治らない、治りにくい耐性菌。日本ではどう対策してるの?

2019/3/2

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

感染症になったときの薬として、まず処方されるものと言えば抗生物質です。抗生物質を服用すれば回復するはずですが、近年、これまで使われてきた主要な抗生物質に耐性をもつ「耐性菌」と呼ばれる細菌が出てきて、病気が治りにくくなっていると言われています。今回は、抗生物質が効きにくいとされる耐性菌について、日本が行っている対応とともに解説していきます。

耐性菌が治りにくいのはなぜ?

感染症の原因となる細菌のうち、従来使われてきた抗生物質が効きにくい性質をもつものを「耐性菌」「薬剤耐性菌」といいます。

薬剤耐性菌には、これまで治療で使われてきた抗生物質が効きません。一般的に使用されてきた治療薬に対して一定の耐性・抵抗力を持っているため、同じように服用しても薬効が低くなるか、まったく効果が得られない状態になります。このため、これまでは抗生物質を使えば軽症で済んだ感染症も、薬剤耐性菌が原因の場合は薬が効かず、重症化する恐れがあります。

このような薬剤耐性菌は1980年代以降、徐々に増えてきており、今後の大規模な流行や、免疫力が低い妊婦や子供・高齢者の重症化が懸念されています。

耐性菌はどうやって治療するの?

薬剤耐性菌に感染していることがわかったとしても、必ずしもすべての人に治療が必要になるわけではありません。薬剤耐性菌に感染していても、本人が発症しておらず体調に異変がない状態(保菌状態)なら、自分の免疫で菌を抑え込めているので、ほかの抗生物質を使って治療する必要はないのです。

しかし、明らかに細菌による感染症を発症しており、特定の抗生物質が効かないとわかっている場合は、重症化する前に他の抗生物質を投与して治療する必要があります。このように、薬剤耐性菌への治療の必要性やその方法は、医師が患者の状態・症状を診て都度判断しながら進めていきます。

通常、各病院は治療が必要な薬剤耐性菌への対処の指針として「抗微生物薬の適正使用の推進に資するガイドライン・マニュアル」を設定しています。医師らはこのガイドライン・マニュアルに基づき、患者の症状を診て適切な治療内容や効果がありそうな抗生物質などを選びながら薬剤耐性菌による感染症を治療していきます。

耐性菌に対して、日本ではどのように取り組んでいるの?

日本においては、感染症の原因となる細菌に薬剤耐性が発生するのを遅らせ、薬剤耐性菌を減らすために2016年から以下の取り組みを行っています。

薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン

  1. 薬剤耐性に関する知識や理解を深めるための「普及啓発・教育」
  2. 薬剤耐性と抗生物質使用量を継続的に観察する「動向調査・監視」
  3. 細菌感染そのものを適切に予防できるようにする「感染予防・管理」
  4. 適正な状況・対象に抗生物質を使うよう推進する「抗生物質の適性利用」
  5. 薬剤耐性菌を研究し、効き目を発揮できる薬を作る「研究開発・創薬」
  6. 他国とさまざまな分野で協調し、薬剤耐性菌対策を推進する「国際協力」

具体的には、抗生物質の使用機会を適切な場合にのみ限定し、細菌による感染症被害を予防・管理することで、薬剤耐性菌で苦しむ人を減らすよう尽力しています。

おわりに:日本では薬剤耐性菌に対し、国として指針をつくり対処している

1980年代以降、薬剤耐性菌は少しずつ増えています。このような薬剤耐性菌による感染症は、抗生物質を服用しても治りにくい、もしくは治らないという特徴があります。薬剤耐性菌の存在は、感染症の大流行や重症化による死亡リスクを高めますが、日本では2016年よりアクションプランを設定して対策を行っています。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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