

服薬治療後のポイント

  • 病気や薬の種類に応じて、定期的に血液検査を受ける
  • 「お薬手帳」は保管しておき、過去に使用した薬の情報を長期的に管理する

おわりに:医師や薬剤師の説明を聞き、早期発見・早期治療を目指しましょう

副作用は、薬を使用するうえで避けて通るのが難しい症状です。重篤な副作用は肝臓に大きなダメージを与えますので、気になる症状があらわれたら放置せずにすぐに医療機関を受診しましょう。薬を処方されるときは、医師や薬剤師の説明をきちんと聞き、お薬手帳で管理しておくといざというときの対応がスムーズになります。早期発見・早期治療で、肝臓の負担を軽減できるようにしましょう。

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